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変わり続けるホテル

こんにちは、コーイチです。
長かった緊急事態宣言が解除され、もう既に旅行に行くことを考えている方も多いかと思います。
今回は、旅行会社HISのグループ会社HISホテルホールディングスが運営し、国内外で20カ所ある「変なホテル」を見ていき、その魅力と今後は
どのようになった行くのか考えてみたいと思います。

1. 変なホテルとは

(出典:H.I.S.ホテルホールディングス youtubeより *舞浜 東京ベイ)

 「変なホテル」とは、H.I.S.創業者でハウステンボス社長の澤田秀雄氏の肝いりで発足した「スマートホテルプロジェクト」の一環で誕生したホテルチェーンで、「滞在時の快適性」と「世界最高水準の生産性」を両立するローコストホテルを目指して作られたホテルブランドです。
 2015年7月に長崎県佐世保市ハウステンボスに1号店がオープンし、2017年3月に2号店「変なホテル 舞浜東京ベイ」、8月に3号店「変なホテル ラグーナテンボス」とテーマパーク周辺に相次いで開業したあと、大都市圏中心に新規店舗の展開を進め、現在は国内外で20店舗が営業しています。
 「変なホテル」の「変な」とは「奇妙な」という意味ではなく、「変わり続けることを約束する」という意味となります。

 最大の特徴は、生産性の向上(人件費の削減)を目的に、フロント業務や荷物運びなど、これまで人が担っていた業務のほとんどをロボットに任せていることで、「世界初のロボットホテル」としてギネス世界記録認定を受ました。
 ロボットは女性姿のもの、恐竜型、人形型、ポーターロボット、卓上ロボットなど館内に約80台を配備し、人間の従業員はベッドメークや監視カメラ要員など十数人のみとし、人件費を抑えることでローコストでの宿泊価格を提供しています。
 ロボット導入の他にも、顔認証システムでキーレス滞在を実現し、客室内の設備は設置されたタブレットで一括操作ができます。

2.目指しているもの

「変なホテル」が目指すものは、究極の生産性向上と収益性といいます。
H.I.S.は2015年から2年間、ハウステンボスで「変なホテル」をパイロット営業し、開業当初はスタッフ30名で72室を運営していましたが、2年後には、7名で144室運営できるようになりました。
 スタッフ一人当たり2.4室を担当していたのが、2年間で20.6室にも増加、
結果的に客室稼働率は9割となり、運営利益率は通常のホテルの倍近くになったとのことです。

 少子高齢化で働き手は減っていき、人手不足は将来も解消することは難しいので、機械にできることは機械に任せたほうが、宿泊客を待たせず宿泊客のストレスも減り、ホテルスタッフは人間しかできないことに集中できるという訳です。
 一見常識外れに見える「変なホテル」は、常識に囚われずロジカルに考え抜いて生まれました。そして、3.5星クラスの利便性が高いサービスを徹底した無人化により提供し、結果として高収益を実現しています。

 これまでのホテルの常識は、「品質が高いサービスを提供するには、人のおもてなしが必要」ということでしたが、これをゼロから抜本的に見直して、ホテルを再定義しているのが「変なホテル」と言えます。
「常識」とは、過去にうまくいくことが証明された成功パターンですが、
過去の成功パターンはライバルも多く、過当競争に陥ります。
 さらに世の中も顧客も常に変わり続けているため、「成功パターン」と思っていた常識が、いつの間にか「失敗パターン」に変わっていることも多いのかと思います。
H.I.S.は、それらを考慮して、このような常識を覆すホテルを作ったのかと思われます。

3.変なホテル 長崎ハウステンボス

(出典:ハウステンボス公式 youtubeより)

 1号店は、ハウステンボスのテーマパーク内「ハウステンボス駅」(九州旅客鉄道大村線)から歩いて20分程度の場所に開業しました。
 ホワイトとブラウンを基調にした外観はシンプルなつくりで、外観で変わっていることは、エントランス前にある大きなロボット「スケルトニクス」(人が身につける動作拡大型スーツ)があることくらいです。
 
 ホテルに入ると、ハウステンボスのキャラクター「ちゅーりー」ロボットが出迎えてくれ、その先には、ガラス張りのロボットクロークがあります。
 ロボットクロークでは、タッチパネルで名前と暗証番号を登録し、右側の荷物搬入口に荷物を入れると、ロボットアームがボックスを持ち上げて所定のロッカーまで運ぶ仕組みとなっています。
 ボックスを運び終えたアームは、最後にこちらに向かって手を振りバイバイしてくれる動きなど遊び心が楽しめます。
 フロントには、2体のロボットが並んでおり、チェックインからチェックアウトまですべて対応するというのが、このホテルの大きな特徴となっています。
 女性型ロボット「ゆめ子」さんは微笑みをたたえ、丁寧にお辞儀したり目や口を動かしたりと、表情が実にリアルで、もう一体の恐竜型「未来」くんは日本語と英語を話すバイリンガルということです。
 フロントに立つとセンサーが感知して、「いらっしゃいませ」と声をかけられ、チェックインの手順をガイドしてもらえます。
 最初に自分の名前を告げ、ゲストカードを記入して目の前のボックスへ入れた後にタッチパネルで名前などを入力すると、ICカードキーと領収書が出てきます。
 さらに顔認証システムを利用したい場合は、カメラの前に立って登録します。(登録すれば、キーを使わずに自室へ出入りできるようになります。)
 チェックイン手続き後、「ポーターロボット」に荷物を載せて部屋番号を入力すると、部屋まで先導してくれます。
 画面から流れる音楽や映像を見ながらついて行くと、部屋に到着し、最後にタッチパネルで、ポーターロボットの満足度を★の数で評価するようになっています。
 客室ドアの横には顔認証の機械があり、ボタンを押して認証されれば入室できます。室内は、シックなトーンで清潔感があって開放的な雰囲気となっています。
 部屋に入ると、「こんにちは」とかわい声の「ちゅーりー」ロボットが待っていて、「ちゅーりー」と呼びかけ「電気つけて」と指示すると、部屋の明かりをつけてくれたり、時刻や室内温度、天気などを教えてくれるほか、目覚ましの時刻設定も可能となっています。

 電力とコスト削減のため、各客室には通常のホテルには備わっているテレビ、電話、浴衣がありません(一部にはあるようです)。
 そのかわり、客室にあるタブレットで、フロントへの電話や客室間通話、テレビの視聴、館内の案内を見たり、照明を点灯・消灯することもできます。
 バスとトイレは別々で、照明が人感センサーで点灯・消灯して、電力消費を抑えています。
 また、ホテル全体と各部屋の空調設備には「輻射パネル」(温水や冷水を流して空気調整する最新技術)を採用しており、エアコンのように室内が乾燥する心配がなく、電力削減とともに快適な環境になるようにしています。

 ホテル内に飲食施設はなく、アメニティと軽食、ドリンクの自動販売機が設置されています。
 朝食付き宿泊プランの場合、朝食はすぐ近くの健康レストラン「AURA(オーラ)」を利用します。ここでは、レストラン内で栽培・実験している新鮮な野菜などを使った地産地消ビュッフェが食べられます。
 ホテルでは、宿泊者にアンケートをとっており、顧客からの改善要望を取り入れ、進化させ続けているとのことです。

4.変なホテル ソウル 明洞

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2021年8月に海外初進出として、韓国・ソウル明洞の中心街に「変なホテル ソウル 明洞」を開業しました。
 宇宙船をイメージしたロビーでは、宇宙飛行士ロボットと恐竜がお客様をお出迎えし、ホテルに入った瞬間からホテルステイの楽しさを感じてもらえるようになっています。
 ロボットがチェックイン手続きをすることで、ゲストとホテルスタッフの接触が不要で、コロナ禍でも安心の「非対面チェックイン」システムとなっています。
 また、スマートフォンに専用アプリをダウンロードすることで、ホテル以外の場所からのチェックインや、スマートフォンをルームキーとしても利用することができ、チェックインの時間が大幅に短縮したとのことです。
 客室には照明・エアコン・テレビなどをタブレットで一括コントロールするAI技術を採用しており、アメニティの追加などの要望にはデリバリーロボットで客室まで届けてもらえるので、コロナ禍でも安心の「非対面デリバリー」システムとなっています。
 客室数は8階建てで、4タイプ全100室あり、ホテル1階には本場の韓国料理と和食・洋食が味わえるカフェレストラン「Table B」もあります。

5.最後に

(出典:H.I.S.ホテルホールディングス youtubeより *金沢 香林坊)

「変なホテル」は、どこでも基本的な特徴は同じですが、各地域ごとにコンセプトがローカライズされており、微妙に違いを生み出しています。
 空間や食の違いにより、ホテルの各地域特性を出しているので、どこのホテルでもそこそこ地域性も感じられます。
 また、非接触、非対面などコロナ禍にも対応しやすく、現在のウィズコロナには非常に良いシステムではないかと思います。

 ローコストホテルを目指しているので、このような限られたサービス内容となっているかとは思いますが、別ブランドなどでもう少しサービスや食、エンターテイメントを充実させたものもあればいいのにと思いました。
 ビジネスや観光が主目的の場合、費用が安いのはうれしいことですが、ゆっくりと宿泊を楽しみたい人は、ホテルライフの楽しみも旅の醍醐味かと思います。
 中国でもアリババがテクノロジーをふんだんに使った、最先端のホテル「FlyZoo Hotel」を運営しています。
 中国版「変なホテル」とも言われますが、客室やレストランのクオリティ、  価格は五つ星ホテル並みと言われています。

 今後このような無人ホテルやテクノロジーホテルは増加していくものと思いますが、効率化だけでなく、宿泊体験を充実させるモノ、コト、トキも大切にした施設が出来ることを願っています。

今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。        よろしければスキ、フォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします。


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