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宮崎駿作「星をかった日」感想! 自分の時間を生きる事で星は育っていく!

  こんにちは!今回は、先日ジブリ美術館で観てきた、ジブリの短編映画「星をかった日」について語っていきたいと思う。
上映時間が16分程の短い映画なのだが、信じられないほど大きな満足感を得る事ができた(ぶっちゃけちょっと泣いた笑) それでは初めていこう。

○あらすじ

 人々の時間の使い方を監督する時間局から逃れる為に都会の家を飛び出した主人公の少年ノナは、ある田舎で不思議な女性ニーニャと出会い、彼女の農園で新しい生活を始める。ある日、モグラとカエルの姿をした謎の行商人スコッペロとメーキンソーと出会ったノナは、自分の育てたカブを、彼らの売り物である小さな星の種と交換する…。

 とまあ、あらすじでもあるように、今作はノナという少年が、人々の時間の使い方を見張る「時間局」のある世界で息苦しさを感じ、一時的に別の場所に逃げ込み、そこでたまたま買う事になった星の種を育てる話だ。

 まず、この元々ノナがいた時間局のある世界というのは、文明が発達して豊かになる代わりに、時間の使い方であったり、成果を出す事や効率を考え過ぎて、息苦しくなっている現代社会の一面を極端に描いた世界なのだと考えればいい。安易ないい方かもしれないが、要は資本主義社会や情報化社会の比喩だと考えていいだろう。ノナはそんな早い世界の時間の流れに少し疲れてしまったという訳だ。そういう意味では、この映画は、むしろ大人というか社会人の方が感情移入出来ると思う。仕事が忙しくて、自分の時を持てなくなったり、自分の好きな物を忘れてしまっている人は沢山いるだろうから。ノナの逃げ出したい気持ちは痛い程わかるだろう笑。

 そして、逃げてきたノナは、ニーニャという逃げ出した先で出会った女性の農園に住まわせてもらい、畑仕事をしながらゆっくりとした時をすごす。そんなある日、たまたま出会った、カエルとモグラの星の売人から、テラ(地球)の種を買う事になる。そして、畑仕事の傍ら、自分の星を育てていくのだ。星には、霧吹きで水を吹きかけて雲を作ったり、ダンゴ虫がついていたりと、まるで植物を育てるようにノナは星を育てていく。

 ノナが、星を育てる事に夢中になっていく姿は可愛く微笑ましい。では、この星を育てるという行為にはどんな意味が込められているか考えてみよう。  僕が考えるに、ノナが星を育てる事は、「自分だけの世界や時間を持つ事」や「心を育てる(回復させる)」事の比喩なのではないかと感じた。ノナの星の育成とは、早い時間に流されず自分の時間を持ち、好きな物や、夢中になれる物に触れて、自分の心を育てる事と見る事が出来る。いってみれば、あの星が育つ姿は、閉ざされてしまったノナの心が開かれていく過程を可視化した物である。つまり星=ノナの心なのだ。

 ノナは元々、「時間」という、自分じゃどうにもできない大きな力の流れに翻弄され、逃げ出してしまった。そんなノナが、逃げ込んだニーニャの住む田舎は、そんな時間の流れから独立した場所で、そこで、自分の夢中になれる物に向き合う、つまり、自分の時間を生きる事でノナが回復していくという訳だ。   例えるなら、会社などが嫌になった人が、休職して田舎に戻り、本当に自分が好きだった物や、夢中になれる事を見つけて回復するような物だろう。人によって様々な解釈があるだろうが、僕はそう感じた。

 そんなこんなで星のお世話をするノナだが、ノナの育てている星が、育って宇宙に旅立つ前に、ついにノナが時間局のある世界に帰らなければならない時がくる。ノナは自分の星をニーニャに託し、時間局の世界に戻った。

 その後、元の世界での生活に戻ったノナの元に、星売りのカエルとモグラが迎えにくる。ノナの星が成長し、ついに旅立つという事でニーニャが迎えをよこしてくれたのだ。
 ノナはイバラードにワープし、ニーニャから「送り出してあげて」と、星を受け取る。その星には、最初一匹しかいなかったダンゴ虫が、何匹かに増えていた。それを見たノナは、「お前、もう寂しくないね。おいき。またお前に会えますように。」と、育った星を宇宙に送り出す。これと同時にノナの心も、きっと回復し、解放されたのであろう。

 その星に次会えるのは60年後だと知ったノナは、「60年も、僕は待てるだろうか」という。するとカエルが、「60年何てすぐさ」と返す。きっと、ノナのように、夢中になれたり、好きな物をみつけ、自分の時間を生きる事が出来れば、きっと60年なんてあっというまにすぎるのだろう。14歳のノナにとっては、途方もなく長いように感じるかもしれないけれど、  60年たってしまった後から思い返せば、一瞬の事のように思うかもしれない。だからこそ、ノナのように、たまには寄り道して、ゆっくり立ち止まる時間が、人生には必要なのだ。

 とまあ、物語に関してはこんな所であるが、この映画は、キャラや世界観に関する説明はほぼされない。ナレーションやセリフに頼るのではなく、まさに映像で語っていくタイプの作品である。その手法があまりに鮮やかすぎて、宮崎さんは長編より短編の方が上手い人なのではないかと思ってしまう程だ笑。何より、宮崎駿の描くイバラードの世界観は凄まじくよかった。宇宙空間に浮島と呼ばれる小さな星達が浮いている映像なんか、めちゃくちゃワクワクしたし、今作の背景美術は、ファンタジーとして100点であろう。

 という訳で、今回初めてジブリの短編映画を観たが、この星をかった日は、めちゃくちゃよかった。今作を膨らまして、長編にしてみたいぐらいだ。ジブリ美術館やジブリパークでしかみられない短編映画は、他にも沢山あるので、また観たら感想を語りたいと思う。

それでは、最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。ではまた🙋

  

 

 

 


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