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ノウハウゼロから

こんにちは、コーイチです。
メリークリスマス!
今回は、ミニマルなデザインから一部では「シューズ界のアップル」や「シューズ界のダイソン」と呼ばれ、ノウハウゼロから成長率1位のランニングブランドになった「ON」というブランドを見ていき、新興ブランドでもレッドオーシャン市場で勝っていけるのか考えていきたいと思います。

1. On(オン)とは

                    (出典:(ON youtubeより)

 2010年にスイスで誕生したランニングシューズブランドで、ブランドの歴史は元トライアスロン選手であった創業者の一人オリヴィエ・ベルンハルドが、長年けがで悩み続けた経験から、エンジニアのデビッド・アレマンとキャスパー・コペッティのスイス人3人で革新的なランニングシューズの開発に着手したことから始まりました。
 3人ともランニングシューズを作った経験はありませんでしたが、ただ新しいものを作りたいという気持ちは持っていました。

 オリヴィエは、スイスでも名だたるアスリートの一人で、デュアスロンで3度世界チャンピオンになっており、アイアンマンレースでワールドチャンピオンにもなっています。
 プロ引退後、完璧なランニングセンセーションを実現できるシューズの研究に取り組み、プロトタイプを作ってきました。
 早速デビッドとキャスパーが履いて走ってみましたが、すぐに壊れてしまいました。
 しかし、今までにない感触の履き心地で「ここから何かが始まる」という予感を感じ、ブランド立ち上げのきっかけとなりました。
 数えきれない程の試作品が作られましたが、その過程で「ソフトな着地と爆発的な蹴り出し」という基本のコンセプトが揺らぐことは決してありませんでした。
スイスの最先端のテクノロジー技術を採用した商品を開発する」という彼らのミッションは加速していきました。
 ブランド名は、「このシューズを履くと自分のスイッチが入る」という想いを込めて命名されています。ロゴもスイッチをイメージしています。

 現在では、スイス、アメリカ、日本のランニング市場で成長率1位を獲得したスイス発のブランドとして知られており、世界特許技術『CloudTec(R)(クラウドテック)』システムを搭載し、快適なランニング体験を可能にしているシューズを販売しています。
 2010年の設立から約9年で世界50ヶ国、6,000店舗以上でアイテムを展開しており、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が着用するなどファッション業界でも注目を集めているブランドとなりました。

2.ファッションアイテムへ

                    (出典:(ON youtubeより)

 昔は、製品のことをあまり知らなくてもブランドに安心感を感じれば物を買う時代でしたが、デジタルの時代に変わり、現代はデバイス上ですぐ商品に対する何千ものレビューを見ることができるようになりました。
 実際に体験したユーザーの生の声を誰でも得られるので、今まで以上にプロダクトがいかに優れているかが重要になっています。
 通常、新しいブランドはまず、TV広告などプロモーションを駆使して知名度を上げることに注力しますが、「ON」は、実際に製品を使ってもらってファンを増やすということに注力しました。
 そのためにイベントの開催やSNSでの交流など、ストーリーテリングを中心に行ったということです。
 「ON」を代表する「クラウド(Cloud)」は、ユーザーの「まるで雲の上を走ってるみたい」という意見から名前をつけたという話から、交流を深めることでファンの方の想いを汲みあげることもできたようです。

 「ON」は、デザインは機能をサポートするためにあるものだと考えており、装飾ではなく、あくまで何か問題を解決するために存在するべきものと考えています。
 必ず機能や使いやすさという点からデザインを考えており、製品を作るときは、最適なのかという検証をしながら、何度もプロトタイプを作っていきます。
 また、シューズをファッションアイテムとして展開していくという意識はなく、ランニングのために機能が良いシューズを買った人が、かっこいいから日常でも履こうという自然な流れで広まっていったと考えており、2012年頃からストリートウェアが流行した一つの大きなトレンドの動きだと考えているとのことです。
 そして、ストリートウェアが流行する中に快適さや機能、テクノロジーを求める声が多くあり、その結果、「ON」を見てくれる人が増えたんだと思っているとのことです。
 ファッションにスポーツを落とし込んだときに、かっこいいデザインで見た目だけ良くても重さが500gだと着用者も満足しないし、履き続けようとしません。
 快適なものを履きたいという気持ちが人の根底にあると思うので、機能性に重きを置いたシューズ作りを続けていくつもりということです。

 リオ五輪でニコラ・スピリグがクラウドを着用してトライアスロンの銀メダルを取りました。その一方で「クラウド」は、ドイツのデザインが優れたスポーツシューズのランキングで、「ナイキ(NIKE)」のエア マックス(AIR MAX)に続く2番目に高い評価を得ています。
 ハイファッションを扱うラグジュアリーオンラインセレクトショップ「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」では、ハイキングシューズの部門で常にランキングのトップ5に入っています。
 このように、オリンピックでメダルを狙える機能的なシューズが、ファッションアイテムとしても評価される時代になってきました。

3.街履きを意識した初の"スニーカー"

                     (出典:(ON youtubeより)

 「ON」は、旅行に行ってたくさん歩くときや、都心でも機能を求める人のために、街履きを意識した初の"スニーカー"を作りました。
 それは、保護性を高めるためにハイカットにしており、機能を追求して人を刺激するエッジなスニーカーということで、「クラウドハイエッジ」と命名されました。
 機能面はランニングシューズと変わず、Helion™スーパーフォーム、スピードボード、CloudTec®などランニングシューズに使われている全てのテクノロジーが採用されています。

 創業者の一人のデビッドは、このスニーカーを作るにあたり、「ランニングブランドがスニーカーを作るということで、スニーカーだから機能を妥協して安くするということは絶対にしたくなかったんです。同じテクノロジー、同じ気配り、同じこだわりを持って、より街履きに適したスニーカーを製作しました。
 新しいことではないかもしれませんが、刺激を求めている人、何かを始めようとしている人、冒険心がある人、好奇心がある人、イノベーションを追求したい人、人間性を向上したい人、ハンティングな精神を持っている人、そういう人たちにリーチしたいと思っています。」と語っています。

 ブランド名に込めた想いはスニーカーでも変わらず、履くことで自分のスイッチがオンになる靴を目指しています。
 また、「ランニングは人間の精神を物語っていると思うんです。人類は誕生してすぐに走り始めましたが、なぜ今もなお走るという行為を続けているのかというと、境界や限界を超えたいという基本的な欲望があるのではないかと考えています。大げさかもしれませんが、今世界中で新しいことに挑戦しようと思って面白いことをしている人はだいたいスニーカーを履いています。体だけでなく思考や精神的にも人が新しい限界を超えようとするプロセスにオンのスニーカーがあれば良いなと思うんです。」という想いも語っています。

4.フェデラーの参画

                    (出典:(ON youtubeより)

 「ON」のシニアチームメンバーにテニス選手のロジャー・フェデラー(Roger Federer)が加入しました。
 フェデラー選手は、投資家およびアドバイザーとしてオンに参画。
 ツアー通算歴代最多111勝を記録し、史上最高のテニスプレーヤーとの呼び声も高いフェデラー選手の知見を活かし、製品開発やスポーツマーケティング、チームカルチャーの醸成などをサポートするようです。

 フェデラー選手は、参画について「ON」とそのプロダクトが好きで、ファンとして長年愛用してきました。「ON」を知れば知るほど、スイス出身ということ以外にも、私とたくさんの共通点があると気づいたのです。「ON」のチームメンバーに加わり、アスリートとしての経験を活かし、若いパフォーマンスブランドのさらなる成功にどのように貢献できるのか。それを考えると今からとてもワクワクしています」とコメントしています。
 なお、フェデラー選手は「ON」から給与を受け取らず、貢献度に応じた報酬が還元されるといいます。

5.フラッグシップショップの展開

                    (出典:(ON youtubeより)

 2020年12月にアメリカ・ニューヨーク、ローワー・マンハッタンに初の店舗「On NYC(オン ニューヨークシティ)」をオープンさせました。
 「On」は、10年前からNordstrom、REI、JackRabbitなどの高級専門店でシューズを販売してきましたが、自社で旗艦店を持つことはありませんでした。
 363 Lafayette St.にある1,630平方フィートの店舗には「マジックウォール」という装置があり、そのウォール前をランナーが疾走すると、センサーがその人の走行を感知し、その人の走り方にあった、おすすめの靴のスタイルを提案します。
 NPDグループのスポーツアナリスト、マット・パウエルによれば、ナイキ、アディダス、プーマなどの既存ブランドと比べればまだまだ小さいが、「On」の売上はこれまでで「2倍以上」になっており、「シェアを獲得しつつある」ということです。
「On NYC」は、パンデミックの前に新しいビルの賃貸契約にサインし、6月にオープンする予定でしたがコロナ禍により遅れてしまいました。
 デイビッドは、「パンデミックの時期にオープンするのは最適ではないかもしれませんが、ニューヨークは私たちにとって最大のランニングコミュニティのひとつであり、アメリカで最初に発売する場所としたい」とThe Post紙に語っています。
 
 また、2022年春には東京・原宿のキャットストリートに、アジア太平洋地域初のフラッグシップショップ「On Tokyo(オン トーキョー)」を、オープンすると発表しました。
 世界で二番目の直営店舗となる「On Tokyo」は、店内の顧客体験を従来のものから一新するために、デザインとテクノロジーから新たなアプローチを採用すると言います。
 革新的な「マジック・ウォール」を備え、探索的で没入感のある新たなショッピング体験を提供するとのことです。
 ON・ジャパン代表の駒田氏は、アジア最初の直営店舗である今回の出店にあたり、「11年前、私たちはランニング体験に革新を起こすことに着手しました。そして今、私たちはショッピング体験にも革新を起こそうとしています。デザインとテクノロジーを正面に据えたOn Tokyoは、買い物を楽しむ方が全く新しい方法で「ON」の製品を体験することを可能にします。
 世界がパンデミックに苦しんだ2020年以降、私たちはこれまで以上に走ることに癒しと喜びを見出しました。だからこそ、『ランニングを楽しくする』を掲げ続けてきた私たちが、アジア最初のフラッグシップ店をオープンするには、今が最も良い時期だと考えたのです」と語っています。

6.最後に

                    (出典:(ON youtubeより)

  名だたる競合がひしめき合うレッドオーシャン市場で成功していくことは、非常に難しいことかと思います。
 創業者の一人、デビッドは、「参入しようとしている市場に、わたしたちを待っている顧客が誰もいないことは、もちろん分かっていました。業界専門家の多くからは、愚かだとも言われましたよ」、と語っています。
 それでも、ランニングシューズ用に新種のソールを採用するというアイデアで他社を圧倒し、成功を収めました。
 今後も「ON」が成長するには、イノベーション(技術革新)を続け、ナイキやリーボック、アディダスなどの大企業と戦っていく必要があり、またアスレチックシューズは流行り廃りが激しいため、消費者から飽きられないようにしないといけません。

 一方最近では、シューズ、ファッションなどもNFT化している話題が多くなってきています。
 ナイキは、バーチャル・スニーカーやグッズを制作する「RTFKT」を買収し、同社のデジタル化を加速すると述べています。
 日本でも、1SEC内で発足したデジタルファッションレーベル1Blockが、一点物のコレクタブルバーチャルスニーカー「AIR SMOKE 1™」を出品し、約140万円(5ETH)で販売開始わずか9分で即時完売しました。
 このように、今後は実物以外のメタバース分野でも競争が激しくなっていくと思われますが、これらのNFT市場では、新興ブランドでも成功を収めることは十分可能かと思います。

               (出典:GROUNDEAD TV youtubeより)

 競合がひしめき合うレッドオーシャン市場でも、既存の競合とは違う新しい価値や人に役立つテクノロジーがあれば、正しい方法で販売し、顧客の意見も聞いていけば、新興ブランドも十分戦えることがわかりました。
 日本でもこのような世界的新興ブランドが出てくることを楽しみにしています。
 (ONのシューズを履いたことがない人は、一度試してみてください。
  かなり気持ちいいシューズですよ)

 今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。
今年も残りわずかですが、皆様良いお年をお迎えください。
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