人生って結構思い通りになる【小説】手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~
【読んだ本】
手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~
喜多川 泰
【はじめに】
迎春という言葉をたくさん耳にして少し経ちますが、まだ顔を出してくれない春を待ち遠しく感じるような厳しい寒さが続いていますね。
お元気ですか。
手紙屋の手紙は決まってこのような、季節の挨拶から始まります。日本語の何と美しいことかと、感嘆するばかりです。
皆さんは手紙を書いた、もしくは受け取った経験はありますか?私は小学生の恩師と10年近く文通をしていた経験があったりしますが、今では年賀状さえ書かなくなってしまいました。手紙を一度も書いたことももらったことも無いという人も、もう少なくないだろうと思います。
本書はそんなあなたでも受け取ることのできる、人生を変える言葉が詰まった手紙です。ぜひ便箋の封を開くような気持ちで読んでいただきたいと思います。
【簡単なあらすじ】
高校を卒業して横浜で一人暮らしをする大学生の主人公、西山諒太は横浜駅から徒歩5分の喫茶店「書楽」の常連客です。
「書楽」は喫茶店でありながら客に書斎という空間を提供するという変わった店でした。その「書楽」で、とあることをきっかけに諒太は不思議なチラシを目にします。
「はじめまして、手紙屋です。手紙屋一筋十年。きっとあなたの人生のお役に立てるはずです。私に手紙を出してください」
就職活動の波に完全に乗り遅れていた諒太は、ついこの数日で家族の心配の声を受け、ようやく重い腰を上げて就職活動をスタートしたところでした。
そんな迷いの中で不思議なチラシに出合い、半ば投げやりに諒太は手紙屋に1通目の手紙を出します。
そこから、諒太と手紙屋の手紙のやり取りが始まります。
【感想】
言葉は人を動かす大きな力を持っている。
読み進める中で、ビジネス書や啓発本を読むのに近いような感覚がありました。ビジネス書や啓発本では、成功のためのノウハウや、成功者の体験が語られ、それを自分に落とし込むことで、自分を変えることが目的だと私は思っています。
ですが、基本的にはフィクションとしてのストーリーを楽しむという娯楽が目的の文学作品である本書を読む中で、手紙屋からの手紙を読むごとに、自分の心の持ち方が、これからの行動が変わってゆくのを感じました。
このような、自分が変わるという経験を文学作品の中でこんなにも多量に得られるのはとても珍しい経験だったと思います。
その珍しい経験を支えていたのは、間違いなく主人公である諒太の成長だったと思います。
諒太は手紙屋との手紙のやり取りの中で、今まで持っていなかった考えや、新しい自分に出会っていきます。
そして就職活動という荒波の中で、その結果だけでは表せられないような成長を遂げていきます。諒太が手紙屋に宛てて書いた一通目の手紙と、最後となる十通目の手紙を見るだけでも差は歴然としています。
諒太が、手紙屋の言葉に動かされているのを目の当たりにすることで、言葉が人を動かす事へのリアリティが増していったように思います。
手紙屋からのたった十通の手紙が、諒太の人生を変え、私の人生を変えました。そこにあったのは言葉だけです。私も諒太も、十通目の手紙を読むまで手紙屋が何者なのか、どんな成功を成し遂げているのか、全く知りません。
それでも手紙屋の紡ぐ言葉には何か不思議な力があります。この世の真理を見ているような、それでも日常の中の一幕を見ているようなそんな言葉の数々です。
まだまだ未熟ながら、こうして文章を書いている身として、そんな人を動かす言葉が、自分にも書けるようになるといいなと思います。
【考察(※書籍の内容を含みます)】
手紙屋からの十通の手紙の中で、私が一番好きなのは四通目の手紙
「思い通りの人生を送る」です。
四通目の手紙を手紙屋に送る直前、諒太は初めて受けて手ごたえ十分だった企業の最終面接に落ちてしまいます。
想像以上のショックに肩を落としながら、その旨をいつもより短い文章で手紙屋に伝えた返事に手紙屋が紡ぐ言葉に、人生の教訓にしたいようなことがたくさん書いてありました。
私が受け取ったメッセージは二つです。
①頭の中につねに”天秤”を用意する
②私たちは、成功の人生を送る上でどうしても必要な経験を集めているだけ
「人生は思い通りにいく」多くの成功者が座右の銘にする言葉です。
「人生は思い通りにいかない」夢を実現できなかった、もっと多くの人たちが感じる人生の教訓です。
前者にとって、人生が思い通りにいくことは当然のことだと手紙屋は手紙の中で語ります。
ここで必要なのが前述した”天秤”です。
天秤の片方の皿に実現させたいこと、夢を乗せます。それらを手に入れるには、当然それと釣り合うだけのものが必要です。
「人生は思い通りにいく」という人は、天秤に乗せた夢に必要なものを必要な分だけ乗せています。だから夢が実現できることは当然なのです。
対して「人生は思い通りにいかない」という人は、夢を乗せたもう片方の皿に全く見当違いのものを乗せてしまいます。”○○大学に合格したい”という夢と、”お賽銭100円”を乗せているようなものです。当然、釣り合いません。
ですが、長い人生の中ではこのように釣り合わなくても手に入ってしまうことが何度かあり得るのです。これが”本当のピンチ”です。
そのような経験をたくさんしてしまうと、天秤が釣り合わないと手に入らないという事が当然でなくなってしまいます。
「なぜあの時は手に入った(思い通りにいったのに)......」これが、「思い通りにいかない」の正体です。
夢が叶わない、欲しいものが手に入らないことは、正しい天秤を持ち続けていれば”当然”のことであって、その経験があってこそ正しい天秤に乗せるべきものが少しずつ分かってくるのです。
つまり、私たちが「思い通りにいかない」と思っていることのほとんどは、人生の成功のもう片方の天秤の皿に乗せるべきものを知るために必要な経験なのです。
【おわりに】
手紙屋の料金は、決まっていません。
十通の手紙を受け取った人が、何かに成功したときに手紙屋に対して返したいものを何か一つ返すのです。
諒太は何を返したのか、本書やこの記事を読み終わったあなたが何を返そうと思ってくださるのかは、是非実際に十通の手紙を受け取って考えてみてください。
あなたにとって、本記事が一通目の手紙となってくれたら嬉しいです。
そのときはいつか、夢を実現させたあなたから便りが届くのを心待ちにしております。
あなたの手紙屋になれたらいいなと思っている「筆者」より。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、また。
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