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採用のために分けた組織がお互いの採用ブランドを毀損していたため、二組織同時改称しました

はじめに

こんにちは、Ubie でデザイナーをしているhatakeです。

Ubie はこの春で創業4年、全社で100人を超えました。
一般的にはいわゆる「100人の壁」に直面する時期ですが、Ubieは1年前、全社で40, 50人程度だった頃に組織分化 (分社化) を行い、それぞれの組織でそれぞれ独自のカルチャーを育てながら採用活動に取り組んできました。

「0→10の立ち上げから事業化を担う Dev 組織」「10→100の事業グロース・スケールを担う Scale 組織 (以下UAC)」のような組織構造は、採用候補者からみるとわかりづらく、相互の採用ブランドを毀損し合う場面も増えてきました。そこで今回、両組織同時に改称することになりました。

この記事では、Ubieの二組織同時改称の中身と、そこに至るまでの試行錯誤をお伝えします。

特に組織改称の意思決定は不可逆性が高い、頻度もそれほど高くない、そもそも資源が限られるスタートアップで組織を分け別個の採用ブランド投資をすること自体が稀なので、今回のようなイシューはあまり表に出てこないことが多いようです。 

もしあなたが何らかの形で組織づくり、ブランディング、採用などに携わっているなら、何らかの形で参考になれば幸いです。

二組織同時改称の概要

組織ごとの特性・目指す方向性をより端的に示すことができるよう、Dev 組織は Ubie Discovery へ、UAC は Ubie Customer Science へ進化しました。

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Ubie Discovery

Ubie Dev 組織が改まった Ubie Discovery では、医療機関向け事業・生活者向け事業のいわゆる Customer/Problem Fit (CPF) から Product/Market Fit (PMF) までの「創って固める」フェーズにて、プロダクト開発と事業開発による大胆な仮説検証を通じて、まだ実現されていない顧客価値を Discover (発見/探索) していきます。

Ubie Customer Science

UAC が改まった Ubie Customer Science では、医療機関事業のPMF以降の「拡げる」フェーズにて、顧客の中長期的な成功を超緻密に科学 (Science) する、業界トップクラスのグロース・スケール組織を目指します。

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組織を分けた後に生まれた3つの「ブランドの負債」

Ubie がカルチャー純度を高めつつ採用を強化するために Dev 組織と UAC に組織を分けた (分社化した) のは、1年前のことです。なぜ早々に今回のような組織改称をするに至ったか。少し時間を巻き戻させてください。

1年前に組織を分けたことの効果として、当初期待していた通りそれぞれ固有のカルチャーが育っており、それぞれの組織で「ブランドの資産」が日々たまっているのを感じています。

一方、組織を分けたことで新たに生まれた「ブランドの負債」もありました。たとえば次のようなものです。

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1. DevとUACの混同

中長期的視点でカルチャーの独立性を高めるため、UACはあえて「Ubie」ではなく「UAC」として一貫して呼称してきました。

ただ、短期的には先行してブランド資産が一定程度たまっていた Dev 組織と採用方針やカルチャーが混同されてしまうことが多く、採用文脈では組織分化のメリットを十分享受しづらい状況になってしまいました。

2. 「Dev」がもたらす誤ったブランド連想

一方、Dev 組織においても組織名称が引き起こしていました。

Dev 組織の実態としては問診を起点に医療データプラットフォームとしての価値を高める新規事業開発が常に複数チームで走っているのですが、「Dev」という表現から「事業開発 (BizDev)」ではなく「プロダクト開発」ばかりが連想されることが多く、採用機会の損失が恒常的に発生してしまっている状況でした。

この辺りは身も蓋もない話なのですが、組織を分けて採用候補者と対話する中ではじめて気づいた点でした。

3. UACの組織アイデンティティとの乖離

UAC の正式名称は Ubie AI Consulting です。1年前に組織を分ける際には手探りの中エイヤ!と名称を決めていたのですが、組織成長に伴ってアイデンティティとの乖離が目立つようになってきました。

UACは、医療現場のオペレーションにかなり深く入り込んで超緻密な仮説検証を重ねるセールス・カスタマーサクセス等の活動を行なっています。
常に顧客と誠実に向き合い、オペレーショナルエクセレンスを徹底的に追求する組織カルチャーは、UAC に入社したメンバーが一様に口を揃えて話す「らしさ」そのものです。

名は体を表す、という言葉の通り、UACの組織特性を表すより適切な名前があるのでは、という声がUAC代表柴山を中心に上がり始めたのも、採用文脈と同時期のことでした。

「ブランドの負債」、いつ返済する?

プロダクト開発に「技術的負債」という概念があります。

一般には、「早さ」を求めて構築されたシステムの構造的な課題が、徐々に蓄積し、債務であるように徐々に開発速度そのものを遅くしていく、という現象を指します。

技術的負債はジェンガに例えるとわかりやすく、『エンジニアリング組織論への招待』という書籍に次のような一節があります。

 ゲーム初期段階のジェンガは、簡単にブロックを抜き出したり、積み上げることができます。このとき、ゲームはスピーディに進んでいきます。ところが、ゲームをしばらく続けると、バランスをとるのが急激に難しくなっていき、テンポがゆっくりとなっていきます。慎重に抜き差ししないと崩れてしまうためです。
 様々な要件の変化によって形作られたジェンガは、徐々に不安定に、積み上げるのが難しく時間がかかるようになります。これが開発が遅くなる現象とよく似ています。

ジェンガ、そして技術的負債は、「ブランドの負債」に極めて似ています。

名が体を表さない組織名によって、誤ったブランド認知・ブランド連想が「ブランドの負債」として蓄積されていく現状は、技術的負債と同様目に見えづらい性質を持つため、知らぬ間に採用ひいては中長期的に事業にブレーキをかけてしまう可能性があります。

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たかが名前、されど名前。

返済できないほど深刻化してしまうその前に、ブランドの器としての組織名称を見直すなら今しかない、かつやるなら同時に見直すのがより効果的だろう、と私たちは考えるに至りました。

やったこと

やると決めたらそこからは早くて、実際の課題提起から今日の公開まで正味1ヶ月で完遂しました

Ubie も他の多くの会社の例と同様、会社・事業・組織 (採用) の3つのブランドレイヤーがあり、この3層が相互に影響しあっています。Ubie に限らずこれらの相互作用によってブランド価値が最大になるよう関係性をいいかんじにするのが、いわゆるブランドポートフォリオです。

ただ昨年組織を分けた時点では、正直なところブランドポートフォリオ、特に会社と組織の2レイヤーの関係性についてはあまり考慮していませんでした。今回はまさにそこにメスを入れました。

UAC について、以前は UAC としての単体でのブランド認知を高めるべく、あえてほぼこの略称のまま運用していました。そこから上記で触れた「DevとUACの混同」「UACの組織アイデンティティとの乖離」の課題感を念頭に改称しました。

一方の Ubie Dev 組織についても、上記で触れた「「Dev」がもたらす誤ったブランド連想」という課題感を念頭に改称を進めました。

これらを通じて、コーポレート「Ubie」が、Ubie Discovery と Ubie Customer Science のそれぞれのブランド形成を自然と後押しするような構造へと転換し、組織改称による採用ブランディングの短期/中長期ROIの最適化をはかりました。

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特に留意した点

二組織同時改称は、会社・事業・組織 (採用) のブランドが複雑に折り重なる中での試みでした。

改称にあたって特に留意した点は、次の3つです。

1. コーポレート「Ubie」のブランド資産を活かしながらも、両組織の特性は端的に連想/識別できること

いわばいいとこ取りです。

「Ubie」というコーポレートブランドに後押しされながらも、両組織の特性・目指す方向性が誰でも一発でわかるよう、それぞれの組織をそうたらしめているエッセンスを抽出していきました。

検討プロセスは至ってシンプルでした。Dev 組織の採用ブランディングサークル (ホラクラシー組織におけるチームのような単位) と UAC 代表の柴山を中心に検討を進め、途中両組織の全メンバーから言葉と想いを集めつつ、発散と収束を繰り返しながら、それらを丁寧に紡いでいく作業を行いました。

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2. 今後の事業・組織拡大を考慮できること

また、結論としては以下の図のとおり極めてシンプルになったのですが、組織改称を通じた短期中長期それぞれのROIを最大化する上で、今後の事業戦略や組織戦略上どのような展開がありうるのか、拡張性を考慮することも重要でした。

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3. 運用を徹底できること

最後に、(これまでの反省も踏まえて) 社内外でどう使われるか運用されるかまでの徹底を心がけています。

これまではコーポレート Ubie の位置付けも不明瞭、かつ UAC も Ubie AI Consulting や Scale 組織など様々な形をまとって社内外で伝達されることが多かったため、採用候補者向けの「ユーザーインターフェース」としては正直なところあまり適切ではありませんでした。

いきなり完全完璧!になることはないですが、それでも今回の組織改称を通じて採用広報ガイドラインもアップデートされたため、これらを活用しながら Ubie Discovery / Ubie Customer Science それぞれがより適切な採用コミュニケーションを心がけていきます。

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まとめ

組織の名前は採用ブランドの要であり、採用ブランドは事業や組織の環境に合わせてまるで生き物のように変化進化します。「たかが名前、されど名前」。改称に携わった一人のメンバーとして、そんなことを痛感したブランディングでした。

今回は主に Ubie 視点での二組織同時改称の内幕をお伝えしましたが、採用ブランドは採用候補者一人ひとりとの対話の上に積み重なっていくものです。今後、採用候補者など Ubie に携わる社内外一人ひとりとのコミュニケーションの中で、より良いブランドを共に育てていくことができればと思います。

ここまでお伝えしてきた内容は Ubie 固有の文脈に大きく影響を受けた意思決定ですが、一方で冒頭に触れたようにあまり表に出るような内容でもないため、改称の軌跡をできるだけ赤裸々に書くよう心がけました。あなたがもし組織づくり、ブランディング、採用などに携わっていて、何らかの形で参考になったようであれば嬉しいです。

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Ubie がつくろうとしている価値・顧客に届けようとしている価値は、この世のまだ誰も経験したことのない体験です。Ubie ならそれがもっともっと実現できるんじゃないかな〜と思いジョインしてから、自分はこの春で Ubie 4年目を迎えました。

たった数人のチームから、強みの違う複数の組織が生まれ、事業成長の中で各組織の特性がより色濃く滲み出るようになり、今回の改称に至りました。

Ubie は問診を起点に事業を始めていますが、医療は問診だけ成り立つものではありません。また、より望ましい医療インフラを必要としているのも、もちろん日本国民だけではありません。

これらを同時多拠点突破で進めていくのは本当に楽しいですし、きっとあなたの人生数年分を賭ける価値があるはずです。

事業と組織のダイナミクスを一緒に楽しんでくれるそんなあなたを、Ubie Discovery も Ubie Customer Science も全力でお待ちしてます。

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