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エッセイNo.1「わたしにとって描くということ。」

9月1日。

それが起きたのは真夜中の0時を過ぎたころだったと思います。私は2日後にスリランカへの出発を控え、まとまらない荷物をどうにかまとめようと奮闘していました。寝静まった階下が急にばたばたしだし、どうしたのだろうと下へ降りてみると弟の子どもが救急車で運ばれたと連絡があったとのこと。子どもによくある、「ひきつけ」だろうとのことで一瞬ドキッとしたもののたいしたことは無いと安心しまた旅の準備を続けました。

確かな情報が何も分からず朝が来るまでは随分と時間が経ったように思えました。「大丈夫って言ったのだから大丈夫なはず」くらいに軽く考えていた私の心は次第に重くなっていくことになります。時折入ってくる連絡からはただのひきつけではなさそうなことが分かりました。救急搬送先で対処のしようがなく、別の病院へ運ばれるなかで「心肺停止」という言葉が聞こえてきたのでした。

「生きる」ということに小さな頃から疑問を持ち、持て余してきた自分。考えてきたわりには目の当たりにすると免疫が全くなくてパニックになってしまうほど動揺してしまったことは今考えても仕方がなかったことかもしれません。生きることに希望を持てない自分が生きていて、どうして生きたい人が生きることができないのだろう。自分に問うても簡単に答えは出てきてくれません。自分には何ができるかを考えても何もできない。自分を責めても仕方ないことは分かっていてもしばらくは自分を責めてしまう日が続きました。

でもある時思ったのです。私は私の人生をしっかり生きること、もうそれしかできないのだと。私にとって大切なこと。それは描き、表現すること。もうその道しか私には残されていないという状況でもありました。

昨年参宮橋のピカレスクギャラリーさんでさせていただいた個展「いのちのかたち」。制作の大きな柱としてテーマがはっきり浮かびあがりここからまた、私の人生が始まったのです。


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