見出し画像

小説の書き方(特にSE・ITコンサル向け)

はじめに

 今年2月から、幾つかの小説投稿サイトを使い分けながら、創作を投稿してきました。現時点で、7作品(うち1作品は、長編のスピンオフ)・20万字を書き切ったことになります。

 小説家・羽多奈緒の生みの親かつ師匠であり、リアル生活での友人・きのしずく先生からは、「何人もの友達から、小説を書きたいって相談を受けてるけど、実際に書いたのは、羽多さんだけだ」と言っていただいたので、恩返しの意味も込めて、「書きたいと思ってるけど書くのに苦労している」人向けの、非常にテクニカルな「小説の書き方」・羽多の場合、を公開しようと思います。

 ちなみに、私も、一番最初は、3千字のエッセイを仕上げるのに四苦八苦して、8万字の公募作品を書き上げられるかどうか不安で、きの先生に泣き言を言ったものですが、

案ずるより産むがやすし。とりあえず書いてみろ。

と、実感しております。

このエッセイ?How-To?の想定読者

1. 小説を書いてみたいが、作品を完成させるのに苦労している人
2. 既に小説を書いていて、他の人の具体的な執筆プロセスに興味がある人
3. 小説執筆とシステム開発が、いかに似ているかに興味がある人
4. 羽多の小説の読者様で、羽多の執筆プロセスに興味がある人←

小説執筆の全体像

 ビジネスパーソンなら、提案書やら報告書などのビジネス文書を日々作成しておられるかと思います。その際、いきなり文書を書き始めるのではなく、大まかな設計を事前にする、という方も多いと思います。小説の執筆でも、私は、同じ方法をとっています。

 下図のフローは、羽多が自己流で編み出したものですが、誉田龍一著「新版・小説を書きたい人の本」でも、ほぼ同じ流れが説明されていましたので、自分のやり方に、自信を持ちました(笑)

 なお、右側は、SE・ITコンサルの方向けに、それぞれのプロセスが、システム開発のどの工程に近いか、イメージが伝わるように付けたものです(笑)ちなみに、私は、ほぼほぼ「ウォーターフォール型」開発(注)に近い執筆をしています。アジャイル型とか憧れるけど、今の私のスキルレベルじゃ無理無理~!絶対、ハチャメチャになって破綻しそう!

 注:ウォーターフォール型開発とは、下図のように、上から下に流れていく開発手法のことです。

 そして、SE・ITコンサルの方なら釈迦に説法かと思いますが、小説を実際に執筆し始めるまでの要件定義や設計プロセス、「4.一話単位への落とし込み」までが、しっかりできているほど、執筆中に苦しまず、手戻りや行き詰まりを避けることができます

小説創作の流れ

 ちなみに、上記フローの前段というか、日々の営みとして、「0.ネタを思いついたら、とりあえずスマホのメモ帳に書き殴り、箇条書きレベルでストックし、本当に作品として形にできそうか、じんわり考えながら熟成する」というプロセスがあります。熟成しているうちに、「私には、この設定では書けないなぁ」と、当初想定した設定から軌道修正を図ることもありますし、熟成中に「書きたい!」と、自分の内側から熱が溢れてくるようなときのほうが、結果として良いものが書ける気がします。

 では、現役素人小説家ならではの強みとして、実際に私が最近執筆した作品、「期間限定の恋」を例に、バックヤードを公開していきましょう!

(余談ですが、私の場合、0~2までは紙に手書き、3.くらいから、Google Docsを使って執筆しています。)

1.企画/コアコンセプトづくり

 その作品を通じて、一番訴えたいテーマ、メインメッセージ、自分の主張といったところを固めます。

 羽多の拙作「期間限定の恋」の場合は、私が好きな、某韓流アイドルグループのメンバーが結婚を発表したことがキッカケとなっています。彼らを主人公とした二次創作小説の書き手さんが、「彼が結婚するまでの『期間限定の恋』をしている自分を許す、認める」というコメント、「期間限定の恋」というフレーズ、そして、彼女が発表した、失恋直後ならではの、美しく儚く切ない小説に触発されました。

 失恋は、悲しいし、切ない。だけど、古今東西、創作のエネルギーになるのも事実。私も、この悲しみを、小説に昇華させよう!というのがモチベーションとなりました。

 失恋は、切ないけれど、いつか必ず、癒される日が来る。意外なところで、優しく見守ってくれる人がいる。そんな、優しいメッセージを込めたお話にしたいと思いました。

 そこで、他の人と結婚することを決めたという理由で元カレに振られた主人公が、元カレが結婚するまでの期間限定で、出張ホストと専属契約を結ぶ という基本設定を考えました。

 ※私は、通常、テーマや企画を先に考えて、タイトル(題名)は最後に付けることが多いのですが(そしてタイトル付けに非常にいつも悩み苦しむ)この作品に関しては、タイトルありきで、企画を後から考えました。

2.キャラクター/あらすじ作成

 「新版・小説を書きたい人の本」では、あらすじが先で、キャラクターはその次、となっています。純文学では、その手順が正しいのではないかと思います。ただ、エンターテインメント性を追求する場合は、キャラに萌える読者さんが多いと思うので、魅力的なキャラクターを活かすストーリー、という発想もアリではないかと思います。従って、羽多の中では、キャラとあらすじは、両輪で考えていくことが多いです。

 また、キャラ設定には、必然性が重要だと感じます。ストーリーの展開や、コアのメッセージングに直結しなかったり、矛盾した設定をあいまいなまま書き進めると、微妙にキャラが立たずに、ぼんやりした印象になりがちだからです。

 それと、私は、主人公に、実際の俳優さんやアイドルを当てはめ、その写真を数枚、プロットに張り付けておくことが多いです。書いてる私が萌えないと、執筆モチベーションが上がらないからです。なので、私の作品には、特にBLは、今のところ、イケメンしか出てきません(笑)「平凡受け」とか、「ブサメン萌え」とかの小説は、もうちょっと先かな・・・。人間性は鬼畜でも、見た目が萌えないと、どうも筆が進まないんですよね・・・。

 「あらすじ」は、ざっくり起承転結、物語の大まかな流れと、そこで何が起こって、主人公が何を考え、どう行動するか、みたいなことを書きます。

 自分の考えを纏めるために、自分だけしか見ないと思って作成したメモなので、いざ実物載せるとなると、ちょっと恥ずかしいな。でも、思い切って、エイッ!

期間限定の恋_コアコンセプト、キャラ設定

 作品の時間軸がおかしくならないように、カレンダーを作成していることが、上図からお分かりいただけるかと思います。

 また、「Happy Together」というのは、映画「ブエノスアイレス」の原題です。1997年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門の監督賞受賞作で、日本国内では、ミニシアターでの最高観客動員記録を持っていた気がします(私の記憶が正しければ)。この映画も、腐れ縁のゲイカップルを描いています。劇中、主人公は、当初の恋人とは別れて、ほんわか・ぼんやりと次の恋を予感します。

 あらすじは、レベル感は人により色々だと思いますが、羽多の場合は下図のような感じです。

期間限定の恋_あらすじ

 ・・・この1枚のメモが、最終的には4.7万字とかになるんだから、我ながら、スゴイですね(笑)でもでも!この1枚のメモを書きながら、どれだけ考えが煮詰まってるかで、次プロセス以降の作業の品質・出来栄えが決まるので、この1枚が、むちゃくちゃ大切なのです!(少なくとも、私にとっては)

3.プロット作成

 2.で作成したあらすじを元に、もう少し肉付けした出来事や、思い付いた主な台詞などを、箇条書きレベルでテキスト化していきます。

 この辺から、Google Docsを使っています。オンラインツールを使うことのメリットは、

1. 他の人との共有、共同作業が簡単にできる。
2. スマホからでも見れるので、隙間時間に執筆・校正ができる。

 羽多の成果物はこんな感じです。(一部抜粋)ハイライトは、後のストーリー展開との関連をコメントとして記載している部分です。

期間限定の恋_プロット(部分)

4.一話単位への落とし込み

 4.のプロットを、一話単位に分割します。理想は、一話ごとに萌えたり、盛り上がるポイントを作れることです。(・・・現実には、これがなかなか難しい

 すいません。ここの実物は残っていません。というのも、この工程のアウトプットを、そのまんま、「5.執筆」に使ってしまうからです。(よって、執筆後原稿しか後に残らない)

 だいたい、4.までのプロセスがうまく行っていれば、その小説が、だいたい何話で完結しそうかが見えます。また、私は、一話2,500文字~3,000文字を目安にしていますので、話数×3,000文字で、だいたいの文字数が想定できます。

 (ただ、私の場合、書いているうちに、多少長くなることが多いので、「4.一話単位への落とし込み」が上手く行っている場合、上記で算定した想定文字数を1.2倍ぐらいで見積もっておくと、ほぼ近い値になります。)

5.執筆

 あとはひたすら書くだけです。

 執筆時間は、私は「朝」にしています。

 基本的には、小説の頭から順番に書き始めます。ただ、途中で煮詰まったり、迷ったりした際は、うまく書けない箇所は残しておいて、次の話を書いたり、書きやすいところから埋めて、後から、書き残したパートに戻ることもあります。

 Google Docsで完成させた原稿を、小説投稿サイトにコピペして、プレビュー機能を用いて実際の見栄えなどを確認して、改行位置などを調整して、投稿予約します。

 「書いたらすぐ出したい」派の方もいらっしゃるかと思いますが、私は、「連載を開始したら、毎日、同じ時間に、最新話を1話ずつ更新」としています。(基本は20時)

 自分が読み手だった時に、「毎日・定時更新」の書き手さんが好きだったので(何時に行けば、最新話が読める、というのが分かっていると、頻繁にチェックしなくていいから気持ちが楽)

 例外としては、「〇月末」などの公募〆切までに、日に1話ずつだと間に合わないと判明した場合、日に2度・3度更新したことがあります。(余談ですが、同時に2話・3話より、頻度を上げて、一日2回・3回の更新にした方が、読者さんの反応が良いです)

その他アドバイス(思いつくままに)

・最初は、1万文字以内の短編で、登場人物も二人ぐらいから始めると良い(人間の数が増えると、関係性を描く難易度が上がるため)
・途中でモヤっても、最後までいったん書き切ってしまう方が良い
・そして、完成したものが「イマイチだな」と思っても、どんどん、「恥はかき捨て」で、サイトなどに投稿したほうが良い
・せっかく頑張って書いて、勇気をもって投稿しても、読まれないと寂しいので、投稿サイトは読み比べて、なるべく、自分の作品が受け入れられそうなところを選んだ方が良い
・執筆モチベーションを高める手段として、表紙画像や、挿絵に使いたい画像を集めると良い
・フィクションは、分かりやすさが大事。筆者自身の思い入れや体験は大事にしてよいが、こだわりすぎると、逆に読み手には分かりづらくなることもあるので、割り切って、バッサリと作り話に倒しても良い

 ちなみに、「期間限定の恋」のFujossy用表紙画像はこんなでした。けっこう気に入っています。

画像5
※記事ヘッダ画像は、「早朝の知床峠」 (© kkawamura クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際))を改変して作成


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?