小説 回し屋 3

第3章
クビですか?
いきなり社長室に呼ばれ、動揺する私と部長をなだめるように社長は言った。
君達がではないよ。実はうちも上手くいっていなくてね、先月取引先の会社も倒産したし、うちもきついんだ。人件費を削りたくてね、一人で良いからやめさせてくれないか?ここは女性が多いから楽だろ?っさ。3ヶ月待つからって。
はあ、分かりましたという私達の生返事に安心した社長はよろしく頼むよなんて言って私達の肩をポンポンと叩いた。
部長、どうします?
休憩時、情けなく聞く私に部長はタバコに火を付けながら答えた。
そうだなあ、若い子の方が再就職しやすいだろうから…
そう言ってクビ候補の使えない社員の名をあげながら指を曲げる。
…と後は奥村だな!
えっ?奥村さんですか?
我ながら間抜けな声が出てしまった。奥村さんはいつも言われた仕事しているじゃないか。
そうだよ。俺あいつ嫌いなんだ。いつも何もせずにふらふらして、あいつらの中で1番俺達の悪口言って、そのくせ陰気臭くてたまんねえ!あいつがいるとカビでも生えそうだし扱いにくいんだよ。
ありゃどこからも嫁にもらわれないぜ。と言い放ち、タバコを灰皿に押しつける。
私は女性群の観察をしていたが、彼女は悪口にええそうなのと相槌を打つことはあっても率先して言うところは見たことがなかった。いつも他の社員から仕事を押し付けられ、残業中に時折ふて寝しながらでもきちんと片付ける人だ。部長は何を勘違いしているのだろう。私が弁解しようとすると部長はもうどこかに行ってしまった。
不憫だよなあ…
そう言いながら私もタバコをふかした。

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