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下ネタのナポレオン〜夢の賞味期限は自分が思っている以上に短い〜

出会いによって人生は思わぬ所で急に物語が変わる時がある。
あの日あのライブに行ってなかったら出会うことが無かった音楽について
語ろうと思う。
スカムというジャンルの音楽があるのをご存知だろうか?
ほとんどの人がピンとこないだろう。
乱雑に歌う乱雑に演奏する音楽なんだろうなというのがスカムに対するイメージだ。
簡単に言えば「本気の下手くそ。」
語弊があるなら謝ります。
でもそれがしっくりくるし、ディスではない。
今回はそのスカムというジャンルで好きなアーティスト下ネタのナポレオン「クリトリックリス」について語ろうと思う。

2008年6月1日
アメリカ村にあるサイケデリックバー「ganja」というバーの16周年イベント
「真昼の廃人 真夜中のHigh人〜昭和83年のロックンロール〜」
というイベントは大阪からの服部緑地野外音楽堂で開かれた。
出演はオシリペンペンズと銀杏BOYZetc.
銀杏BOYZをこよなく愛しているので行くという選択肢以外はなかった。

記憶では全部で5バンドほどだったと思う。ほとんどがスカムバンドだった。
衝撃を受けたのは出演バンドではなく。
バンド間の転換時間に出てくる猫ひろしと今回の主役「クリトリックリス」だ。
なかなかのハゲたおっさんがパンツ一丁でチープなバックサウンドで叫ぶという光景が目の前に広がり度肝を抜かれたのを今でも覚えている。
おかげで銀杏BOYZよりもクリトリックリスの方がそのイベントの思い出になっているぐらいだ。

衝撃的な出会いから数ヶ月後に、二度目のクリトリックリスを観に行った。
また観たいと思ったのだ。
場所は今は無くなってしまった、大阪心斎橋アメリカ村fanjのTWICE CAFEというバーにライブスペースがあるようなところだった。
何組か、他にもアーティストは出ていたと思うが、自分が覚えているのは、クリトリックリスがテルミンというリズムマシーンを股間につけたパンツ一丁でライブ中に外へ行き、反対側のjouleというクラブで元モーニング娘。の加護ちゃんがゲスト出演してる所を凸しようして全力で止められていたこと。
あとはライブ終わりにクリトリックリスさんのなぜ今の活動に至ったのかをお酒を飲みながら聴けたこと。
クリトリックリスは通称スギムさんというそうで、元々音楽活動はしてなかったそうだ。
普段はサラリーマンをしていて、よく行く飲み屋さんでバンド組んでライブをしようということになったのだが、ライブ当日スギムさん以外の人は不通だったりドタキャンされたりで、結局ライブはスギムさん一人で出ることになった。やけくそになったスギムさんはお酒を飲みまくってパンツ一丁でステージに立ったという。その後また同じライブハウスから前回のライブ良かったからまた出演して欲しいとオファーがあったそうだ。
凄い決断力と行動力だと僕はその時思っていた。
今では本業の仕事をやめクリトリックリスの活動に専念している。
昨年2020年は栗フェスというイベントを大阪城野外音楽堂で開催した。

スギムさんのお話を聞いたあと滅多にライブを観にいくことはなかったが、twitterでいろんなライブに出ていることは知っていた。フェスに出たり段々と知名度を上げるスギムさんすごいなと思った。継続は力なり、小さいことからコツコツととはこのことを言うのか。

その後、COMIN’KOBE 18という阪神淡路大震災の復興フェスで10年ぶりに野外でのスギムさんを観た。
それまでタワレコのインストアや、ライブハウスのサーキットイベントではちょくちょく観ていたがこのCOMIN’KOBEのライブはすごく感動した。
音源ではなく本当にライブを見に行っていただきたいアーティストだ。
ライブの最後に「1989」という曲を歌ったのだが、その曲が本当にカッコ良くて、歌詞がすごく胸に突き刺さる。
スギムさんの魂の叫びと青春がまみれて本当にエモい。
初期は下ネタだったりおちゃらけた曲が多いイメージだったが、これが真「クリトリックリス」だと思った。

「1989」クリトリックリス

オーダーメイドのスーツを身に纏い仕事帰りショットバーで一杯
そんな頃もあった
自分の可能性を試すために会社を辞め四年
あれだけ届いてた年賀状が今年は四枚
久しぶりに再会した元会社の仲間
面倒見てやった部下が今では課長
あなたのおかげで今の私があります
そんな恩着せがましい会話が嫌で、飲み続けることで自分の口を塞いだ
こっそり俺の分まで会計を済まし、明日があるからって彼らは去った
俺の明日はどこに
夢の賞味期限は想像以上に短く、随分前に腐って捨てた
濁ったレンズの奥底にフラッシュバックとなって蘇る
ミラーボールの輝く太陽
光のシャワーが降り注ぐダンスフロア
ギャルソンのスーツで踊るマハラジャ
カクテルグラスで飲み干すマティーニ
クリスタルホワイトのソアラで駆け上がる六甲
ヴィーナスブリッジから見下ろす100万ドルの夜景
そして何より赤かったあの娘の唇
俺を照らす「1989」
風に煽られ街灯にしがみつきうずくまっていたら見知らぬ若者が背中さすってくれた
この瞬間世界で一番酔うてますねって笑いながらさすってくれた
その横を流れる人並み
スポットライトは主役を失い、ゲロを照らしていた
たどり着いたネットカフェ朝日を知らない1.5畳の個室にてモニターの光で眺めるコミック
あの頃課長だった島耕作は社長を経て会長
夢の賞味期限は想像以上に短く、随分前に腐って捨てた
濁ったレンズの奥底にフラッシュバックとなって蘇る
ツインターボで加速するシヴィックのスカイライン
跳ね上がるデジタルタコメーター
ウーハーを鳴らすインナーシティのビッグファン
リンクしてダンスするイコライザー
キャラメルリボンにホッピングシャワーを重ね
午前1時のプライベートパーティー
生駒山上から2人で見つけたポラリス
俺を照らす「1989」
ふと母親の声が聴きたくなって半年ぶりに実家に電話した
近所の布団屋やたばこ屋が潰れてショッピングモールになるとかならへんとかどうでもいい話だらけにイラついて俺は大丈夫やからと電話を切った
ミラーボールの輝く太陽
光のシャワーが降り注ぐダンスフロア
ギャルソンのスーツで踊るマハラジャ
カクテルグラスで飲み干すマティーニ
クリスタルホワイトのソアラで駆け上がる六甲
ヴィーナスブリッジから見下ろす100万ドルの夜景
そして何より赤かったあの娘の唇
俺を照らす「1989」
ツインターボで加速するシヴィックのスカイライン
跳ね上がるデジタルタコメーター
ウーハーを鳴らすインナーシティのビッグファン
リンクしてダンスするイコライザー
キャラメルリボンにホッピングシャワーを重ね
午前1時のプライベートパーティー
生駒山上から2人で見つけたポラリス
俺を照らす「1989」


これを自分は青春パンクだなと思った。
COMIN'KOBEでラストに歌ったこの「1989」は今でも心に残るくらい感動したのを覚えている。
ドキュメント番組の1部と実際に観にいったCOMIN'KOBE18のライブ映像見てみて下さい。こんな風に生きたいなって思う人です。




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