表紙の言葉

「文藝春秋」表紙の言葉|松村公嗣

「白川郷」

 これまで何度も訪れましたが、今では随分観光地化されました。しかし、自然と調和し続けている姿がそこにはあります。高速道路も開通して文明的な環境にはなれど、山村で暮らす人々にとって大切なことは、不変の知恵と生きることです。本来我々は自然の中にある物を利用して生活していました。文明に憧れ故郷を離れても、雪の庵から立ちのぼる煙に強く引き戻されるものがあります。

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「雪椿」

 かれこれ20年近く前のスケッチから描きおこしました。月日が経てど季節毎に思い出すことは変わらないものです。金沢の旅館で見た椿で、雪深いこの地域でも耐える強靭な枝と花が魅力的です。早咲きは秋頃から咲き始め、たくさんの蕾で春まで長く楽しませてくれます。その生命力から邪気を払う縁起の良い花とされています。越冬する姿は忍耐力そのもので、自然体の小気味良い造形です。

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「雪の大仏殿」

 私にとって東大寺は幼少期から何度も訪れていた、とても身近な場所です。お堂の中にはいつも「だいぶっさん」が休んでおられます。当時、この巨大な構造物に鍍金するためには大量の金と水銀が必要とされました。大陸から伝わる技術を最大に活かした輝きは今でも保たれています。

 新春、視界をまだらに遮るほどの雪が降りました。近くて遠い場所であることをより色濃くさせました。

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「文藝春秋」の表紙画を手掛ける日本画家の松村公嗣さんが絵に込めた想いを明かします。

「赤富士」

高校の夏休み、山中湖近くに住んでいた叔父の家に遊びに行きました。午前4時「早く起きて見に来なさい!」という声で目を覚まし、朝日で真っ赤に染まった富士山を初めて見ました。その景色に、美しさへの感動よりも畏怖の念を抱きました。まるで自分がどれだけちっぽけな存在なのかを問われ、叱咤されている気持ちでした。

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「文藝春秋」の表紙画を手掛ける日本画家の松村公嗣さんが絵に込めた想いを明かします。

「トウモロコシ」

 髭のように長く伸びた細い繊維と乾いた葉にくるまれた、甘く美味しい野菜です。こうして直接食べる品種は極一部で、ほとんどが姿を変えて普段の生活に溶け込んでいる面白い植物です。日本全国に普及したのは明治時代だそうです。コロンブスが新大陸から持ち帰り、後に南蛮船で運ばれなければ今の生活は全く違ったこ

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「飛翔」

 釧路湿原には毎年取材で通っていた時期があります。耳がちぎれそうな極寒の地で、丹頂鶴は毎年越冬の準備のために釧路地域に集まります。白と黒の単純な色調の大きな翼を羽ばたかせ、丹色(にいろ)の頭を器用に動かしていました。一度夫婦になると子育ては2羽で懸命に行い、一生添い遂げると言われております。その環境を守る活動が継続されており、今でも存在する絶滅危惧種です。

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