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管理職として良い仕事を続けていく秘訣 | 臨床心理士に聞く、疲弊する前に仕事のストレスを低減させる3ステップ

皆さん、管理職に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。実際に管理職になってみて、自分が想像していた以上に大変だと感じている方もいるのではないでしょうか。2016年に産業能率大学によって行われた『第3回上場企業の課長に関する実態調査』では、過去最高の14.9%もの管理職が、最終的になりたい立場として「プレーヤーの立場に戻る」ことを選択しています。今回は、管理職の仕事とはいったいどのようなものなのか、また管理職の悩みとその解決方法について紹介します。

本記事の監修者紹介

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1. 苦労も多い管理職

「部下がなかなか育たない」「業務量が多すぎる」「部下の人事評価が難しい」「部下が自分の指示通りに動かない」「思うような成果が出せない」「上司と考え方や意見が合わない」「目標のハードルが高すぎる」と悩む管理職の方は少なくないかもしれません。(※1)

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成果至上主義の会社、部下育成・業務改善の現場

そもそも管理職の役割は何なのでしょうか。管理職とは、経営目標を達成するため、部下である一般労働者に仕事を与え、見守り、管理する役割です。厚生労働省通達による定義では、「経営者と一体的な立場」「出退勤の自由」「地位にふさわしい待遇」などの条件を満たすことが、管理職の定義であると言われています。

つまり管理職は同じ労働者でありながら、仕事内容は経営側として部下の育成、部署内の管理、会社全体の利益追求と多岐にわたり、非常に責任の重い仕事だと言えます。


管理職を取り巻く環境の変化

もう一つ言えるのは、管理職の役割が変化しているということです。昔の管理職=ハンコを押す人だったのが、現在では管理職には強いリーダーシップが求められるようになってきました。これが決められたことをその通りにやれば利益が出ていた時代と、前例を見直し、するべきことを考える事から始める必要がある現代との大きな違いです。(※2)

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2. 働き方改革の管理職へのしわ寄せ

2019年4月から行われている働き方改革により、残業時間の見直しやフレックスタイム制の導入、年次有給休暇の確実な取得が改善されつつあります。しかしながら、これらの改革で一般の労働者や社員の職場環境が改善されている一方で、管理職にしわ寄せが及んでいる可能性があります。


働き方改革の影響

働き方改革をきっかけに会社の方針として、残業をなるべくしないようにという風潮や部下にしっかりと休暇を取得してもらう必要が出てきているでしょう。しかし働き方改革に関係なく、膨大な業務量は変わりません。それを部下に配分し、成果をあげることは決してたやすいことではないのです。


管理職へのしわ寄せ

そうすると、膨大な業務をどう捌くか、管理職が背負い込むか、業務改善をするか。どちらにしても、管理職の業務は増えます。部下に残業させられないなら、その分自分がという管理職の方もいらっしゃいます。管理職の方々の中には若手時代の残業を沢山する生活に慣れてきてしまった人もいるので、特に残業を苦とせず、しわ寄せを引き受けてしまうこともあります。

本人がそれでいいならいいじゃないか、と思うかもしれませんが、過労による睡眠不足はメンタル不調に陥るリスクを高めます。また、精神的に不安定な状況になって、やむ終えず休職・退職に追い込まれることもあるでしょう。


3. 疲弊する前に

あなたは仕事で疲弊していないですか?疲弊してしまう前に、自分の心身の不調に気づき、対処しましょう。自分の状態を確かめるにはセルフチェックを行うことも有効な手段の1つです。厚生労働省のサイトでは、以下の様なご自身の疲労度を図ることのできるセルフチェックページが開設されています。

次に紹介するのは、自分自身の行動や考え方を変えることで、仕事のストレスを低減させる3ステップです。

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ステップ1:相談相手をみつける

管理職の方々から多く聞かれるのは、「管理職になってから孤独を感じるようになった」という声です。今までは同僚がいて、上司がいて、他愛もない話や時に相談をする相手がいた人でも、管理職になると孤立してしまうというケースが見受けられます。裁量権や責任が増し、仕事にやりがいを感じる一方で、なんとなく不安に思ったときに相談相手がいないために悶々としてしまうこともあるでしょう。

そんな管理者の方には是非相談相手を持ってほしいと思います。昔の同僚や、仕事以外の仲間でも趣味友達でも構いません。とにかく自分の話を聞いてくれる人を持つことで孤立感を和らげることが出来ます。


ステップ2:仕事の捉え方を変える

仕事のやり方を変えるというのも選択肢の1つにあります。なんとか仕事をこなして、身体を壊してしまっては元も子もありませんから、どのくらい頑張るのか、それ以上は頑張らない、誰かに頼るという線引きをすることも必要です。その時に心に留めておいてほしいことは「仕事の評価はあなた自身の評価ではない」ということです。仕事こそが自分の生き甲斐だと感じている方にとって、仕事が出来ていない状況は非常に嫌なものでしょうし、管理職になる前だったら自分自身の頑張りで評価を上げることができました。

しかし、管理者という立場上、自分自身の力だけではどうしても成果をあげることが出来ません。「成果が上がらないのは自分のせいだ」「自分が仕事ができないからダメなのだ」と落ち込まずに、「自分は最大限頑張った。成果は期待ほどでは無かったが、これはみんなでやった結果だ。次に活かしていこう。」と前向きに捉えてみてください。


ステップ3:腹心の部下を持つ

役職が上がるにつれて、人に頼られることが増え、仕事の裁量権や重要度は増し、気が付けば気を張り続けているなんてこともあるのではないでしょうか。そんな時に、頼れる部下がいれば仕事を任せることが出来ます。勿論、手放しで任せるわけには行きませんが、見守りながらも任せることで、自分が仕事をしやすい環境を作り出すことが出来ます。また、部下に権限委譲をしていくことは部下自身の成長にもつながります。さらに、マネジメントに自分とは異なる視点を取り入れることで、今までとは違う関係性が生じ、部署内も活性化していくでしょう。


4. まとめ

管理職の方の悩みの特徴は、相談することが出来ない、相談の機会が少ないことです。ご自身で対処できることもあるかと思いますが、時には人の力を借りることも忘れないでください。EAP(従業員支援プログラム)などと契約している会社では、そこが設置している相談窓口などがあるかもしれません。仕事の相談事でなくても多種多様な相談事にのってくれる場合もありますので、そちらをご利用することも選択肢の1つです。


監修者プロフィール

後藤麻友
ピースマインド株式会社 コンサルティング部 統括マネージャー兼スーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント
臨床心理学の修士号を取得後、ピースマインド株式会社に入社。EAPコンサルタントとしての臨床業務の傍ら、研究、研修、サービス開発にも従事。現在は、主にコンサルタントのマネジメントや育成支援を行っている。
臨床心理学の修士号を取得後、ピースマインド株式会社に入社。EAPコンサルタントとしての臨床業務の傍ら、研究、研修、サービス開発にも従事。現在は、主にコンサルタントのマネジメントや育成支援を行っている。


出典

※1:産業能率大学『第3回上場企業の課長に関する実態調査』
※2:田尾 雅夫(京都大学教授)『管理職の役割変化とストレス』

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