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【無理】このマネー記事の執筆依頼はどうしても受けられない

FP資格を保有している私は以前、独立系ファイナンシャルプランナーとして活動していました。現在はライター業においてその経験を活かして、マネー記事を書くこともあります。最近は無記名記事を主に担当していて、クライアントからの構成案やレギュレーションが細かく指示されている案件も多いです。流れやテイスト、ゴールが明確になっているご依頼は執筆しやすいのでとてもありがたい。ただ、一部のマネー記事については困ってしまうこともそれなりにあります。私の個人的な意見が多く含まれていますが、どうぞご容赦を。

キャッシング・消費者金融サイトへの誘導記事依頼は納得できない

いやまあこれは、私のワガママかもしれないんですけどね……。

個人ローンとはその名のごとく、個人の顧客に対して提供される貸付サービスのこと。住宅ローンや教育ローン、マイカーローンなど金融機関の各種ローンをはじめ、クレジットカードのキャッシングや消費者金融のフリーローンなども個人ローンのひとつです。

住宅や教育、車の借り入れについては、特に問題ないんです。人生における大きなお買い物、プランを立ててお金を借りることはマネープランにおいて有効です。FP視点で見ても、家計状況に応じて必要な手段と言えます。

問題はキャッシングや消費者金融の類。この分野で注意しなければならないのは、「それ、必要な借り入れですか?」ということ。中にはキャッシングを自分の預金の前借りと捉えている方がいます。自分ではない、第三者からお金を借りているんです。もちろん時には、どうしても生活費に困って利用せざるを得ないことがあるかもしれません。ただ、そういう「どうしても」の事情ナシにこれらのサービスへ誘導するということが、どうしても私にはできない。モヤモヤしてどうしてもできないんです。

無記名の記事だからいいじゃないか、ライターが責任を問われることはないでしょう、と思うかもしれません。だけど、キャッシングや消費者金融の世界から抜けられなくて悲しんでいるお客様の相談を受けていた立場からすると、どうしても拒否反応が出てしまいます。おそらく誘導したことによるクライアントのアフィリエイト収入は他のジャンルに比べて高額だと思います。そしてその一部が自分の原稿料になるのか、と思うととても複雑な気持ちになるのです。こうした収入の元を辿れば、そこには借り入れた人が支払っているお金も含まれているのですから……。私、割り切れないんですよね、こういうところでは。

SEOありきで記事のテーマとゴールがめちゃくちゃなマネー記事はつらい

キャッシング・消費者金融への誘導記事に関連して、その記事の目的と記事のメインテーマがかなり無理矢理くっつけられているケースもあります。たとえば、記事のテーマは「投資をして資産形成しよう」、記事のゴールは「お金が足りなくなったらキャッシングという方法もあるよ→借り入れの比較サイトへ誘導」というもの。借り入れなければならない家計状況の方に投資を勧めるなんて、FP資格を持っている方でなくても矛盾しているということに気づくのではないでしょうか。

過去のFP相談の中には「収入が少なくて生活がカツカツ、たまにキャッシングも利用している。仕事での収入アップはしばらく期待できないのでFXで儲けたい。そのために必要な知識を学びたい」というご相談もありました。たしかに相場の読みが当たれば短期的に儲けられるかもしれない。だからこうおっしゃる気持ちもわからなくもありません。ただ、儲かる確率と同じくらい損をする可能性もある。家計がギリギリの状態ならば、マイナスになることもある投資よりも先にすべきことがあります。

記事テーマとゴールが噛み合っていない誘導記事もちょっと……私には書けないです。

マネーがらみで言えば「オンラインカジノ」記事も関わりたくない

しっかりと確認はしていませんが、オンラインカジノは日本ではグレーゾーンの遊戯だと認識しています。でも最近、ひそかにハマっている日本人も多いようです。海外のサーバーに接続して、ドル建てでお金を入れて、オンラインで賭けるという……。

英語で展開されている海外のオンラインカジノが日本にも上陸するとのことで、翻訳および紹介記事を書いて欲しいという依頼を受けたことがあります。支払いは米ドル、ペイパル経由。海外に籍を置くプロモーション企業からでした。なんとなく不安を覚えた私は知り合いの弁護士さんにメールで相談。弁護士さんもグレーゾーンという認識で、少しでも違和感があるなら断ったほうがいいというアドバイスをいただきました。私は丁重に辞退しました。

オンラインカジノに関する記事、執筆者の募集がかかっているのをよく目にします。法に触れるかどうかは不明ですが、記事単価が高めだからという理由だけで引き受けると後々しんどくなってしまうかもしれません。もしあなたがライターさんなら、ご自身の執筆スタンスに合うか、よーーーーーく検討した方がいいと思います。

情報を得る側のリテラシーも問われているのかもしれません

ライター側から見た想いを綴ってきましたが、記事を読む側に立って考えるとまた別の視点を持てますね。たとえば悪質な、もしくは内容が不思議な状態になっているマネー記事を読んだ時に読み手が「あれ、なんだかおかしいな」と気付ければ記事からサービスを利用する人が減ると思います。利用者が減れば、記事で誘導するという手法から別の方向に行くのかもしれない。知らない情報はインターネットで検索する、という行動様式が今後も続くと思われる中で、情報を得る側がそれをどう把握し自分の生活に取り入れていくかという部分がこれからますます問われていきますし、受け手の行動が今後のウェブの流れを左右します。

いずれ苦しくなるから、はじめからこういう記事は書かないと決めた

ライターをはじめた当時はあらゆる依頼を可能な限り受けていました。でも、ここでご紹介したような案件は結局、書く気力が起きず執筆にかなりの労力を要しました。原稿料に見合わないくらいの時間と心を消耗してしまう。そのため最近は、無理せず辞退しています。自分を守ることにもなるし、ウェブ上のマネー情報の質を微力ながらも守ることができるかもしれない。せっかく自分の人生の一部分を使って書くのだから、納得のいく記事にパワーを注ぎたいと思っています。

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