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モバイルコンビニ

こんにちは、コーイチです。
 今回は、ロサンゼルスのウェストハリウッド近郊で限定サービスを開始し、「あなたのもとにやってくるコンビニエンスストア」を実現しようとしているRobomartを見ていき、今後日本でもこのようなサービスが実現していくのか考えたいと思います。

1. Robomartとは

                  (出典:Robomart youtubeより)

 10年以上前、オランダとイギリスに本拠を置く一般消費財大手「ユニリーバ」で一緒に働いていたイマッドとアリは、オンデマンドのモバイル食料品店を夢見ていました。
 勤めていたころにアイデアを思いつき、コンテンツのシェア事業やオンデマンドコンシェルジュ事業を手掛けたあと、投資家らに見初められて、ロボット工学の専門家であるティグランと共同で2017年11月にカリフォルニア州サンタモニカでRobomartを設立しました。

 2018年1月のラスベガスで開催された世界最大の技術見本市「CES」で世界初の自動運転店舗と未来のビジョンを示すためのドライバーレスコンセプトを発表し、注目を集めました。 
 食料品や薬局の商品を積んだバンを呼び出すことができる「ストアヘイリング」というコンセプトのことです。
 Robomart(バン)は時速約40キロほどで走行することができ、連続で130キロを走行可能といいます。近くにスーパーマーケットがない過疎地などでの活躍も期待されています。

 その後Robomartは、小売業者が同社と提携し、消費者が呼び出すことのできる車輪付きのブランド・マーケットを展開するための小売業者向けプラットフォームを立ち上げました。
 Robomartは、小売業者が注文処理に要する時間を短縮し、配送量を最大500%増加させることができると言っています。
 同社によると、消費者が同社独自のアプリを開いてから商品を手にするまでのエンドツーエンドの体験は最速で2分未満、平均エンゲージメントは9分と記録されているとのことです。

2.新しい小売店向けプラットフォーム

                   (出典:CIVILNET youtubeより)

 Robomartのアプリのユーザーは、2〜5ドルの料金を支払い、店舗を自分のいる場所に直接呼び出すことができます。
 到着したらアプリで扉を開けて商品を選びます。
 RobomartはRFIDを利用したレジ不要のシステムで、消費者は欲しい商品を手に取り、物理的なチェックアウトと支払いをせずにそのまま持ち運ぶことができます。
 顧客は呼び出し料金と、購入する品目の価格だけを気にすればよく、現在ドライバーは乗っていますが、窓は着色されており、利用者はドライバーと会話しません。
 すべての取引はロボマートのアプリで行われるため、チップも、追加のサービス料金も支払う必要がありません。
(将来的にレベル5の自律性が実現すれば、ドライバーを排除することを想定しています。)

 この新しいプラットフォームにより、小売業者はこの技術の恩恵を受け、新しい販売チャネルを通じて収益を上げることができるようになりました。
 Robomartは自ら店舗からの仕入れを行わず、その代わりにブランドや小売業者が1つ以上の移動式店舗を借り、どの商品をどの価格帯で仕入れるかを決めます。
 Robomartは車両を提供し、サービス用の人員を配置し、自社のアプリとチェックアウト技術で取引のバックエンドを処理します。
 現在のところ、Robomartのレンタル契約は最短で1年間となっています。
 RobomartのCEOを務めるアリ氏は「小売業者には、ロボマートを自社店舗の延長だと考えてほしい。これは小売業者にとっての新しい小売チャネルです。」と述べています。

 小売業者は、スナック、食料品、薬局、カフェ、アイスクリーム、ファストフードの6種類のRobomartのいずれかを注文することができます。
 スナック、グロサリー、カフェのRobomartは、冷蔵モジュールを搭載しており、生鮮食品の鮮度や飲み物の温度を保つことができます。
 スナック、グロサリー、ファーマシー、カフェのRobomartは2022年初めに配備され、アイスクリームとファーストフードのRobomartは現在開発中で来年末に配備される予定となっているようです。
 Robomartは、小売業者が消費者に迅速にアプローチするためのターンキー・ソリューション(すぐに使える、完成引き渡しという意味)を提供し、運営モデルのほぼすべての側面を管理します。
 小売業者は、Robomartの各タイプでどの商品をSKU*として扱うか、商品の価格を決定し設定することができ、パーソナライズされたフルビークル・ブランディングを活用し、ロサンゼルス広域圏で利用できるオペレーションゾーンを選択することが可能です。
*SKU:Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)の略で、
一般的には受発注や在庫管理を行う時の『最小の管理単位』をいいます。

 各ゾーンに設置された補充ステーションにより、商品のストック、タグ付け、スキャン、品質管理、補充をすべてRobomartが行い、小売業者は販売データと分析用の堅牢なレポートダッシュボードにアクセスすることができます。

 CEOのアリ氏は、「この新しい小売店向けプラットフォームは、私たちが提供するサービスを拡大し、小売店がこれまで以上に迅速に商品を届けられるようにするためのユニークな方法を提供しることになった。
今回のサービス開始により、小売業者に対して翌日配達を可能にすることができ、他の宅配サービスにはない体験を提供する業界のリーダーとして、Robomartのさらなる成長を期待しています。」と述べています。

 このプラットフォームの立ち上げは、北米最大の移動・物流拠点と近隣のキッチンを運営するマイアミの「REEF」との提携が成功したことを受けてのものとなります。
 初回導入の成功を受けて、「REEF」は今回、Robomartとの契約範囲を拡大し、リテールプラットフォームの最初の小売業者として、ロサンゼルス全域でRobomartの追加フリートを運用することになりました。
 Robomartのアプリケーションは、iOSのApp Storeで入手可能で、Androidでも近日中に入手できるようになる予定とのことです。

3.ブランドを体験

                  (出典:Trix Corp youtubeより)

 同社は1月16〜18日に開かれた全米小売業協会(National Retail Federation)の展示会において、このワンタップで呼び出しとチェックアウトを行えるプロセスに関する特許を取得したと発表しました。
 これによってこのプラットフォームは今年、LAのウェスト・ハリウッドで行われた招待者限定の試験的なプログラムから、LA全域でモバイル店舗を貸し出すブランド向けのサービスプロバイダに成長することが見込まれています。

 Robomartは、ウェスト・ハリウッドでの試験運用では、ゴーストキッチン企業である「Reef Global」と提携し、ポテトチップスやキャンディなどのスナックを販売しました。
 「Reef Global」はRobomartにとって実験以外で提携する最初の小売業者であり、今年中にはLA広域にいくつもの食料品とスナックの店舗を開設する予定のようです。
 実験では、注文から購入の終了までに平均9分間を要し、ユーザーは平均して週に2回このサービスを使用した。しかし、ユーザーは招待制となっていました。
 Robomartは今年、LA全域での展開を予定しており、アリ氏は「今後5年間に米国の「すべての主要な都市」への展開を期待している。」と述べています。

 スピーディな配送とアプリを使ったサービスに重点を置くRobomartは、ウーバーやリフト(Lyft)などの配車サービスと、ゴーパフ(Gopuff)やゴリラ(Gorillas)のような超高速配送アプリが交差する場所で事業を展開しています。
 これらのモデルは、ハイパーファスト、ハイパーコンビニエンスの顧客向けサービスの次の波が約束され、結果として収益性を証明する前にベンチャーキャピタルから大量の資金を勝ち取ることができます。
 しかしアナリストは、「ベンチャーキャピタルが支援する小売のコンセプトは、実際のビジネスモデルに移行する段階でしばしば破綻してしまうことがある。」、「燃料や充電のコスト、ドライバーとオペレーター、およびサポートインフラと供給コストのことを考えると、販売できる商品は、衣料品のように高価格で利ざやの大きいものか、食料品のように利ざやの小さくても大量販売できるものに限られ、ROI(投資収益率)を達成するために必要な数量を生産できるビジネスモデルにはなりにくい。」などと言われました。

 しかし、アリ氏は、「当社は消費者からは呼び出し料金があり、小売業者からはRobomartを予約するためのアクティベーション料金や継続的な手数料があり、さらに広告もある。このモデルは我々にとって極めて収益性の高いものになるだろう」と主張しています。
 また「Robomartのモデルは注文を梱包する必要がないため、出発前に消費者から注文された商品を梱包する必要がある配送サービスよりも短時間で消費者のところに到達できること」「本当にエキサイティングなのは、我々が作り上げたお客様の体験全体です。」と指摘しています。
 自動店舗送迎は、これまで経験したことのないもので、ボタンをタップして、4~5分で店舗に到着し、必要なものを手に入れることができると言っています。

 このようなビジネスモデルは、収益性・持続可能性の観点から規模を拡大することに問題があると言われますが、消費者がより便利なサービスを求めているということは間違いないかと思われます。

 パンデミックのあいだ、ブランドや小売業者は、モバイル空間や柔軟性のある実店舗のコンセプトへの関心を高めてきました。
 それでも、店舗の機能はここ数年で進化しつづけ、消費者はRobomartのようなサービスが提供する利便性だけを重視しているのではなく、ブランドを体験できることが重要と言われています。

4.最後に

 Robomartのショッピング・コンセプトの興味深い点は、レベル5の自律性が実現する未来には、このようなバンが、実店舗のコンビニや薬局、ガソリンスタンド、EV充電ステーションと競争できるようになるかもしれないということです。
 食料品店向けアプリは、現時点では、スピードはともかく、地理的なカバー範囲に加えて、種類と数量で優位に立っていることは確かかと思われます。

 2018年に上海で出現した「モビーマート(Moby Mart)」も、消費者のもとへ自動的に移動する自律型モバイル食料品店のコンセプトを持っています。

                    (出典:Dezeen youtubeより)

 また日本でもトヨタとセブンイレブンが、無人の自動運転による移動型コンビニエンスストア事業への参入に意欲を示しています。
 移動や物販など多目的に活用できるトヨタのモビリティサービス(MaaS)専用次世代EV「e-Palette」が活用され、早く運用開始したい考えとみられていますが、国内で自動運転コンビニを導入するためには、当然ながら自動運転レベル4に対応した法整備も必要となります。

             (出典:トヨタ自動車株式会社 youtubeより)

 近い将来には、このようなモバイルサービスが普及することで、過疎地と呼ばれるエリアが抱える買い物の問題や高齢者の免許証返上などの問題も解決できるかと思います。
 これからもこれらのモバイルサービスの進化を見ていきたいと思います。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。          
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