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【#シロクマ文芸部】はそやm版「長靴をはいた猫」

「恋は猫に導かれる、という諺を知りませんか?」

猫が目を細めて姫に言いました。

「そんな諺、聞いたことなくてよ」

姫は笑いました。
なぜ、姫は笑っているかですって?

だってほら、目の前の猫がピカピカに磨き上げられた長靴を履き、恭しくお辞儀をしながらお喋りをしているのですもの。

「私、猫は腕の中で撫でられながらのんびり寝ているものだと思っていたわ」

と言い、ご自分の美しい白猫を撫でる。

「滅相もございません。猫は恋を成就させる神聖な動物なのです」

と少し胸をそらせて猫は言う。

ふふふと姫が笑うと、王が隣で本当かもしれんぞと猫の味方をする。

この前、王は長靴の猫の主人の城へ招待された。

喋る猫に出会ったのは初めてで、物の怪の類かと怪しみ、行く道々で村人に

ここは誰の土地か

と尋ねた。
すると村人は「全て猫の主人の土地」だと答える。

城に着くまでいくつも村を通り過ぎたが、全てが猫の主人の土地だと言うのだ。わが国に匹敵するほどの土地を持つ貴族か。

猫に案内された城は大変立派だったが、城主の若者はどことなく頼りなげだ。この若者が城主?と王はいぶかしんだが、猫に恭しく世話をされる姿は、どことなく気品を感じるような気がしなくもない。

広大な土地を持つこの男が娘婿になったら、そう思うと懐の広い心優しい領主に若者が見えてきた。

ニャ~。姫の腕の中で白猫が鳴いた。

おや、お前、あのお方が私とお似合いだと?白猫は緑の瞳で姫を見つめる。

吸い込まれそうなその瞳を見ているうちに長靴の猫の主人が自分の運命の人のように思えてきた。

「少し、お前の主人と話がしてみたい」

白猫をそっと下ろし、姫は長靴の猫の主人の元へと行く。どことなく庶民的な雰囲気ではあるが、そこがまた新鮮。

今まで姫に言い寄ってきた男達はどこか身分の高さを鼻にかけていた。そして、姫はそれに飽き飽きしていた。

姫を見て長靴の猫の主人はにっこりと微笑む。

無口なところもいいわね。

1か月後、姫と若者は盛大な結婚式を挙げた。

長靴の猫は、王様から貴族の称号を与えると言われたが固辞した。

「どうしてじゃ?」

「恋は猫、という諺を私も実践したくなりました」

そういうと猫はパっと長靴を脱ぎ捨て白猫の元に走り寄った。

若者は姫と
猫は白猫と

末永く幸せに暮らしましたとさ。

PONOさんの参加作品のヘッダーが

「100万回生きたねこ」だったので、思わずコメント欄に

私、記念のぬいぐるみ持っています!

と書き込み、今回の【シロクマ文芸部】のヘッダーに使う約束をしました😊

PONOさん!こちらです!
記念品として絵本と共に限定販売されたものです😊

「100万回生きたねこ」、大ファンなんです。
当時、限定販売の情報を得て、瞬時に購入を決断🙌

最後のシーンは何度読んでも泣いてしまいます。
どうしたらこのような魂を揺さぶるお話を書けるのでしょうか?

私もそんなお話を書きたい。
感動を与える文章を書きたい。
深い文章を身につけたい。
私の修行はまだまだ続きます……

小牧幸助さん、今回もとても楽しかったです😊

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