絵描きのエッセイ

エッセイno.8「みどりのゆびをもったひと」

長かった梅雨が明け、夏の到来となりました。今年はすべてのことが何か、様子が違いますね。あたりまえだと思っていたことがあたりまえではない、そんなことを感じている自分がいます。 今年の春はいつもと違った気持ちで庭を眺めている自分がいました。自宅には小さいながらも母が世話をする庭があります。いつのまにか増えた植物がいたるところでそれぞれに花ひらく様子はいつもの春と同じだったと思います。違っていたのはわたしの気持ち。多種多様な植物が風に揺れる様子を見て庭の生命力溢れる木々やお花に随

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エッセイNo.7「引き出し、引き出される能力」

「あらいさんは傷を輝くものに変えることのできる方だと思ってます。」 今年の夏、個展とイベントで鹿児島に滞在している時のことです。この企画をしてくださったエル・ソニードの徳田さん、ピカレスクの松岡さんと対談という形でお話をさせていただく機会に恵まれ、自分のこれまでの道のりをなんとなく振り返りながら松岡さんと話をしていた時でした。静かに、でもはっきりとそう言われ驚きましたがその言葉が時間が経つほどにじわじわと心に沁みこんできて自分が描いていることの理由がひとつ理解できたような気

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エッセイNo.6「ことばのデッサン」

2020年もあと1ヶ月。「もうすぐ今年が終わるなんて信じられないですね。」なんていう会話をするようになる季節。日ごとに冬らしい寒さを感じるようになってきました。私の住む群馬県は赤城おろしという強風が吹くことで有名で上毛三山(赤城山、榛名山、妙義山)という山々に囲まれています。 デッサンと聞いて頭の中にその画像がすぐに思い浮かぶ人は美術に関わりの大きい方かもしれませんね。石膏像や静物を観察し形だけでなく構図バランスや陰影などを紙に捉える、一般的には絵を描くことに必要な基本的な

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エッセイNo.5「秋、音について考える」

秋が深まってきました。太陽が沈むのが早くなり、空気も少しずつ乾いてくる季節。 秋になるといろいろなものの「音」がよく響くのだなぁと気づいたのは今年、夏の終わりと秋の始まりが混ざりあった頃のことでした。私は音楽を聴く事が好きで、なかでもピアノの音が好きです。音楽というよりも「音」が好きなのかもしれません。 ピアノというとクラシックのイメージがあるかもしれませんが、雑食的に何でも聴きます。友だちから教えてもらったり、入ったお店で好きな感じの音楽が流れているとたずねて探したりし

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エッセイNo.4「旅が教えてくれること」

「もしかしたら飛行機に乗るのが好きなのかも」 この夏、鹿児島へ向かう飛行機の搭乗を待っている時に思ったことです。移動するということだけでどこか子どものようにわくわくした気持ちになっている自分に改めて気づきました。鹿児島へ行ったのは個展を開いてくださったエル・ソニードさん、堂園メディカルハウスさんを訪ねるためでした。 もともと自分が旅好きな方なのかは分かりません。せっかくだから自分の足で行って作品を観てみようと思ったことがイベントを開催していただくきっかけとなり、私のなかの

エッセイNo.3「どうして水彩で描くのだろう」

皆さんは水彩絵の具にどんなイメージをお持ちでしょうか。私は小さな頃使っていたぺんてるの絵の具が馴染み深いです。多くの方には子どもさんが使われる画材というイメージが大きいかもしれませんね。 好きな絵の具のメーカーはいくつかあるのですが、私が現在メインに使っている絵の具はドイツ製の透明水彩絵の具です。絵の具を水で溶いた時の色の広がりが優しくて、粒子が細かくずっと見ていられそうなほどキラキラして……とても美しいです。それをじっと眺めている時間は至福の時間。ぼかしやにじむ様子を見た

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エッセイNo.2「作品がもたらす出逢い、ワークショップというかたち」

振り返ってみますとたくさんの方々との出逢いを経て今の自分に至っているのだなぁと思います。絵をただ描いていた段階から皆さまにご覧いただけるようになった現在、作品を通した出逢いというオプションがひとつ増えました。個展で出逢ってくださる方。ギャラリーを通して出逢ってくださる方。昨年からはワークショップというかたちで出逢える方が増え、かたちは違えども様々な出逢いをいただけるようになってきました。 私が提供させていただくワークショップは一般的に言う「絵を描く」ということからは少しだけ

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エッセイNo.1「わたしにとって描くということ。」

9月1日。 それが起きたのは真夜中の0時を過ぎたころだったと思います。私は2日後にスリランカへの出発を控え、まとまらない荷物をどうにかまとめようと奮闘していました。寝静まった階下が急にばたばたしだし、どうしたのだろうと下へ降りてみると弟の子どもが救急車で運ばれたと連絡があったとのこと。子どもによくある、「ひきつけ」だろうとのことで一瞬ドキッとしたもののたいしたことは無いと安心しまた旅の準備を続けました。 確かな情報が何も分からず朝が来るまでは随分と時間が経ったように思えま

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