宇宙人襲来で祖母が警察に通報した話
「大変だよ!」
血相を変えた祖母が家に駆け込む。
「UFOだよ!UFOが出たよ!」
「えー?」
家族のあまりの反応の薄さに祖母はヒートアップしていくばかり。
「本当なんだよ!外に出て見てごらん!」
外に出るのを面倒くさがる私達を祖母は無理やり外へと連れて行く。
「ほら!UFOが飛んでいるだろ?」
確かに空にいくつかの楕円形の光りが、右へ左へと移動している。
でも、あれUFOか?
「じゃあなんだって言うんだい!UFOじゃなきゃなんだっていうのさ!」
説明ができない。
「じゃあUFOだよ」
面倒なので認めてあげた。私は相手が強く主張するものは否定しないタイプだ。
「いい加減なことを言わないで!お義母さんも落ち着いて。きっとなにかのなにかなのよ💦」
祖母の主張を認めるのが嫌な母が、意味不明な言葉でなだめる。
「もういいよUFOで」
妹も家に入りたいので祖母を支持する。
「もう!あなた達たら!」
孫が認めたので祖母はひとまず落ち着き、なんとか家へと戻った。
そういえばおばあちゃんは宇宙人と握手したくらいだから、UFOを発見できるんだね、とよいしょしていたら、
ふふん、と笑いつつ
「このままにしていて良いのか?」
と言い出した。
「通報しないといけないんじゃないのかい?」
「お義母さん、危険はないしこのままでいいんじゃないですか?」
母は常に正当な発言をする。大騒ぎをして恥ずかしい目に遭いたくないのだ。
「まずいだろ。UFOを飛ばしたままじゃ。国かね、通報先は」
「え?お義母さん…え?」
国への電話は困る。祖母は言い出したら聞かないたちだ。
面白がって見ていたが、なにか解決策を提案しないと。
焦りから出た言葉は、
「警察は?」
だった。
「そうだね!困った時のおまわりさんだね!」
祖母は意気揚々と電話をかける。地球を狙うUFOを通報するのである。
祖母=正義
正義=祖母だ。
恥ずかしい…と母は祖母に聞こえないようにつぶやく。
「もしもしぃ、UFOがね、空飛んでるんですよ!」
警察、気の毒だなぁと妹とニヤニヤ見ているうちに電話は5分ほどで終わった。
空を漂う楕円形の薄明りの正体は、一駅先にできた商業施設のライトだった。ライトアップとして営業終了まで照明器具で空を照らすのだそうだ。
かなり離れた位置の商業施設なのだが、クルクル動くライトアップだけ広範囲の地域で見えるとのこと。
「おまわりさんがね、多くの方からUFOじゃないかって通報が来ているんですよ、間違いますよね、わざわざ通報ありがとうございます、って感謝されたよ」
祖母は大満足だった。
母はため息をついていたが、地元警察の器の広さに感心した夜であった。
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