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【新刊】長編ホラー『ナポカ・ヴィレッジ』刊行によせて 〜ホテル小説家になるまでの道のり〜

新刊の長編ホラー小説『ナポカ・ヴィレッジ』が2023年8月25日に刊行されました。著者紹介を兼ねて「ホテル小説家になるまでの道のり」と題して、これまでの経歴を書いてみたいと思います。

宮城県で生まれ育った私は、大学進学を機に上京し、すぐに舞浜にあるテーマパークのオフィシャルホテルでアルバイトを始めました。お客様の案内を担当するベルボーイの仕事です。これがホテルマンとしての私の第一歩になります。
パークに出発するお客様を元気よく手を振って見送り、帰館したお客様が語る一日の思い出話を聞きながら大量のお土産を部屋まで運ぶ。客層のほとんどは家族連れやカップルでした。夢の国、本当に素敵なテーマパークですよね。

大学卒業後に就職した会社は、東京都内のシティホテルでした。映画やドラマでよく目にするようなホテルを思い浮かべてもらえると近いと思います。あんな感じです。
ラウンジ、コーヒーショップ、ベルボーイと実務研修を行ったあとに宿泊部に正式配属され、希望していたベルボーイの仕事を担当することになりました。
そこで私は、舞浜のホテルとの違いに驚きました。接客する相手は少しリッチなビジネスマンばかり。先輩からは語尾にSirをつけるよう指導されます。

少し慣れたかなと思った頃、人事異動の辞令が出ました。配属先はホテルが業務を受託している社外の財団法人、国際交流を目的とした会員制の宿泊施設でした。ここでの担当はフロントでしたが、ベルボーイ、ドアマン、オペレーター、宿泊予約を兼務する宿泊部門の便利屋のような仕事をすることになります。
ホテルとは違い、ここではやたらと語尾にSirをつけるようなことはありませんでした。そんなことよりも、一人の対等な人間として、敬意を持って相手に接することのほうがよっぽど大切だと教わりました。サービス業にとってとても大事なことですよね。
ここは会員の紹介がなければ宿泊できない施設だったので、国際交流の名のもとに来日する学術関係の方の接客を主に行いました。文章校正や英文のネイティブチェックなども、ここで初めて存在を知ることになります。お金があればなんでもできる。そのような考えの対極にあるような場所で自分自身の視野を大きく広げることができました。

中堅と呼ばれるようになった頃、再びホテルに戻ることになるのですが、そこで新たなる展開が待ち受けていました。お世話になった方から「ラグジュアリーホテルのオープニングスタッフを探している」とお誘いがあり、私は転職をすることにしました。あまりイメージが湧かないかもしれませんが、ホテル業界は狭い業界内での人の出入りが激しく、新しくホテルができると大移動が発生したりします。
転職した東京都内のラグジュアリーホテルでは、最終的には宿泊支配人を務めるところまで駆け抜けるのですが、ここでは本当に多くの出来事を経験しました。
役員に激詰めされたかと思えば、設備故障だといって現場から呼び出される。そして気がつけば採用面接のアポイントの時間。けれどもいつまで待っても応募者が現れない。そんなことばかりでした。約束をすっぽかすのは本当によくないです。やめましょう。
まあ、本当に最悪なことはここには書けないので、このあたりで手を止めておくことにします。事業譲渡、大規模改装、COVID‑19などなど、いろいろありましたが、毎月の時間外労働が100時間を超えるようになったところで限界を感じました。睡眠は大事です。皆さん、ちゃんと寝ましょう。

といった具合で20年働いたホテル業界を離れることにした私は、株式会社旅籠談を設立し、ホテリアBOOKSというホテル小説専門の電子書籍レーベルを創刊しました。
ホテル小説家として旅籠談のペンネームで書き上げた今回の作品『ナポカ・ヴィレッジ』は、ドキドキとワクワクを体験することができる遊園地のお化け屋敷のようなホラー小説です。この作品が、読んだ方の読書生活を豊かにする一冊となることを切に願っております。価格は777円。皆さまのもとに幸運をお届けするラッキー7。縁起物だと思って手に取ってみてください。

【あらすじ】
社員旅行で訪れた南国リゾート「ナポカ・ヴィレッジ」。ホテル社員一行は不可解な状況に直面する。怪談、肝試し、集団感染、そしてクルーズ船の失踪。これは偶発的な事故なのか、それとも仕組まれた罠なのか。特命を受けた三名は社員旅行に潜む闇と対峙する。

『ナポカ・ヴィレッジ』 著/旅籠談 装画/加藤さやか

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CFLD3FYF