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N=1の「最高の体験」を考え抜くたった10秒の習慣とは

自分には、働き始めてから9年間続けているちょっとした習慣があります。それはユーザーインタビューをやった直後の10秒に、ある問いを自分に投げかけることです。

この人にとって、我々が提供できる最高の体験って何だろう?

これだけです。チームで振り返りの時間が取れるときもそうでないときも、一瞬でいいので問いかけるようにしています。もともとは新卒の頃の上司でユーザー調査が抜群にうまい上司がやっていた習慣で、気づけば自分も9年間続いていました。

最近 X (twitter) でこのことを書いたところ、少し興味を持っている人が意外と多そうだったので、備忘として今回はその簡単な補足記事を書いておこうと思います。


シンプルだが奥行きのある問い

これまで言うまでもなくとてもシンプルな問いです。でも、いざまじめに答えようとなるとまず以下のようなことを理解していないと意外と答えにくいことに気づくはずです。

・そのユーザーは、そもそもあなたのプロダクトをどのようなものと捉えていますか?
・そのユーザーは、あなたのプロダクトの価値を何と比較していますか?
・既存の代替手段や現行版のプロダクトで解決できていないそのユーザーのジョブはなんですか?
・インタビューで得られた生活の文脈を踏まえて、そのユーザーの「最高の体験」を 5W1H 含めてストーリーで語れますか?
・チームが来週実現できるかもしれないそのユーザーの「最高の体験」と、2,3年後に実現できる「最高の体験」はそれぞれ何ですか?

また、この問いに答えたら、続けて次のような問いも生まれるはずです。

・それが「最高の体験」とわかっているのに、なぜあなたのチームは今できていないのですか?

1人の「ユーザー」のために時間を使えているか?

ユーザーインタビューでは、KA 法など個々のインタビューから得られたユーザー価値を起点に抽象化を試みる技術も数多くあります。一方で、私がここであえて強調したいのはこうした抽象化と逆のアプローチです。

個別具体の「最高の体験」をイメージできないうちに、その背後にある膨大な数のユーザーに対して「最高の体験」を提供するのはほとんど無理です。このプロセスを抜きに初めからいくら抽象度高くそれっぽい手法をこねくり回しても得られるものは少ないはずです (少なくとも自分は少なかったです)。

多くの場合、インタビューは一人ひとりの生活者からみた世界のとらえかたを理解しようとすることに主眼があります。さっきまで Zoom や Google Meet で目の前にいたこの人の世界のとらえかたをひとまず理解しようとする。その上で、では自分たちのプロダクトがどのような介在の仕方であれば「最高の体験」を提供できるのかを考える。10秒でいいので。

これを大量に積み重ねることで、あなたのプロダクトは初めて血の通ったプロダクトになります。あなたのリサーチレポートにはこれまでより説得力のあるストーリーが生まれるし、提案する施策の筋はよくなるし、ビジョンが生まれるはずです。Notion 1ページ分の報告資料を分厚くする暇があったら、ついさっき話したユーザーにとっての「最高の体験」を考えましょう。ほんとに10秒でいいので。

実践上の留意点

というわけで、この10秒の問いかけを実践する上で、いくつかの留意点を挙げておきます。これらは自分もできている場面できていない場面ありますが、あくまで備忘録ということで!

あとでやろうと思うな、すぐやれ

あとでやると続きません。細かな文脈も含めて思い出すコストのほうがかかります。

10分かけるな、10秒でやれ

インタビュー直後に10分取り続けるのは難しいかもしれませんが、10秒なら続きます。

とにかく続けろ

何十件何百件と続けていると、変わらないユーザー価値のコアが見えます。ユーザー価値の受け止められ方の変化も見えます。

できればチームでやれ

あなたが孤独なリサーチャー・デザイナーならまず一人でいいのでやりましょう。そのうち仲間が現れたり少しずつ施策の筋が良くなるはずです。チームでやると、「最高」のどこの認識がずれているのかを理解できます。

ユーザーに答えを求めるな、自分の頭で考えろ

ユーザーの世界の捉え方を理解しようとつとめるのは大事ですが、最後に決めるのはあなたです。ユーザーにアイディア自体を丸投げしないでください。

リサーチの話をしよう

「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに、ヘルスケアプラットフォームを提供している Ubie では、創業の頃からユーザーリサーチに力を入れています。

同僚の Satoru も、Ubie のデザイナーが患者さんと向き合う「態度」の話を以下記事でしていました。今回は自分なりにどのような「態度」で向き合っているのかを、ちょっとした tips を添えて書いてみました。

We Are Hiring

デザイナーやプロダクトマネージャー積極採用中

ユビーでは N=1 のユーザーと向き合えるデザイナーやプロダクトマネージャーを積極募集しています。自分もどちらの職種についても話せるので、求人票をざっと読んでもし興味あるようであれば、はじめましての方でも Pitta か X (twitter) の DM で声かけてください。

カジュアルに話そう

ごく一部ですが、たとえばこんなテーマについてはお話しできます。

Ubie や Ubie のリサーチに興味ある経営者・プロダクトマネージャー・デザイナー・リサーチャーの方々ぜひお話ししましょう。

【告知】3/6にメドレーさんと共催イベントをやります

3月にメドレーさんと Ubie で共催イベントをやります!自分もちょっと LT します。「ドン・ノーマンを超えていけ!未来のモノのデザイン (仮)」というタイトルでなんか喋ります。2/19時点でまだ募集受け付けているので、ぜひぜひ遊びにきてね。

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