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再読が止まらない

2か月前

【‘‘再読のススメ’’】

三木成夫「はらわたと中身の関係は、いってみれば鋳型と鋳物の関係です。鋳物というものは、これはもうれっきとして人類の伝統工芸の世界です。手塩にかけて造り上げるものです。はらわたすなわち内臓を見直す、これ以上の説明はないと思う」

11か月前

竹内「日本語では『おのずから』と『みずから』とはともに『自(か)ら』である。そこには『おのずから』成ったことと『みずから』為したこととが別事ではないという理解がどこかで働いている。…その交差『あわい』を問うことは日本人の自然認識、自己認識のあり方を相関として問い直すことである」

小林「イマジネーションはいつでも血肉と関係がありますよ。…僕も経験してきたことだが、イマジネーションが激しく、深く働くようになってくると、嬉しくもなるし、顔色にも出ますし、体もどこか変化してきます。本当のイマジネーションというものは、すでに血肉化された精神のことではないですかね」

おおたけしんろう「あるひの ことです。クルリと うしろを ふりむくと、ずうっと きいろい みちが つづいているではありませんか。ジャリおじさんは こうもりがさを もつと、きいろい みちを あるきだしました。なにか、ピンクいろの のそのそが こっちに やってきます」

シーレ「山や水や木や花の身体的な動きを観察しています。至る所で、人間の肉体の内に同様の動きが、植物においては歓喜と苦悩の同様の動きが想起されます。…色彩で絵の質を生み出せることを知っています。極めて親密に、心身ともに、夏に秋の樹木を感じとる。そうした憂いをぼくは描きたいのです」

宇野「川端さんは一番批評におうるさそう…(笑)」川端「いやいや、僕はなんでも気持をむこうに持っていくほうで、感心するほうなんですね。ほめなければ批評じゃないと思うのです」丸谷「僕もそう思います。新しい見方を自分で見つけることが大事になってくる。批評の本道は褒めることですよね」

二十面相「ヘヘン、どうだい。二十面相はどんなことがあったって、へこたれやしないぞ。敵が五と出せばこちらは十だ。十と出せば二十だ。ここにこんな用意がしてあろうとは、さすがの名探偵どのも、ごぞんじあるまいて。二十面相の字引きに不可能の文字なしっていうわけさ。フフフ……」

佐々木「いまちょうど新作の絵本を描いています。『へろへろおじさん』というタイトルで、不条理受難物語なんです(笑)。子どもに『こうだから面白い』というのではなくて、『なんかよくわからないけど面白い』って思ってもらえたら、子ども絵本の新しい地平に踏み込めそうな気がするんです」

友川「まだ小学生へ入るか入らないかの頃、近所の悪童たちに誘われ、四キロの山道を歩いて、汽車を見に行った。往復八キロは、その年頃ではやはり、しんどかったに違いないのだが、『汽車見に行くべ』と言われたときの、ワクワクザワザワッとした気持ちがそれを大きく支えてくれたような気がする」

村上「父の心に長いあいだ重くのしかかってきたものを−現代の用語を借りればトラウマを−息子である僕が部分的に継承したということになるだろう。人の心の繋がりというものはそういうものだし、また歴史というのもそういうものなのだ。その本質は<引き継ぎ>という行為、あるいは儀式の中にある」

小林「詩というものも、考えが違ってきましたね。老年になりますと、目が悪くなり、いろいろの神経も鈍ってきます。そうするとイマジネーションの方が発達してきますね。昔はずいぶん受身でしたよ。向こうに詩がある。それがこの頃では次第に逆になりまして、私のほうからいろいろ想像を働かすのだな」

奈良「うちは割と寂れて…きれいだよ」村上「すぱーんとしているよね。あれは何なんですか」奈良「部屋を見たらその人の頭の中がわかるって言われてて、ゴミ屋敷を見た時にそうだなと思って。制作しているとどんどん散らかっていくじゃない、それが自分の頭の中なんだと思った瞬間に、バッ、ピシッと」

内田「門人の中に理学療法士の方がいて、百歳以上の超高齢者の身体を見ることを研究課題にしています。定期的に彼らの身体を触ってきて、分かったことが一つだけあると言っていました。それは身体認知能力が高いということだそうです。自分の身体の内側で起きている出来事をことばにする能力が高い」

「たろちゃんおはよっ」「おはよう」「たろちゃん座んなよ」「とおるちゃん座んないの?」「うん、ぼく座ってもいいけど座んないの」「えーえーどうして?」「だって立ってる方がかっこいいから」「えーえーかっこいい〜」「じゃああたしも立ってる!」

中沢「俳人は自分の体が動かなくなった時、ものすごい内部運動をし始めるでしょう。芭蕉の最後の句と言われている<旅に病んで夢が枯野をかけ廻る>も、内部でものすごい運動をしています」小澤「止まってしまう寸前の肉体の中で精神ははるかかなたまで進んでいく」

色川「一面の焼け跡で十代の性格形成期に焼け跡の中に突っ立っていたことが胸の中から消えない。家があって畳の上で生活していると思っていたけれど、ははァ、地面というものは泥なんだなとそのとき思った。建築物なんかは泥の上の飾りのようなものでほんのちょっとしたことで消えてなくなってしまう」

伊集院「9勝6敗論に関しては処世術であって、色川さんは6敗から始めたんじゃないか」村松「なるほど、6敗から9連勝か」伊集院「もっと言うと1勝6敗から8連勝。ではその1勝は何か。軍人のお父さんと二人で手をつないで理想的な父子であったところが1勝の始まりではと思うんです」

内田「薪が燃える匂いって昔はあの匂いがすると夕方なんですよね。夕焼け空になってカラスの声が聞こえて」橋本「豆腐屋がラッパをプーッて鳴らして、夕もやが漂っているころに空にうすい夕焼けの雲がたなびくのと同時になんか煙がくるっていう。なんかすべてが一つになるんですよね、音も空気も風も」