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愛してますという男

久しぶりに筆をとる。
(スマホなので指タッチだが)

1年以上ぶりにnoteを開いた。
(運営さん、ご無沙汰してます)

驚いたのが、すでに化石してると思っていた
私の2年以上前の文章たちが、意外にもまだ
目にしていただけている。ということだった。

そして、更に驚いたのが読まれている
ほとんどが私の暗黒時代の代名詞
『エロ副業』いわゆるチャットレディ
についての記事だった。

そして、更に更に驚いたのが
私は、あなたのご近所で見かける
エコバッグにネギを突っ込み
闊歩している、どこにでもいる主婦にも
関わらず、無料で醜態とも思える過去を
こうして発信しちゃってることだった。

なので、今後はネギ突っ込み主婦のリスク管理を
考えて有料記事にしていこうかと思う。

今回は無料だ。
安心したまえ、ベイビーたちよ。

誰にも言えなかった私の、その時の想いや
人との関わりを、あなたの毎日のスパイスとして
文章にして添えられたらと思う。



チャットレディの世界は
疑似恋愛。そんなものではない。

その世界は、男女の欲にまみれた世界そのもの。

男はチャンスがあれば我先にとチャットレディ
(以下チャトレ)に飛びつき欲を満たし果てる。

だが、チャトレ側も男を自らおびきよせている。
体を晒し、普段はしないであろう派手なメイクを施し、これまた普段は絶対につけないであろう
機能性の全くない、男に媚びるためだけの
細く小さな下着を身につける。

男も男だが、女も女なのだ。

だが、明らかな違いは

『男は性欲、女は金欲』

男はそれに気づいてるのか、いないのか。
欲に負けチャトレに金を落とし
女も金という欲に負け、その金を
懐に納めるのだ。


私は『美咲』として、チャットレディ界に
生息していた。

チャットレディと言っても出勤タイプと
在宅タイプがあり、私は在宅タイプを
選んでいた。


男との基本的な交流方法は3つ。


メール、電話、テレビ電話だ。

偉そうに、語り始めている私だが
始めて1ヶ月くらいは
メールしか出来なかった。


メールも緊張と家族への罪悪感とで
いちいち手が震えた。
それに、雨のように注がれる
欲にまみれたメールの数々に
ゲロが出そうな思いで
返事を返していた。

しかし、メールを返せば
雀の涙ほどのお金が入る。

誤って床にばら撒いてしまった
生米を一粒一粒、拾うように
地道で、当時の自分にできる
精一杯の行為だった。


そんなある日、電話しませんか?


というメッセージがある男から届いた。

心底、電話など嫌だったが
仮にも副業を始めている身。

こんな、せせこましいメールだけでは
いつまで経っても
副業で稼いでいるとは言えない。


欲まみれの、会話にならないようなメールを
返すのに思考回路がショート寸前だった私は
『電話しませんか?』という
その一言に、ちゃんとした人間と会話できるかも。
という少しの希望を抱き、意を決して
承諾した。


その日、仕事帰りだった私は
初めての電話なので慣れないこと。
音声のみの電話であること。
外にいるので
エロ行為や話はできない旨を伝えた。


相手もそれを承諾した。


この世界には、人との関わりが苦手で
女性とも話したことがないような人が
心の隙間を埋めるために、
このようなチャトレアプリを利用すると
聞いたことがある。

エロなし、顔出しも無しでいい。

それに、電話しませんか?という
欲まみれの男たちにはない
柔らかな物腰。
(電話しませんか?の一言だけだが
普段のメールにより頭がバグってた)

生きづらい、社会に馴染めない
けど、女性と話はしてみたい。
普段の思いを打ち明けられる人もいない。
そんな、悩みなんかを
誰かに聞いてほしい人なのかもしれない。


約束した時間だ。


アプリ独特の着信音が鳴った。

半ば、聖母マリアと化した私は
緊張することも、嫌な気持ちを
何ひとつ抱くことなく電話に出た。



『愛してます』


開口一番それだった。

私の中の、聖母マリアは瞬時に
退散していった。
そして、またゲロを催す寸前の美咲が
走って戻ってきた。


『愛してます』


固まっている私に、また言った。

こんにちはも、初めましても何もなく
いきなり『愛してます』を
2回も立て続けに言う男。

少しでも会話ができる人間と
話せるかもという私の期待は
雪崩のように崩れ去った。


しかし、どうだろう。


今、どうしようも出来ずに
固まっている間にも
電話が切れない限り
私にお金が入ってきている。
(メール>電話>テレビ電話の順で
報酬が高い)

メールを1通返すよりも
何倍もの値段が入ってくるので
長く話すほど有利なのだ。

なんとか電話を繋ぎ続けなければ…。


「あ、、ありがとう」


と声を振り絞って言ってみた。

すると、どうだろう。


『愛してますよ』


…『よ』が増えた。


しかし、それ以外は続く言葉もない。

会話を繋ぎ止めるために私は言った。


「私も愛してます」


自分でも驚いた。
自分が、見ず知らずの男に
「愛してます」と言っている。

今まで、彼氏や夫にもそんなことを
言ったことは無いに等しい。
正直、好きと何が違うんやと思っていたし
やはり、そこは日本人なのか。

恥ずかしくて言えたもんじゃなかった。


だが、気持ちの全く入っていない「愛してます」
ほど言いやすいものはなかった。


この例えで、分かってもらえるとは
思わないが、志村けんの

「そうです、私が変なおじさんです」

あのテンションとトーンだ。


そこから、2人の愛してますコントが始まった。


『愛してます』
「私も愛してます」
『愛してますよ』
「…私も愛してますよ」


何回、2人で愛してますを繰り返しただろう。


一生分の『愛してます』を使った気がする。


もう、いいやろ…。


緊張も完全に解けて、愛してます連呼にも
疲れてきた頃、電話が切れた。
というか切られた。

色んな人がいるもんだ。

向こうも、愛してるとたくさん言われることで
満足したんだろう。(多分)



なんなんだ…この世界は。


私は、やっと終わったという安堵感と
脇と背中にかいたじっとりとした汗に
気持ち悪さを覚えながら
家路を急いだ。


なんとも言えない表情で
近所の公園内を、そそくさと歩く私を
小さい子供とお母さんがブランコに
乗りながらこちらを見ていた。


〜突然のお願い〜
今後も、この話を書こうと思ってますが
当時の記憶が色々、蘇ってきて
ぐったりするので
応援する意味でサポートと
コメントよろしく頼みます。
1人でもいたら、あなたのために書くね。



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