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『ウルトラマン』シリーズの系譜学②

きたぞ! われらのウルトラマン

 空想科学シリーズ『ウルトラマン』は1966年7月に円谷プラダクション制作の特撮ドラマとして放送が開始された。
 それまで『ウルトラQ』のテレビ放送によって空想科学特撮作品は人気を博していたが、これまでの短編作品の『ウルトラQ』とは違う連続特撮ドラマの制作の企画が決定した。敵怪獣と互角に戦える正義のキャラクターのカラー放送作品というコンセプトにより制作は進められた。
 これこそが、55年にもわたり放送され続け、日本におけるテレビヒーローの一角を占めることになる「ウルトラシリーズ」の発端であった。


空想科学シリーズ『ウルトラマン』

 ウルトラマンの設定について簡単におさらいすると、M78星雲の光の国からやってきた宇宙人であり、宇宙警備隊の隊員として地球にやってきた、というものである。宇宙怪獣ベムラーを追っている最中に、事故により科学特捜隊のハヤタ隊員を死なせてしまったウルトラマンは、罪の意識からハヤタ隊員と一心同体になることで命をつなぐ。ハヤタ隊員はベーターカプセルでウルトラマンに変身し、怪獣や宇宙人と戦う。

 特撮作品としての新たなヒーロー像は大人気となり、『ウルトラマン』という連続特撮ドラマの成功は、怪獣と戦う巨大ヒーロー作品を多く生み出した。
 そしてこのヒットは設定上の言葉だけであった「光の国」「宇宙警備隊」をより具体的にしていく結果となった。


『ウルトラセブン』が広げた「宇宙警備隊物語」

 1967年から放送が開始された『ウルトラセブン』は、『ウルトラマン』の成功を受けての制作が進められた。『ウルトラマン』よりもSF作品としての要素が多く取り入れられ、地球侵略を企む宇宙人との戦いが物語の主軸に置かれた。ウルトラセブンが地球の美しさとそこに住む人々の温かさに惚れ込み、侵略宇宙人と戦かうというのが物語の大筋であり、作風も『ウルトラマン』と比べてメッセージ性を全面に押し出したものが多い。
 キャラクターとしてもウルトラマンと差別化が図られた。ウルトラマンが宇宙警備隊員であったのに対して、セブンは恒点観測員という設定で、ウルトラマンがハヤタ隊員と一心同体となって変身するのに対して、セブンは人間に変身して普段はウルトラ警備隊員として過ごし、戦う際にはウルトラアイによって元の姿に戻る。

 ここで、セブンが恒点観測員という肩書であるという点に注目することで、設定の具体化を見ることができる。
 つまりセブンは、ウルトラマンとは別部署の職員で、この設定の広がりによって、光の国の組織が垣間見えることとなった。ウルトラマンとの差別化が図られたことで生まれたこの新たな設定の追加で「光の国 宇宙警備隊物語」体系化のきっかけとなった。

 ここで生まれた「光の国 宇宙警備隊」の設定は、続くウルトラシリーズでさらに肉付けされていく。1971年放送の『帰ってきたウルトラマン』で本格的な「光の国 宇宙警備隊物語」をベースにしたシリーズ化が成され、1973年放送『ウルトラマンタロウ』において一つの到達点を迎える。


体系化された「ウルトラシリーズ」物語群

 現在、ウルトラシリーズの根本にある大きな物語として存在する「宇宙警備隊物語」は、『ウルトラマン』でできた設定の一部を、『ウルトラセブン』においてまた一部違う点で作り出し、『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』の点と点を線で結んだ結果としてできあがったものだったと言える。
 この線上に浮かび上がった「宇宙警備隊物語」から、そのスピンオフとして数々のウルトラ作品が生まれることになる。

 今でこそ体系化が強固なものになり、平成に制作されたパラレルワールド作品ともつながったことでより大きな世界観を生み出すことになったが、そのルーツをたどると『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』におけるキャラクター設定と当時の特撮作品の人気が、その後押しをしたことがわかる。

 あくまでも過去作品の一部を流用して、作品を作り出していくなかで発展させることによって、最終的にシリーズの体系化が成されたということだろう。先ほども述べたように、いまや「宇宙警備隊物語」はウルトラシリーズの根本を支える物語設定となっている。

 そしてこの物語設定からまた作品が生み出される。『ウルトラマン』が咲かせた花が、近縁種の『ウルトラセブン』という芽を生み出し、この二つの植物が合わさってともに成長して、大きな「宇宙警備隊物語」という大樹を形成した。その大樹には様々なウルトラ作品が枝葉をのばしている。「宇宙警備隊物語」という大樹は制作者の姿勢によってその土壌を耕され、キャラクター商品化の大人の事情によって肥料を与えられた。

 物事の発展に伴う一筋の体系化とは、温故知新と資本主義経済が結びついたときにその完成を見るのかもしれない。

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