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「月極駐車場が日本のEV普及率を向上させるカギを握るのでは?」①

株式会社ハッチ・ワークの代表取締役社長、増田です。

今回は「月極駐車場が日本のEV普及率を向上させるカギを握るのでは?」と題して、私たちが考えていることを書いてみようと思います。

近年よく耳にするようになった電動自動車(EV)の話題。2020年、世界一の販売台数を誇るトヨタの時価総額をテスラが抜いたというニュースは、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。テスラの販売台数は、EVに限れば世界一とはいえ、全体の販売台数としては決して多くありません。それでも自動車産業界で時価総額が世界一になったということは、市場の期待値が非常に高いということです。

なぜここまでEVが注目を集めているのか?
その背景は?
私たちが日ごろ生活しているなかで、
まだまだEVが普及している感覚がないのはなぜなのか?

私もそんなことを感じて、日々情報収集に努め、メールマガジンでもたびたびお伝えしてきました。

日本はEUや中国に比較して、EV普及率が遅れていると言われています。その理由はさまざまあるとされていますが、私たちは「月極駐車場にEV充電設備が整備されることで、EV普及率が向上する重要な解決策になり得る」と考えています。そのように考えている理由を順を追ってお伝えしたいと思います。

EV充電の様子

なぜEVが注目を浴びるようになったのか

まず、カーボンニュートラル(脱炭素社会)が世界的な共通認識になった背景を整理しましょう。

これは、気候変動への懸念が高まり、温室効果ガス排出削減の必要性が広く認識されたことをきっかけに、パリ協定などの国際的な合意に基づき、目標設定が推進され、持続可能なエネルギー源や環境への配慮が強調されるようになったことで、カーボンニュートラルが一気に浸透していきました。

そして世界各国がそれぞれの方針を発表していきました。日本政府はというと、2020年に当時の菅首相が「2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素社会)を達成することを目指す」という、重要な宣言を行いました。
同年、“グリーン成長戦略”という実行計画を発表。14の重要産業に対して、具体的な方針を策定しました。その一つが、自動車産業に対する「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」という内容です。カーボンニュートラルだけでなく、「新たなエネルギー基盤としての蓄電池産業の競争力強化を図る」という戦略も盛り込んでいます。
ちなみに、上記の「電動車」というのは、EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)だけを指しているわけではなく、ハイブリッド車(HEV)、燃料電池車(FCV)も含まれています。

日本だけではなく、アメリカ、EU、中国なども、自動車業界に対して電動化目標を掲げており、ZEV(ゼロエミッション車両)の普及を促進し、温室効果ガスの排出を削減するための推進を図っています。

出典:経済産業省作成「自動車分野のカーボンニュートラルに向けた国内外の動向等について」

現在のEV普及率

さて、現在のEV普及率はどうなっているかというと、2022年はEVの世界販売台数が大幅に伸び、初めて自動車販売全体の10%に達しました。各国における同年の自動車販売台数に対するEV(PHEVを除く)の占める比率は、EUが約11%、中国が約19%、アメリカが約6.7%です。日本はというと約1.4%であり、これが日本のEV普及率が世界と比較すると遅れていると言われている実態です

EV普及促進の共通の課題

EV普及促進の共通の課題は、①充電インフラの整備、②航続距離の延長、③販売価格の低下などが主と言われています。①、③は各国補助金や減税措置、規制緩和などが行われており、②、③は各自動車メーカーの研究開発で前進しています。

充電の種類にも目を向けます。大きく分けて、自宅などで行う「基礎充電」、移動途中に充電スタンドに立ち寄る「経路充電」、出先の駐車場などで行う「目的地充電」の3つに分類されています。当然ながら、充電インフラの整備という課題においては、どれも重要となります。

さて、ここまでは事実を整理したにすぎません。もっと詳しい内容が知りたい方は、東京電力エナジーパートナー社が運営するメディア「EV DAYS」のこちらの記事がおすすめです。(私も参考にさせていただきました。)

さて、ここからはさらに深堀していきます。


急速充電器のイメージ

各国の本音

まず、日本はトヨタを筆頭に、世界有数の自動車大国です。特に、優れたエンジンのほか、HEVやFCVといった独自の先進的な技術革新と研究開発に力を入れてきて、世界的に競争力のある製品を生み出しています
実際、これがそのまま日本市場におけるEVのシェアが確立されていない理由にも繋がっています。

EUとしては、このままだと自動車産業の分野で日本に水をあけられてしまう懸念がある。したがって、カーボンニュートラルを隠れ蓑にエンジン車
やHEVを排除していくことで、競争力を高めようという狙いがあったようにも思われます。
そのための「2035年エンジン車の新車販売を禁止する規制」でしたが、2023年に入ってドイツから反対意見が入り、ガソリンではなく、「e-Fuel」(合成燃料)という燃料を使用するエンジン車に限り、販売を認めるという方針で合意しました(e-Fuel:二酸化炭素(CO2)と水素でつくり、CO2排出量は実質ゼロと見なされる燃料です)。
本来の目的はカーボンニュートラルのはずですから、CO2排出量が実質ゼロと見なされるならば、エンジン車でも問題がないわけです。EUにとっては思惑が外れる、苦渋の決断だったでしょう。

ドイツは、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、BMWなど名だたる自動車メーカーを抱えていますから、反対意見が出たという事実も頷けます。これは日本にとっては好意的な出来事と言えますが、一方で「e-Fuel」の実用化にはコストや運用面で大きな課題があることは認識しておく必要がありそうです。

中国は自動車産業においては完全に後発です。よって、EVという分野で存在感を示したいという、強い意志がありそうです。

ちなみに、世界屈指のEV普及率を誇るノルウェーは、強力な政策によって上述した課題の解決に取り組んだことはもちろんですが、国内に自動車メーカーがなかったことも、その地位を掴んだ大きな要因の一つと言われています。実際、そのぐらい、自動車産業は各国において重要な位置づけなのだとわかります。

尚、アメリカはその広大な国土に対する、充電インフラの整備が進んでおらず、苦戦状況。もともとのガソリン文化の影響や州ごとに異なる規制や補助金制度が混乱を招いているようです。ただし、テスラだけでなく、ゼネラルモーターズ、フォードなど多くの自動車メーカーもEV市場への参入を強化、政府や州の支援策についても増えてきており、普及率は上昇傾向です。


ドイツがまさかの反対意見

日本独自の制度「車庫証明」

少し話は変わって「日本にしかない独自の制度」についても考えます。そう、「車庫証明」です。

車庫証明は、日本の駐車事情に合わせて1960年代に導入された、独自の制度です。「所有している車両を駐車するスペースをちゃんと確保しています」ということを、警察に届け出るわけです。
この制度によって、公共の駐車スペースを過度に占有することを抑止するとともに、違法駐車の減少や、混雑緩和として役立っています。海外ではこのような制度はありません。違法駐車の取り締まりや罰金はありますが、なかには「駐車場を賃貸するよりも、違法駐車の罰金を払い続けたほうが得」ということもあるようです。

したがって、日本では「月極駐車場」が所狭しと存在します。当社の推計では約3,100万台。賃貸の方、自宅の前の駐車スペースに停められない方、営業車、レンタカーの保管など、あらゆる方が車庫証明を求めて、月極駐車場を借りています。

EV普及促進の課題は各国で異なる?

このように整理して見ていくと、日本のEV普及率だけを世界各国と比較して「遅れている」とし、海外の成功事例をそのまま真似して対策を進めても、期待する結果は得られないかもしれません。

日本と世界各国では状況も、文化も、慣習も異なりますので、EV普及の促進に対する解決策も異なると考えるのが自然です。

では何が日本にとっての解決策か?私たちはそれが「月極駐車場への充電設備の拡充」だと考えています。

次回、その理由をお話します。





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