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回し屋

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記事一覧

小説 回し屋 5

第5章
それで彼氏が…
今日も女性群の恋愛話が給湯室から漏れている。
でも良いじゃない。そんなに愛されているなんて羨ましいわ。
ヘラヘラとした甲高い声も聞こえてきた。奥村さんだ。
まあそうよね!あんた、彼氏いたこと無いもんね?ねえまたあの話しなさいよ!フラれて1ヶ月もしない内に良い子紹介してって言われた話!
また始まった。奥村さんへのリンチタイム。奥村さんの話したくないであろう話を無理矢理させてみ

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小説 回し屋 4

第4章
社長にクビにする社員を決めるように言われ1ヶ月が過ぎた。私と部長があんまりにも話し合うものだから社員にもこの件が広まってしまった。と言っても噂好きの彼らのことだからいずれバレていたのは確かだろう。話し合うと言っても、部長からはオクムラオクムラと言われ、弁解しようとすれば他の社員にも聞いてみろよの一点張り。他の社員に聞けば、奥村は変わった奴、地味な奴とそればかりだった。肝心の奥村さんはアンタ

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小説 回し屋 3

第3章
クビですか?
いきなり社長室に呼ばれ、動揺する私と部長をなだめるように社長は言った。
君達がではないよ。実はうちも上手くいっていなくてね、先月取引先の会社も倒産したし、うちもきついんだ。人件費を削りたくてね、一人で良いからやめさせてくれないか?ここは女性が多いから楽だろ?っさ。3ヶ月待つからって。
はあ、分かりましたという私達の生返事に安心した社長はよろしく頼むよなんて言って私達の肩をポン

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小説 回し屋 2

第2章
初めまして。今日からよろしく。
妻がいなくなった後、転勤することにした。妻と暮らした約二十年の思い出が染み付いた東京にこれ以上いられない。東京ほどではないが、まあまあ都会であるところに異動した。パチパチと乾いた拍手と女性群のひそひそ声。
ここは女性が多いから今の君にはきついんじゃないのかい?と言われたことを思い出した。私は課長。そのくらい注意出来なくてどうする。楽に考えることにした。
職場

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小説 回し屋 1

第1章 
家に帰るとぽつんと白い紙切れが置かれていた。
私好きな人が出来たの
許してちょうだいね
ごめんなさい
そう書かれたメモ用紙の下に緑の線が入った紙。
バカだなあお前、この歳でどうするんだよ
寂しい部屋に40の男のすすり泣く声が響き渡った。