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第三章 プーとコブタが狩りに出かけ、ウーズルを捕まえそうになる話

Winnie-the-Pooh
by A. A. Milne (1926)
IN WHICH Pooh and Piglet Go Hunting and Nearly Catch a Woozle
よしの訳

 コブタはブナの木の真ん中にあるとても立派な家に住んでいた。そしてそのブナの木は森の真ん中に立っており、コブタはその家の真ん中で暮らしていた。家の隣にある一切れの折れた立て札には、「シンニュウシャ・ヲ」と書かれていた。クリストファー・ロビンがコブタにその意味を尋ねた時、彼はそれが祖父の名前で、代々受け継がれているものだと言った。クリストファー・ロビンはシンニュウシャ・ヲという名前はあり得ないと言ったが、コブタはいいや、あり得る、なぜなら彼の祖父がそういう名前だったから、それはシンニュウシャ・ウィルの略で、さらにシンニュウシャ・ウィリアムの略なのだと言った。そして彼の祖父は名前を一つなくしたときに備え、二つ名前を持っていたのだと——伯父にちなんだシンニュウシャという名と、シンニュウシャの後のウィリアムという名前だ。
「僕も二つ名前があるよ」とクリストファー・ロビンはうかつにも言った。
「ほら、そうでしょう、それが証明してるよ」とコブタは言った。

 ある晴れた冬の日、コブタは家の前の雪を掃いていた。ふと見上げると、そこにはプーがいた。プーは何かを考えながら円を描きつつぐるぐる歩いていた。コブタが呼びかけても、そのままひたすら歩き続けた。
「おーい!」とコブタは言った。「何してるの?」
「狩りだよ」とプーは言った。
「何を狩ってるの?」
「追跡してるのさ」とウィニー・ザ・プーは意味ありげに言った。
「何を追跡してるの?」とコブタが近づいてきて言った。
「それこそが、僕が自分に尋ねていることさ。何を?ってね」
「君は何て答えると思う?」
「奴に追いついてみないと、何とも言えないな」とウィニー・ザ・プーは言った。「ほら、あそこを見てごらんよ」彼は目の前にある地面を差した。「何がある?」
「足跡だ」とコブタは言った。「動物の」。彼は興奮で小さくキュッキュと声を出した。「ああ、プー!もしかして、ウ——ウ——ウ、ウーズルだと思う?」
「かもしれない」とプーは言った。「そうであるときもあるし、そうでないときもある。動物の足跡のことはわからないものだよ」
 こう言ってプーは追跡を続けた。コブタは一、二分彼を見守ってから、その後を追いかけた。プーが突然立ち止まり、困惑した様子で腰をかがめていたのだ。
「どうしたの?」とコブタは尋ねた。
「非常に奇妙だ」とクマは言った。「どうやら動物は二匹になったようだよ。この何らかの動物は、もう一匹の何らかの動物と合流して、二匹は今一緒に進んでいるようだ。奴らが敵意を持った動物だった場合に備えて、僕と一緒に来てくれるかい、コブタ?」
 コブタは快いぐあいに耳をかき、金曜日までやることはないから、実際にウーズルだった場合に備えて喜んで一緒に行くと答えた。
「ウーズル二匹だった場合ということだよね」とプーが言うと、コブタはとにかく金曜日までやることはないと答えた。それで、二匹は一緒に歩き出した。
 そこにはカラマツの雑木林があり、二匹のウーズルは——もし彼らがウーズルなのであれば——この雑木林の周りをぐるぐる歩いているようだった。だから、プーとコブタも彼らを追いかけてこの雑木林の周りをぐるぐる歩いた。その間コブタはプーに、彼の祖父シンニュウシャ・ヲが追跡の後の筋肉の凝りをいかにほぐしたか、晩年いかに息切れに苦しんだかなどを心のおもむくままに話した。プーは、その祖父はどんな風だっただろう、もしかして自分たちが今追っているのは二匹の祖父だろうか、もしそうならば、一匹を家に連れて帰ってもいいだろうか、クリストファー・ロビンは何と言うだろうかと考えていた。足跡は相変わらず彼らの前に伸びていた……
 ふいに、ウィニー・ザ・プーが立ち止まり、前方を興奮した様子で指した。「見て!」
「何だい?」とコブタが跳び上がって言った。そして、驚いたのを隠すために運動しているような感じで一、二度飛び跳ねた。
「足跡!」とプーが言った。「三匹目の動物が、二匹の動物に加わっているよ!」
「プー!」とコブタが叫んだ。「もう一匹のウーズルだと思う?」
「いいや」とプーは言った。「足跡が違う。二匹のウーズルと、一匹の、もしかしたらウィズルかもしれないし、もしかしたら二匹のウィズルと、そうだとすると、一匹のウーズルかもしれない。引き続き奴らを追ってみよう」
 そうして彼らは、自分たちの前にいる三匹の動物が敵意を持っていたらどうしようと、少し不安になりながら歩き続けた。そしてコブタは彼の祖父であるシンニュウシャ・ヲが他の場所でなくここにいてくれたらいいのにと思い、プーはクリストファー・ロビンにいきなり偶然出くわしたらとても素敵なのになと考えていた。というのも、クリストファー・ロビンのことがただ大好きだったからである。それから、前触れもなくプーがまた立ち止まり、体を冷ますために鼻先をなめた。これまでにないぐらい体が熱くなり、不安を感じていたからだ。前方にいる動物が、四匹になっていたのだ!
「わかるかい、コブタ?この足跡を見なよ!三匹の、ウーズルのものらしき足跡と、一匹のウィズルのものらしき足跡。ウーズルが一匹増えてるよ!」
 そのようだった。足跡はこちらで交差し、あちらでごちゃ混ぜになってはいたものの、時折とてもはっきりとした四匹の足跡になっていた。
「思うに」と言いながらコブタも鼻先をなめたが、それによって安心する効果はほとんどなかった。「今、何かを思い出した気がする。昨日やらなくちゃいけなかったことで、明日じゃもうできないことを思い出した。だから本当に、すぐに家に帰って今それをやるべきだと思う」
「今日の午後やればいいじゃない、そしたら僕も一緒に行くから」とプーが言った。
「午後じゃできないことなんだ」とコブタはあわてて言った。「朝特有の、朝にやらなきゃいけないことで、できたら——今何時だっけ?」
「十二時ぐらいだよ」とプーは太陽を見ながら言った。
「言ってたように、十二時から十二時五分の間にやった方がいいんだ。だから本当に、親愛なるプー、僕はこれで失礼するよ——今の何?」
 プーは空を見上げた。そして、再度聞こえてきた口笛の音を頼りに、大きなナラの木の枝を見やると、そこには友達がいた。
「クリストファー・ロビンだ」と彼は言った。
「ああ、それならもう大丈夫だ」とコブタは言った。「彼と一緒なら安全だよ。じゃあね」。そして、危険から逃れられることをとてもうれしく思いながら、可能な限り速く、小走りで去って行った。
 クリストファー・ロビンはゆっくりと木から降りてきた。
「可笑しなクマさん」と彼は言った。「何をしていたのさ?雑木林の周りを二周したと思ったら、コブタが君の後を追って来て、一緒になってまた一周して、四周目を回ろうとして——」
「ちょっと待って」とウィニー・ザ・プーが手を上げながら言った。
 彼は座って、考えうる限り最も考え込んでいる様子で考えた。そして自分の足を、足跡の一つにはめてみた……それから鼻をぽりぽりとかき、立ち上がった。
「うん」とウィニー・ザ・プーは言った。
「わかったぞ」とウィニー・ザ・プーは続けた。
「僕は愚かだった、勘違いしてた」。そして言った「僕は頭がからっぽのクマなんだ」。
「君は世界で一番のクマだよ」とクリストファー・ロビンがなだめるように言った。
「本当に?」とプーは期待を込めて言った。そしてすぐさま元気になった。
「ともかく」、彼は言った。「もう昼食の時間だ」。
 そして昼食をとりに帰った。


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