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悪質な「初回無料」ネット通販に法改正の動き!騙されたお金は返ってくる?

「初回無料」や「お試し」といった耳触りの良い言葉を巧みに使い、高額な定期購入契約を結ばせる悪質なネット通販の被害が社会問題になっています。2019年の相談件数は約4万4千件にものぼりますが、これは2018年と比較して2倍近い数字です。

そこで今回は、被害に遭っている方に向けて、「改正予定の特定商取引法とは?」「被害に遭ったお金を取り戻せる?」といった疑問について詳しく解説していきます。ご自身や家族・友人などが被害に遭って困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

改正予定の特定商取引法とは?

特定商取引法(特商法)とは、消費者の利益を守るため、企業の悪質な勧誘や販売などを防止する法律です。違反した場合は、行政処分や罰金、懲役刑などの罰則もあります。

普段よく耳にするクーリング・オフも、この法律によって規定されている制度です。

改正が予定されている内容とは?

特商法の制度的措置に関する検討委員会の報告書骨子案によると、改正が予定されている内容は以下の5点です。

・「顧客の意に反して契約させる行為」の規制を強化し、懲役や罰金を含んだ厳罰化。
・2016年に改正された「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」を分かりやすく明確にする
・「いつでも解約」と表示しながらも、解約できる環境にない妨害行為について行政処分などの規制強化。
・予算を拡充し、違反の恐れのあるサイトの早期発見と執行を強化。
・解約を妨害する行為に対する「解約権」などの民事ルールの創設を検討。

上記の中でも一番重要なのは、懲役や罰金刑を含んだ厳罰化です。これまでも悪質な通信販売を規制する法律はありましたが、行政規制でしかなかったため、厳罰化の導入されることで悪質なサイトを排除する原動力となることが期待されています。

悪質な通信販売で被害に遭ったお金は取り戻せる

悪質な通信販売で被害に遭う金額は、5千円〜5万円程度と比較的少額なケースもあります。そのため、諦めて支払ってしまい泣き寝入りする人も珍しくありません。しかし、そのことが悪質な企業を増加させている原因のひとつともいえます。

まずは悪質な通信販売の請求がきても支払わないこと、仮に支払ってしまったら返金請求をすることが重要です。ここでは、悪質な通信販売の請求を支払う必要のない(返金請求できる)根拠について解説していきます。

クーリング・オフや法定返品権が適用されない

そもそもクーリング・オフは、通信販売では適用されない制度です。しかし、通信販売にはクーリング・オフ制度とよく似ている制度があります。特商法第15条の三に定められている「法定返品権」です。

この2つの違いは、「法定返品権」は条件を満たしていれば返品出来なくなる点です。条件とは、サイト上に返品に関わる特約表示があることになります。

そのため、悪質な通信販売の場合、返品に関わる特約について表示されている場合が多いです。さらに、定期購入契約に気づく2回目の商品が届いた時点では、「法定返品権」が適用される8日間は間違いなく過ぎているため、ほとんどのケースで適用されないことになります。

東京都消費者被害救済委員会があっせん解決した事例

「お試し」や「モニター」といったフレーズが目にとまり、インターネットで購入申込みをした事例になります。1個目の商品分として500円の支払いをした後、2個目が届いて定期購入であることに気づき解約を申し出るも、違約金を請求されたそうです。

結局、東京都消費者被害救済委員会があっせん解決した内容は、以下の条件になりました。

・1個500円で購入する契約は成立したものとする
・2回目以降の商品に関しては、返還する必要はない。また、過誤払い分全額を返金する
・売買代金を請求することは出来ない

この事例では、2回目以降の代金は支払う必要がないうえ、支払ったお金は全額返金することを認める結果となっています。

適切な表示がされていない場合は返金を請求できる可能性が高い

上記で紹介した事例のように、サイト上に定期購入であることや解約に条件があることを明記していない場合(目立たない場所に記載している場合も含む)は、代金請求を拒絶もしくは返金請求出来る可能性が高いです。該当する可能性の高い法律は以下になります。

・民法95 条の錯誤(表示と内容が不一致なうえ、重過失が認められない)
・消費者契約法4条2項の「不利益事実の不告知による取り消し」

特商法改正すれば悪質な通信販売は減少していく

今回、検討されている特商法改正では、このような事態に対して懲役や罰金といった厳罰化が予定されています。それにより、今後は悪質な通信販売が減っていくことが予想されます。

一方で、現在被害に遭って困っている人もいます。そういった方は、悪質な通信販売の請求に対し支払う必要はありません。もし悪質かどうか判断がつかない場合には、弁護士に相談してみてください。弁護士に相談することで、適切な解決方法が見つけられるはずです。

まとめ

「初回無料」といった言葉を鵜吞みにし、トラブルに発展するケースは珍しくありません。
消費者庁もその事実を真摯に受け止めており、特定商取引法を改正して刑事罰の導入を検討しています。すでに最終調整の段階まで進んでいる状況で、成立まで時間の問題といえるでしょう。

もし既に被害を受けているのであれば、証拠を残したうえで弁護士や警察に相談するようにしてください。

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