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【ほぼ百字小説】白い塔に登る。気がつくとそう思っていた。この街に住んでいればどこからでもその白い塔を目にすることができる。いつ誰が何のために建てたのかは思い出せない。だがあの塔が街の中心であり、ランドマークであることは間違いない。その塔に登る。登れば何を為すべきかもわかるはずだ。

【ほぼ百字小説】あ、来た――というのはすぐにわかった。机の上に広げっぱなしにしていたノートにペタペタと足跡がついたからだ。ちょっとした間があり、次の瞬間棚の上の埃が舞った。ジャンプもできるようだ。それはしばらくあちこち嗅ぎ回り、今は恐らく私の頭の中にいる。こいつは一体なんだろう?

コタツに穴が空いていた。いや、“コタツの中に穴がある”と言った方が正しい。つい昨日まで普通のコタツだったはずが今は掘りごたつのような縦穴が空いている。しかも底は見えないほど深い。妻にも早く見せねばと慌てて名を呼んだ。返事がない。そういえば今日は朝から一度も妻を見ていない気がする。

ノンフィクション