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希林さんを見て祖母を思い出しました

昨日バタバタと用事を済ませ見た「わが母の記」は淡々とした映画でした。

子ども達と母の肉親だからこそ残る長年のわだかまりを、うっすらとしたユーモアに包み表現していました。

上質なエッセイのような不思議な映画で、上手く感想を伝えられないのですが、見てよかったです。

昭和の裕福な家の歴史を淡々となぞる映画のため、刺激を求める方には向かないかもしれません。

全ての演者が上手で、特に樹木希林さんの歳の重ね方が見事でした。

映画の場面が3年後、5年後と切り替わると共に希林さんは小さくなり、視線もおぼろげになります。どうしてあんなに上手に老いを演じることができるのだろう?

食事シーンの多い映画だったのですが、年を重ねていくうちに口の動かし方が、

「そうそう、おばあちゃんもそういう食べ方だった」

というものを自然とされており、その演技に感動しました。

頭も体も元気な頃と違い、自分の世界をさまよっていると立ち姿や食事の仕方に違和感が出ます。

箸をきちんと使っていても「なにかが違う」のです。

おかしくなった状態を演じる場合は、手づかみなどで汚く食べ表現することが多く、実際も周囲は食事で嫌な思いをすることはあります。ただ希林さんはそういう形ではなく口元の動きで「老い」を表現していました。

迷惑な食べ方ではなくても「おかしいな」と感じさせる食べ方も実はあり、希林さんはその状態を見事に表していました。

樹木希林さんはやはり偉大です。

映画の後半で希林さんは息子役の役所広司さんに背負われますが、本当に小さな小さなおばあさんになっていました。映画の冒頭で、すっと立っていたのが嘘のように。

私の祖母は99歳まで生きたのですが、90歳近くなってからは、だんだんと小さくなりました。元気で恰幅が良い祖母だったのですが、やはり小さくなるようです。

ただ、小さくなるまでがすごかった。

60代では年齢と体重が常に同じで誕生日を迎えるごとに1kgずつ体重が増えていました。

そのためウエストを絞った洋服を着れず、アッパッパーと呼ばれるストンとしたワンピースを愛用しておりました。

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私と妹は「おばあちゃんは年齢と体重が比例している」とドキドキし、誕生日に祖母が体重を測定するのを楽しみにしていたものです。(失礼な姉妹だと今は反省)

80歳では本当に「80kg」の大台に乗りました。

「よし!おばあちゃん!来年も!」と興奮する孫達に祖母は「バカいうんじゃないよ」と笑っていたものです。

83歳くらいまでは年齢と体重が順調に比例していましたが、そこがピークでした。83~84kgを何年か推移していた体重は、90の声を聞くころにはいつの間にか60kg台となり、99歳では50㎏前後でした。

特に病気というわけでもなく自然と減っていて、体が適正体重を知っているのではと感心したものです。

ただ、体重が減り始めたころから言動が怪しくなり、自分の世界をさまようようになっていたので、少し多すぎると思われた体重は、脳の働きを助けるものだったのかもしれません。

小さなおばあさんとなった祖母はとても可愛らしかったです。


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