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キュビスム展と村上隆展

京都市京セラ美術館で開催されている展覧会が、ちょっと面白い組み合わせだと思う。

一つが東京から巡回してきた『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』(2024年7月7日まで)、もう一つが美術館の開館90周年記念展でもある『村上隆 もののけ 京都』(2024年9月1日まで)だ。
*『金曜ロードショーとジブリ展』については本記事では触れませんので悪しからず……。

「伝統的な遠近法や陰影法による空間表現から脱却し、幾何学的な形によって画面を構成する試み」(キュビスム展HPから引用)であるキュビスムについて、ポンピドゥーセンター所蔵の作品を中心に真正面から取り上げるキュビスム展。

一方で、「伝統的日本美術とアニメ・マンガの平面性を接続し、日本社会の在り様にも言及した現代視覚文化の概念「スーパーフラット」を提唱した」(村上隆展HPより引用)村上隆の国内では8年ぶり、東京以外では初となる大規模個展である。

スーパーフラット(を提唱した作家の個展)とキュビスムの展覧会が並行して開催されているのである。狙ってのものではないとは思うが、なんとも面白い。

個人的には、村上隆の作品はあまり好きではない。表面的な造形やデフォルメ具合に、「こういうのが好きなんでしょ」と軽く見られているように感じてしまう。

しかし、展覧会に入ってすぐ目に入る(かどうかは人の多さ次第だが)《洛中洛外図》や四神獣が展示される部屋など、本来は余白になっていたスペースへのつくり込み、細部に対する執念に圧倒された。

160点以上の新作を制作しながら、完成したものから展示されているそうで、おそらく訪れるたびに作品が入れ替わっていくというのも、まだ生きている作家の個展ならではの体験だろう。

キュビスム展も、見どころがたっぷり詰まっている。ピカソやブラックなどの作品はもちろん、国内からセザンヌやルソーの力強い作品も集められているほか、国立西洋美術館を設計したル・コルビジェが描いた絵画なども並ぶ。

ただ、キュビスム展の本当の魅力は、一つ一つの作品ではないように感じた。

キュビスムという一つの流れがどのように湧き出て、広がり、そして大きな世界の中にとり込まれていったのか。追体験を促す構成の面白さが、本展の魅力であり面白さなのではないかと思う。

こればっかりは、展覧会というリアルの体験でなければなかなか味わえないことだろう。

キュビスムとはなんだったのか。スーパーフラットと言っていた作家は今何をしているのか。

気になった方には、実際に足を運ばれることをおすすめしたい。

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