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エッセイNo.7「引き出し、引き出される能力」


「あらいさんは傷を輝くものに変えることのできる方だと思ってます。」

今年の夏、個展とイベントで鹿児島に滞在している時のことです。この企画をしてくださったエル・ソニードの徳田さん、ピカレスクの松岡さんと対談という形でお話をさせていただく機会に恵まれ、自分のこれまでの道のりをなんとなく振り返りながら松岡さんと話をしていた時でした。静かに、でもはっきりとそう言われ驚きましたがその言葉が時間が経つほどにじわじわと心に沁みこんできて自分が描いていることの理由がひとつ理解できたような気がしています。いや、理由なんてなくて良いのですが。

生まれてから今まで、誰も傷つかず生きてきた人はいないと思います。どんな人でも少なからず何かの傷を持ちながら生きている。その傷と思えるものを私はずっと無くしたい、克服したいと願いながら生きてきました。傷は良くないものというイメージがあったのでしょう、邪魔なものだから消したいとずっと思っていたのです。それで無くすことができたのか、克服することができたのか。答えはNOです。不思議なことに思えば思うほど苦しさが増していく感覚もありました。私にとって描くという行為のはじまりはここでした。無意識に自分の心を解放する作業をしていたのだと思います。

ピカレスクの松岡さんとの出逢いはとても不思議なご縁で、何かが少しでも違っていたらお逢いすることができなかっただろうと思います。ぎりぎりのところで出逢うことができました。私の作品をご覧くださり、ギャラリーで扱いたいと仰ってくださった日から3年。この3年の間、熱いラリーのような濃いコミュニケーションが私を少しだけ成長させてくれた気がしています。今まで知らなかった、分かっていなかった自分というものを引き出していただきました。引き出される能力、とでもいうのでしょうか。自分ひとりではいられなかった場所に今、立っています。

お守りのように大切にしている水晶のネックレス。それは傷ついているが故に美しい虹色のプリズムが生まれ人を魅了します。松岡さんの言葉を聴いた後、この水晶を眺めていると私の持っている傷も虹色に輝く可能性があるのだと思ったらその傷をそっと抱きしめてあげたくなりました。2020年という年がどなた様にとってもひかり輝く、またはその気配を感じられる可能性に満ちたものでありますように。

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水彩画を中心としたさまざまな表現をこころみています。 毎日の暮らしのなかで感じること、人とかかわり合うなかで、
自然とわきあがってくる目に見えない気持ちを絵筆に託して描く日々。 東京参宮橋にあるギャラリーピカレスクで連載中のエッセイをこちらにアーカイブしていきます。
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