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名残惜しく秋を摘めば犬蓼の赤ほろほろと解けゆきたり/塩本抄
回遊魚みたいに街を歩きたい終バスが何時かなんて忘れて/西鎮
話せないことがだんだん多くなる父と無言でいられる映画/toron*
ひさびさに話した友の声色の端から地元の海が広がる/和三盆
怪獣が舞台の袖で偉そうにウルトラマンに扇がせている/エルドラド
レジかごに知らない人のレシートが光のように残されている/梅鶏
真夜中の砕氷船のように行く一瞬みえた愛に向かって/鹿ヶ谷街庵
それぞれの答案用紙が一斉に羽ばたく試験開始のチャイム/さえ(colorfultwigs)
真昼間の月を捕らえてぼくだけの思い出とする教室の窓/高田月光
エンディングノートに記す残された時間を計る深夜のラーメン/有利
床拭けば吾を馬にする君知るやいつか背負へぬ時のくること/斎藤君
十七の滑走路として駆けてゆく八幡坂の天候は晴れ/佐藤氷魚
戦争も飢饉もすべてカラフルに図解されをり歴史便覧/ともえ夕夏