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『無表情な日常、感情的な毎秒 2021年2月ver』台本無料公開

無表情な日常、感情的な毎秒
        2021年2月ver

僕の主宰する演劇ユニットで、12ヶ月毎月公演をします。芸人がネタを一年たたいて賞レースを目指すように、一本の戯曲を様々な場所でやり強化してみるという企画です。noteとYouTubeで稽古などの様子を随時アップしていくので、12ヶ月追ってもらえると面白いと思います。配信でも観れます。

この公演の台本を無料で公開します。ネタバレが凄いので、先に内容を知りたくない人は読まないでください。大丈夫な方は、昔の映画のドラえもんやクレヨンしんちゃんが映画公開前に原作者の書いた同じ内容の漫画を公開していたのと同じ感覚だとだと思ってください。今の若い子にはわからないも(笑) この台本を12ヶ月いじくり倒して叩きます。毎月1本くらい短いお話が増えます。12ヶ月後にベスト盤を公演します。

読み辛いと思いますが楽しんでいただけたら幸いです。


世界が変わろうといている。僕達が止まろうとも地球はまわるのをやめない。
先が見えない今、僕達にできることは現在のその場に現象を起こし足跡をつけること。
世界が変化の時だろうと、恋もするし、バイト先のことで悩んだりだってする。
目の前のリアルこそが現実だ。
その日の、その日だけの本当。そこに立っているという事実は公演中のみ確認できる。
虚構の中に現在という事実を映し出すその日の公演。


※注
配役の組み合わせは自由で、登場人物の性別も特に指定はない。
様々な場面が描かれるが、基本的には舞台セットはないことを想定している。
一人称や語尾や言い回しなどは、演じる俳優に合わせて変えていい。
話と話の繋がりはあまり考えなくていい。組み合わせによって話は変化する。言いたいことが伝わればどれだけ台詞を崩してもいい。
やる月によって順番を入れ替えたり、削ったりするのは自由。



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会場には観客と同等にクリエイションメンバーが自然に自分の意志で動き呼吸をしている。

定刻になったら照明が変わるがメンバーは変わらず談笑を続ける。日常と公演の境が無いように。

良きタイミングで観客に挨拶をし各々自己紹介をする。
挨拶が終わったら

「では、ここからお芝居はじめますね」
「と言っても、たまに自分の言葉でも話します」
「と言っても、その言葉は役に入りながらだから厳密には自分の言葉ではないのかもしれません」
「魂が肉体から出たり入ったりする感じですよね?」
「違います」
「どうしたんですか急に?」


[共同生活]            


場所は、東京の同棲中のボロアパート。(深夜)


〇等身大の自分での会話から漫才のように芝居に入る。

「最近寝不足なんですよ」
「なんで」
「彼女と同棲してるんですけどね」
「いいじゃん」
「そうなんですけどね」
「喧嘩でもしたの?」
「そういうわけじゃないんですけど。居心地が悪いというか…」
「性格が合わないとか?」
「そういうわけでもないんですよ」
「どういうこと?」
「なんかね、、、くるぶし辺りを蹴られてるんです」
「え?」
「朝起きるとね、、、くるぶし辺りを蹴られてるんです」
「彼女に?」
「…はい」
「寝てる間に?」
「多分」
「多分って、記憶ないの?」
「蹴られた記憶はないんですけど、毎朝起きるとくるぶし辺りが痛いんです」
「なんか悪いことしたの?」
「寝顔が腹立つんだと思います」
「普通は好きな人の寝顔って愛おしいけどね」
「なんか、それが原因かわからないんですけど、夜眠れなくなっちゃって…」
「それで寝不足になっちゃったんだ」
「だから、夜中はいつも散歩してるんです」
「彼女は心配しないの?」
「彼女が寝たのを確認してから外に出ます」
「なんか大変だね」
「まあ」
「同棲してどれくらいなの?」
「2年くらいですかね」
「彼女はなにが不満なんだろうね?」
「それを知りたいので、ちょっと彼女やってもらえません?」
「私が?」
「はい。で、どこが悪いか見てください」
「わかりました。私が彼女やればいいのね」
「場所は、同棲中の新中野のボロアパート。深夜1時くらい」

芝居に入る。
A横たわる。B座っている。

沈黙

「…寝てる?」
「…起きてる」
「…起きてたんだ」
「…」

A起き上がり冷蔵庫から水を取り出しグラスに注ぎ飲み干す。

「幸せになりたいなー」
「…」

Aまた横になる。

「聞いてんの?」
「あ、うん」
「なんか話してよ」
「……」
「いつも私ばかり話してんじゃん。クロスしてよ。トークをさ」
「……ごめん。寝ぼけてて」
「起きてたのに?」
「……」
「会話しないと一緒にい住んでる意味なくない?」
「ごめん…」
「なにか言い返してよ。じゃないと私が悪者みたくなるじゃん」
「ごめん」
「だから、なんでも謝るのやめてよ。悪いと思った時だけ謝って」
「……ごめん」
「(溜息)怒ってるわけじゃないんだけど私。そうやって怒られてるみたいなポジションとることで、安心するのとかマジやめてくれる」
「…マウンティングされてますみたいな感を俺が出し過ぎるってことでしょ?」
「そう」
「それが悪い癖だっていうことは前話したよね。…ごめん」

気まずい沈黙

「顔相が良くないよね。顔相が」
「がんそう?」
「そんな暗い顔じゃ次の時代にいけないよ」
「次の時代って、この前言ってた「何とかの時代」ってやつ?」
「そう」
「そっか」
「信じてないでしょ?」
「いや、……どうだろ」
「スピリチュアル的な怪しいやつだと思ってるでしょ?」
「…まあ」
「スピリチュアルって別に怪しくないから。てゆーか、スピリチュアルみたいな見えないものを信じられない人は次の時代に行けないから」
「この前言ってた「二極化」ってやつでしょ?」
「そう。ちゃんと覚えてるじゃん」
「あれだけユーチューブ見せられたら覚えるよ。240年ぶりに時代が変わるんでしょ」
「社会意識をリードする惑星と、時代のルールを創る惑星が、240年ぶりに違う惑星に変わるの」
「この前、聞いたよ」
「「前の時代」が象徴していたのは、物質的な豊かさや生産性、安定で、それによって、ヒエラルキーと貧富の差が生まれたわけ。家や車、家電製品などを所有する、お金を貯める、受験勉強をしていい大学へ、そして優良企業に就職して人生を安定させる。そういうことが最高の到達点とされてきたでしょ。それって、ルールと社会意識に洗脳されて生きてきた証拠じゃない?」
「…まあ。どうだろ」
「今後は、情報、体験といった目に見えない豊かさ、ネットワークや人脈の広がりが大切になっていく。ということは、カラダよりも精神の解放が大切な時代になるんだと思うんだよね」
「どういうこと?」
「物質的な幸せじゃなくて、自分の中の精神的な幸せを求めるようになるってこと」
「ふーん。…で、結果、俺は次の時代に行けないわけ?」
「これから、二極化でポジティブな波動を持つ人とネガティブな波動を持つ人に別れるわけ。ポジティブな波動を持つ人とは、自分の心に正直に、自分の望むワクワクに沿った生き方を選択することのできる人。本来の、ありのままの自分が完璧だったと気付いた人のことをいいます。ネガティブな波動を持つ人とは、旧態依然のまま変化をしない、変化できないと思い込んだまま目覚めないことを選択した人です。なので、あなたは次の時代にはいけません。さようなら」
「…そっか」
「そっかじゃないでしょ?」
「え?」
「今からでも変わろうと思わないわけ?」
「…別に次の時代に行けなくてもいいし」
「はあ? 普通行きたいでしょ。変わろうと努力しなよ」
「…まあね」
「私、「まあね」っての嫌い。そのあと確実になにか含んでんじゃない。言うの我慢した言葉をさ」
「まあね…」
「それ!」
「…人間なんでも思ったこと言えばいいってもんじゃないじゃん。オブラートに包んでさ、相手が嫌な思いをしないで、それでいて一番刺さる言い方ってもんに変換しながら話すわけじゃん」
「自分の気持ちをしっかり相手に伝えられないなら次の時代に行けないよ。はっきり言うことこそが正義でしょ。はっきり言わない癖に後出しで「あのとき失敗すると思ってたんだ」とか平気で言ってくる奴とかホント無理。最初から言えよって叫びながら近くにあった鈍器でなぐりたいくらい」
「別に俺は俺のやり方で生きててもいいじゃん」
「そんな古い考えじゃ次の時代いけないって。これからは、我がままでいいの。自分の心の意見をちゃんと聞いて自分の為に動かないと取り残されるよ。我がままの字の通り、我のままで生きるの」
「いや、本当に別に次の時代に行きたくはないんだって」
「そうやって変化を怖がって前に進めない人も次の時代に行けないから」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なに?」
「人に自分の意見押し付けてくる奴は次の時代に行けるわけ?」
「そんな奴は次の時代行けないでしょ」
(指を指す)
「え? なに?」
「めちゃくちゃ押し付けられてるんだけど…」
「押し付けてはないし。選択肢の話だし」
「俺は今のままで良いって心の底から思ってます!」
「だから、そのネガティブ思考をやめないと」
「ポジティブです!」
「え?」
「勝手にネガティブにしないでください! 僕はポジティブで言ってます!」
「でも…」
「あと、ネガティブも悪いとは思ってません! それはポジティブな思考でそう思ってます! 色々な考えがあります! 多様性です!」
「…もういいや」

A寝る
Bくるぶし辺りを蹴る。

[天国]


「ノストラダムスの大予言って昔あったじゃないですか」
「あぁ、ありましたね。1999年に人類が滅亡する的なやつでしょ」
「はい。それです。それです。あの頃って、世界中が終わりを期待してる感じがあったじゃないですか」
「そうですか? …まあ、なんとなくわからないでもないけど」
「あそこの時点で地球は終わっているわけですよ。そこからは惰性で続いている。だから、
今は希望がない状態なわけです」
「はあ…」
「終わることも続くことも期待しない。ただ、徐々に終わりに向かうだけ」
「確かに、徐々に終わりに向かっている感はありますね…」
「どうして、こんなことになってしまったんでしょうね」
「満足しちゃったんじゃないかな?」
「どういうことですか?」
「現状に満足したら引退するじゃん。そういうこと」
「? いやわからないです」
「人類って、原始時代以来、ずっと「問題が過剰で解決策が希少」っていう時代を生きてきたわけじゃない」
「確かに」
「それが、科学の進歩とかで問題がどんどん解決されていたってことですか?」
「まあ、そんなところですね」
「なのにどうして私たちは満たされてないんですかね?」
「ワクワク感じゃないですか?」
「ワクワク感?」
「小さい頃、台風来たらワクワクしたでしょ?」
「しました?」
「人類の長年の夢だった「差し当たって、今日を生きるのに大きな心配がない」という状況が、多くの人にとって現実のものとなったにもかかわらず、何かが満たされていない、 人生において何か本質的に重要なものが抜け落ちているような感覚」
「確かに、なんでも欲しいものは手に入るし、物質的なものは満たされてますよね」
「だから、やっぱりワクワク感が足りてないんですよ」
「あの……」
「どうしました?」
「で、これって今どういう状況なんでしょうね?」
「私にもさっぱり。気がついたらここにいましたからね…」
「真っ白い空間にこのメンバーだけがぽつりと存在する」
「出口も見当たらない」
「もしかして…死後の世界かなんかですかね?」
「そんなわけないでしょ」
「このままいけば、神の裁きがあって何に転生できるのか決まるだ…」
「え? それどこからの情報ですか?」
「どこからって…私の予想だけど」
「推測ってことですか?」
「そうだけど?」
「推測を確定した情報みたいに言わないでもらえますか」
「いや、どうなるかわからないんだから推測していいでしょ」
「よくないですよ」
「大体、死後の世界なんて、転生する前の準備段階みたいな感じって相場は決まってるでしょ」
「だから、まだ死後の世界って確定してないでしょ」
「このあと、神様に聞かれるんですよ。「生き返ったらなにになりたいですか?」って」
「え? それ、どこからの情報ですか?」
「私の推測です」
「だから、推測を確定の情報みたいに拡散しないでもらえません?」
「別に確定みたいに言ってるわけじゃなくて、自分で考えて発信してるわけだからいいじゃないですか」
「いや、一方的な発信だけじゃなくて、話し合いましょうよ」
「話を止めてるのはアナタでしょ?」
「はあ?」
「あなたみたいな人は、人間に転生させてもらえませんよ」
「それもどこからの情報ですか?」
「私の推測だけど?」
「推測やめてください!」
「どうして? そんなの勝手でしょ。独り言なんだから」
「ちゃんと勉強してから発言してもらえます? 知識がないのに発言しないでください」
「…知識がなければ発言もするなってことですか?」
「姿も形もない状態で真っ白な空間にいるのにいてみんな不安なんですから、不安を煽ったりするのはやめましょうよ」
「思いついたこと言ってるだけじゃないですか」
「自分で発言したんだから責任持ってください」
「人間、日々変わるんですから一言一言に責任なんて持てませんよ」
「無責任すぎるでしょ」
「じゃあ、あなたが聞かなきゃいいんじゃないですか?」
「できないでしょ。聞こえちゃうんだから。あと、どうして僕が聞かない努力しなきゃいけないんですか? あなたが言わないようにすればいいだけでしょ」
「わかりました。すみませんでした。これでいいですか?」
「謝ったら削除できるわけじゃないでしょ。発信しちゃってるんだから。ちゃんと責任もって」
「はい。すみませんね」
「まあまあ、他に人がいるかもしれないし、ここからでる為の方法を探しましょう」
「あの人に聞いてみましょうよ」
「見た目、偉そうなご老人ですし、なにかの神様かもしれないですよ。きっと有益な情報をくれますよ」
「え? 老人に見えてます?」
「老人でしょ?」
「僕は真っ黒な物体に見えてますけど…」
「いや、僕には白髪の老人に見えますね」
「自分の視点からの情報を押し付けないでもらえますか」
「てゆーか、神様かどうかもまだわからないんだから」
「あなた神様ですか?」


[後藤田君]


「なんか、なんとなく、最近、SNSをやめた、なんか、なんとなく、体調が良くなった、気がした。仲の良かった、後藤田君が急に会社に来なくなって、それからというもの、誰にも心を開いていない。会社の奴等は、なんか、一歩引いてるやつとか多くて。なんていうか、自分は違うぞポジション取りすぎな感じ。なにか失敗しても、誰かケツ拭いてくれるっしょ的な。だからあの会社はダメ。まず、社長が経営へたくそ。三代目だからポンコツ
なんだよね。だからさ、結局さ、後藤田君が昼休みとかに言ってた改善点なおせば絶対業績上がると思うんだよ。でも、群れてる人間には、後藤田君の良さ伝わんなかったよね。孤立しちゃってさ。俺だけだったもの。後藤田君の話し理解できるの。普通にちゃんとしてる人が孤立して、変な奴らがのうのうと生きてるのって、どうなんだろうね」
「で、その後藤田君はどうなったわけ?」
「一切連絡が取れないから、家に行ってみた」
「死んでたりしたら最悪だね」
「後藤田君は、高円寺駅から徒歩10分くらいのアパートに住んでいて、何度か遊びに行っ
たことがあった」
「インターホン押したけど反応はなくて。でも、なんとなく気配を感じたからドアをノックしてみたんだけどやっぱり反応なくて」
「諦めかけたけど、一応ドアノブをまわしてみたら扉が開いたんだよ」
「それで?」
「恐る恐る中に入ってみると、真っ白な壁の部屋に家具も何もかもなくて」
「夜逃げ的な?」
「で、壁に不自然な黒いシミがあったんだよ」
「なにそれ」
「それがよく見ると人のカタチしてるように見えてきてさ」
「なになに? これ怖い話?」
「いや、多分後藤田君の幽霊がいたんだよね」
「怖い話じゃん」
「幽霊って言っても死んだ後の感じじゃなくてさ」
「死んでる以外の幽霊っているの?」
「カタチがなくなって魂だけになった感じかな」
「それを死んだって言うんじゃないの?」
「俺にはすぐわかったんだよね。あ、後藤田君、次の時代に行ったんだって」


[労働前のファミレス]
            

「やめたほうがいいよ」
「なんで?」
「なんでって、趣味悪いよ」
「そう? 楽しいよ」
「まあいいや。ドリンクバー取ってくるわ」

Aドリンクバーを取っているマイム

「毎朝、彼とこのファミレスでコーヒー飲んでから仕事行くのが日課で、毎朝くだらない話をしあっている、、、。迎えのバンが来るまでは、何も考えなくていいから幸せだ」

Aドリンクバーでコーヒーを入れて持ってくる。

「あれ? またコーヒー?」
「ああ、なんかカルピスソーダにしたら、水みたいのしか出てこなかった」
「店員さんに言えばいいじゃん」
「いいよ。忙しそうだし」
「言ってやろうか?」
「いいよ。コーヒー入れちゃったし」
「いいよ。言ってきてやるよ」
「いいって言ってんじゃん!」
「……そうか」

沈黙 携帯見る

「でも、やっぱり変だけどな」
「まだ言う?」
「なにが楽しいの?」
「どうでもいい日常がかいてあるのがいいんだよ。今日髪切りましたとかさ」
「アイドルとかじゃないんでしょ?」
「普通の一般人」
「絶対に面白くねーよ」
「ただの一般人が飯食ってるだけとかがドラマチックでいいんだよ」
「まったくドラマチックじゃねーだろ」
「結局、人は他人の話に現実感を感じるのは難しいから、フィクションに感じてるわけ。友達が結婚しようが、知り合いの親が死のうが、自分の現実ではないからね」
「なにが言いたいんだよ?」
「そんなフィクション達が繋ぎ合わさって世界が動いてると思うとゾクゾクしない?」
「しねーよ! きもちわりー!」
「例えばさ、Googleストリートビュー。あれとかさ、いつ撮ったかわからない写真が繋ぎ合わさって世界を構築してるわけ、、、ゾクゾクしない?」
「だから、しねぇーって」
「たまに犬とか歩行者写ってるじゃん?」
「ああ、たまにあるね」
「そういうの発見した時なんて絶頂だよ! 絶頂!」
「なに言ってんの? マジで」
「どうして伝わらないかな?」
「いや、だって絶対に映画とかの方が楽しいでしょ」
「映画なんて見ないもん」
「はあ?」
「一般人のブログとか、路上での人間観察とかの方が楽しいから」
「え? じゃあ、ドキュメンタリーとかは?」
「見ないに決まってんだろ? 人が手を加えたものは見れたもんじゃないよ。カメラ回ってる時点でいつも通りの行動はしないからね」
「…ただの変態なんじゃないか?」
「いや、普通だろ? ドラマチックなものが見たいじゃん」
「映画のほうがドラマチックだろ!」
「おまえは、誰かが死んだりとか悲劇がおこるとか事件がおこるものを、ドラマチックって言ってるんだろ? でも、その物語もはじめは無価値なところからはじまるわけ。ということは、悲劇なんかおこらないことこそが価値があり、ドラマチックなわけ」
「…まったくなに言ってんのかわからないわ」
「養殖より、天然で、あまり市場に回らないレアな魚の方が高額だろ?」
「はあ?」
「そういうことだ」
「どういうことだよ?」
「とにかくなにもおきないのが一番のドラマってこと」
「いやいや、なかが起きてるからドラマでしょ!」
「いやいや、普通に人間として生きてることが一番のドラマだよ」
「じゃあさ、なにも起こらないのにどうやって話終わらすわけ?」
「終わらないよ」
「最悪じゃん。結末で泣いたり驚いたりしたいじゃん」
「終わらないから、想像するわけよ。その人のその後の人生を」
「客に負担かけんなよ」
「負担を嫌がってたら、どんどん想像力とか考える力が衰えていくよ」
「いいよ。そういうの」
「じゃあ、おまえはどういうので感動するわけ?」
「え? 俺?」
「うん」
「爆発して、、死ぬ」
「……待って。百歩譲って死ぬのはわかるわ。でも、爆発はどうして感動するわけ?」
「爆発は引き込むじゃん。もし、普通に仲の良いカップルの話しで始まって、わいわいイチャイチャしてる中、その五分後に部屋が爆発してさ、彼女が死んだらさ、感動するじゃん」
「…全く共感できないわ」
「こっからどうなるんだろってハラハラするでしょ」
「そっから回収できたらいいよ。できんの?」
「回収はどうでもいいよ。爆発のインパクトが説得力持たせるから」
「説得力ねーよ。派手なら良いってもんじゃねーから。地味な方が感情の流れとかわかるだろ」
「寝ちゃう寝ちゃう! そんなの見てたら! みんな疲れてんだから! なんで金払って疲れなきゃならねーんだよ!」
「じゃあ、おまえが今までで一番感動したのってなによ?」
「バックトゥザフューチャーかなー」
「SFかぁ。その時点でないわ」
「最後さ、タイムマシンの車に乗ってさ、また現代に帰らないといけないんだけど、いろんなアクシデントがおきてさ、なかなかワープできなくてさ、やばいやばいやばい、どうなっちゃうの? どうなっちゃうの? ホントに帰れんのってなってさ、ダメ押しでさ雷がバーンって落ちてさ、そのケーブルみたいなのが切れちゃってさ、あーもう終わりだ―って思ったら、博士のドクっておっさんがさ、そのケーブルとケーブルを繋いで、がっって、ビビビビビビビビビ、ばしゅーってなってさ、、、ボロ泣き」
「どこで感動したんだよ!」
「感情移入を強いるな! なにも考えたくないんだよ!」
「もっと人間をみないと、人として成長できないよ」
「強いるな! 何も考えずに爆発とか見てーんだよ! 何も考えずに泣きた
いの。映画なんてストレス発散の場! カラオケと一緒!」
「そんな考えだと次の時代行けないぞ」
「やめろよその話」
「物質的なものじゃなくてさ、もっと精神的なものを見て楽しんでいかないと。取り残されるよ」
「彼女にも毎晩言われるわ」
「そうだろ?」
「俺はこのままでいいんだけど」
「俺も最近は瞑想とかもはじめてさ。「なんとかの時代」に備えてるよ。まあ、来月に迫ってるからな」
「もう時間だな。そろそろ車来てるんじゃない?」
「あ、作業着忘れたかも」
「現場行けば誰か貸してくれるだろ?」


[終電]


「人間一人で生きていたら会話なんて必要ないわけで、でも進化の過程で人間はそこがすごく発展した。なのに僕は、人の話を聞くのが苦手だ。相手の気持ちなどを予測したりする事が僕にはできない。予測するけど、予測が大体外れる。で、なんか素っ頓狂なことを言ってしまったりだとかして、相手の頭の中が見えなくなってくる。そういったことがすごくよくある。会話の中で視覚情報で相手を感じたり、予測したり、気持ちを汲み取ったりと同時に沢山のタスクを開く。この行為は生物としてかなり高等なことだと思う。だから、人間凄いなぁと思う傍らそういう行為が自分は凄く苦手だから、人としてどうなんだろうなと思ったり、今ちょっとそこの狭間でいろいろとグルグルしている」

「例えば、飲み会の時とかに、大勢で集まるじゃないですか。で、会社が大塚なので池袋とか、その近辺で飲むんですけど。でも、僕は神奈川に住んでるんで、だから終電とか早いから、先に帰っちゃうんですね」

「おい! このタイミングでピッチャーで頼んだの誰だよ」
「全然飲めるでしょ!」
「すぐ寝るくせに何言ってんだよ」
「うるせーよ」
「あの」
「どうしたの?」
「終電早いからそろそろ出るよ」
「え?」
「うそ?」
「ごめん」
「もう出るってこと?」
「そう」
「いいよ、最悪うち泊まってきなよ」
「いや、、、」
「明日早いの?」
「そういうわけじゃないけど」
「盛りさがるじゃん。もう少しいなよ」
「いやもう終電だからさ」
「マジで言ってんの?」
「うん、全然気しないでみんな楽しく飲んでて」
「えー、もっと飲もうよ」
「ごめん。帰るわ。いくら?」
「伝票一回貰う?」
「そうしようか」

「そう、なんか、飲み会とかの席では、結構なんか、自分では、浮いちゃってるなとか思ってて。なんだろ、普通に話してる時も色んなテーブルで色んな話で盛り上がってて、でも、自分のテーブルだけ話がはずまなくて、愛想笑いとかされてるなぁなんて感じて。で、終電が早いから、先にじゃあねとか言うと」
「じゃあさ、もう一件だけ行こうよ」
「とか言って、誘ってくれるんですけど、なんか馴染めてない気がして、でも、一応ついて行こうかなとか考えるんですけど、やっぱり帰ることにする」
「でも、先に帰ったら悪口言われてるんじゃないかなって想像したりする」
「だったら、残ればいいのに」
「カラダは、みんなの集いには「興味ないもんね」みたいな態度をとるんだよね。でも、気になるってことは、自分は本当はみんなが何してるかすっごく気になっちゃうタチなのかも」
「かもって、自分のことなのにわからないの?」
「本当の本当はどうなんだろう? 自分だけ誘われない、とかいうことがあっても気にしたことほとんどないしな…」
「だったら集まりには興味ないんじゃない?」
「人との関係性において、根底の根底で自分が本当はどう感じているのかというのが、自分でもわかっているようで、よくわからない、、、」
「うーん」
「本当は、無意識に、みんなから置いてきぼりになる恐怖や焦りみたいなのがあるのかも」
「集団というものへの自分の本心って、他者への気遣いとかも入ってくるから、もはや自分だけの意志ではないのかもね」
「最近は、自分の人生の問題を、個として、考えることが難しくなってきた感じはする」
「ネットを使えば、個の人生の問題にすぐ他人を巻き込むことができるからね」
「どんどん自分のことがわからなくなりそう」
「今日は良い日だったって言っても、本当に自分の過ごした一日のことなのかわからなくなる」

[タロット]


「その日の自分の運勢を知っておきたいんだよね」
「占い?」
「タロット」
「当たるの?」
「自分的には結構当たってる」
「え、そういうお店にいってるの?」
「最初は、ユーチューブの動画で見てたんだけど…」
「え? そんな動画あるの?」
「そう。なんかね、画面に映るタロットの中から自分で決めて、そのカードを選んだ人の運勢を解説してくれるんだよ」
「全通りの運勢解説するってこと?」
「そう。だから他のシーンは飛ばして自分の解説だけ見るんだけどね」
「それが当たるんだ」
「当たってる、、、感じはする」
「じゃあ、お店とかは行ってないんだ」
「まず、買ってみた」
「なにを?」
「タロットカード」
「自分でやるの?」
「毎朝その日の運勢を自分で占えたら便利じゃん」
「ああいうのは人に占ってもらうからいいんじゃないの?」
「ほら、俺さ髪も自分で切る派じゃん」
「知らねーよ」
「お店で他人に話しかけられるの面倒なんだよ」
「じゃあ、占い向いてないよ」
「でも、買ったはいいけど結構大変でさ」
「まあ、あの枚数の意味を覚えるのは大変でしょ」
「それより、カードの世話が大変でさ」
「世話?」
「朝日を浴びさせたり、話しかけたりしないといけないんだよ」
「ペットじゃん」
「いや、子供だよ」
「いや、紙だよ」
「袋から出したと同時にこの世に生まれて呼吸しだすわけ」
「紙が?」
「だから、我が子のように育てないといけないんだって」
「騙されてるよ」
「俺も全部は信じてないけど、買ったからにはとりあえずやってみたんだよ」
「いや、やらなくていいよ」
「まず、半年は我が子のように育てないと占えないって説明書に書いてあったからさ」
「書いた人もまさかやるとは思ってないんじゃない?」
「でも、なんか毎日やってると会話できてる気になってくるんだよ」
「紙と?」
「天からなにか授かった感じするし」
「神に? 紙を?」

[クラブ]


「どうしてただの物質である脳に「心」が発生するのか、とか、そういう事を真剣に考えるのが「心の哲学」ってやつ。物質としての脳の、神経回路の発火やシナプスのあれやこれやで「心」がそこに物理的に発生しているだけ、って考え方と、いや「心」は物質とは別にある、って考え方とがあって、でもどっちが正しいかは現状確かめようがないから、いろいろな思考実験が行われてるんだって」
「これらは、自分と原子レベルまで全く同一の存在を仮に構築できたとして、それは以前の自分とほんとに同じ自分と言えるかどうか、的な話で、同じと言えるなら、それは物理主義だし、同じと言えないなら、物理的な世界とは別なところに人間の「心」はある、って立場になる」
「これってなんというか、霊魂を信じるかとか、そういう話にもなってくる」
「スワンプマン実験って知ってる?」
「なにそれ?」
「人格の同一性問題を考えるための思考実験なんだけど」
「ある男が沼にハイキングに出かける。この男は不運にも沼の傍で突然雷に打たれて死んでしまう。その時、もうひとつ別の雷がすぐ傍に落ち、沼の汚泥に不思議な化学反応を引き起こし、死んだ男と全く同一形状の人物を生み出してしまう」
「この落雷によって生まれた新しい存在のことを、スワンプマン(沼男)と言うんだって。スワンプマンは死んだ瞬間の男と同一の構造をしていて、見かけも全く同一で、もちろん脳の状態も完全なるコピーであることから、記憶も知識も全く同一なわけ。沼を後にしたスワンプマンは死んだ男が住んでいた家に帰り、死んだ男の家族と話をし、死んだ男が読んでいた本の続きを読みながら眠りにつく。そして翌朝、死んだ男が通っていた職場へと出勤していく」
「完璧に同じ人間になっていたってこと?」
「記憶のデータだけで人間のコピーができてしまうんだったら、経験した感触や感情はどこにいくんだろ?」
「世界中に今現在沢山の人がいる、また今までに数多くの人が生まれてきて、これからも多数の人が生まれてきて死んでいくだろう。しかしそれにも拘らず「なぜ私は他の誰かではなく、この人物なのか?」」
「そういうの思春期の時によく考えたよね」
「後藤田君って、そいういう話、いつもどこで仕入れてくるの?」
「基本は本とかネットだけど、このクラブで知り合った人が教えてくれたりするケースもあるかな」
「これだけ世界が多様な様相をたたえているなら、いろんな事がありだって思うから、つまり非科学的って理由で、霊魂とか、生まれ変わりとか、そういうのを否定もそんなにできないはずって言うか、だから自分も柔軟に、世界のいろんな可能性をずっと考えたいって思うわけ」
「ちょっと俺には難しかったけど、後藤田君、色々と考えてるんだね」
「てゆーか、全然吸ってないじゃん?」
「いや、俺はいいかな」
「絶対キメたほうが楽しいよ」
「そういうのやったことなくて」
「このクラブに来てる奴はみんなやってるよ」
「まあ、俺は大丈夫」
「生きるとはなにか悩んでるんでしょ?」
「うん」
「だったら絶対にキメたほうがいいよ」
「いいって」
「これ吸うとさ、本来の人間の五感ってのは、今の日常生活で感じてる以上のこと、宇宙の隅から隅まで知覚できるほどのものなのに、人間は実際にそういう見えないものを感じ取ってしまうと日常生活に支障が出てしまうから抑制してるんだよ。でも、これを吸うことによって精神のバルブを緩めることができるってわけ」
「緩めなくていいよ」
「みんな、ルールや常識を埋め込まれて、本当の自分を出せなくなってる。でも、精神のバルブを緩めれば、みんな自分らしく生きられる。これからは精神の世界になっていくってこと」


[カウントダウン]

「という事そろそろ次の時代へのカウントダウンとなりました。みなさま準備はいいですか? では、今回次の時代に行けない人たちをご紹介いたしましょう。まずは、いわゆるインプットをやめてしまった人間、人間的アップデートを完全に停止させてしまった人間達の事ですね。自分はこういうものを好む、こんな嗜好の、こういうタイプの人間と、頼まれもせず勝手に自身の自己像をある段階で完全に固着、自身の経験則にのみ支えられた自己イメージの死守に奔走する輩の事を指します。彼らにとっての脅威、それはそんな後生大事に守り抜きたい自己像を揺るがせてくる存在です。だから彼らは未知を恐れ、自分の知らない領域から自己領域への知的な侵犯なり侵攻を、インスタントに無効化する技術に非常に長けています」
「そして2つ目の人格の話に移ります。こちらは前者と違ってもっと静かで冷笑的、すなわち「相対化早押しクイズに余念のない社会学者ミミック」ですね。ミミックとはつまり擬態の事です。社会学者に擬態化する彼らとはしかし、一体どんな人種なのか、説明します。かれらは決して状況にはコミットせず、常に一歩引いたメタ的な視点から、即座に相対化からの冷笑主義的反応を、万事につけて展開します。タチが悪いことに彼らには勝ちも負けも概念として存在せず、常にゲームの外側に自身を実存させる事こそがアイデンティティな為、何を言おうとも相対化のスカしをブチかまされ、いっこうに話ができません世界は今、そんな彼らの合わせ鏡の循環参照の中で、現状日々息苦しさを加速させている状況にあるんです。他にも様々なマウンターは存在し、SNSには「卑屈ガード」を展開する輩も数多く散見
されます。こんなにダメな自分という、卑屈な自己イメージを全面展開する事で、言論を先手必勝的に封殺する類の連中、おそろしいですね。近しいところで「興味ないマウンティング」を繰り出すマウンターも増加の一途です。「悪いんだけど、興味ないんだよね」を呪文の如く繰り返し、あらゆるリスペクトの手つきを無効化して周るその姿、正気ではありません。」
「ことほどさように、ありとあらゆるマウンター達に囲まれながら生きねばならぬ困難極まるこの時代、もしあなたの周りにも新種のマウンターが出現したら、マウンティング・ハンターを自称する私、マウンティング警察を自認する私に、何はともあれご一報くださいね...。そんな奴らは次の時代には行けないので」
「そういえば最近、こんな事がありましてねえ。この間、今年の新卒、まあ、20、2,3の人たちと一緒に、一つ企画をやるみたいなのをやらされたんです。全然僕の意思ではなんだけど。ホントに、世界観が全然違くて。それが面白かったんですよね。多様性の時代が来たというか」
「ああ、わかるわかる。俺も若い人とやること多いから」
「でも、失敗への恐怖心が強いなと思ったんです。とにかくすべりたくないみたいな」
「ああ、わかるわかる。最近の日本の若者ってそういうとこあるよね」
「リアクションが貰えないことに凄く恐怖心をもってるんですよ。いいねが全然つかない的な」
「俺の持論では、みんなホントは寂しがりやなわけだから抱きしめてやればいいんですよ。ぎゅっとね!」
「僕は、他人のことなんで放っておいてあげればいいと思いますけどね」
「私たちが歳をとった時のこの国に関わってくることなんだから放っておくのも違うんじゃないかな」
「僕はそうは思いませんけどね。何故なら…」
「私は、歳をとる前に死にたいですね。だってそうでしょ? 生きててもいいことないじゃないですか」
「「死にたいとか言うなよ」って止めてもらうの待ちな感じってあるじゃないですか。あれは、やめたほうがいいとおもうんです。何故なら、かまってちゃんなのが見え見えだから」
「正義の名のもとに人の感情を決めつけてくる人身近にいませんか? 他人に理解できるほど人の感情は簡単にはできていません。複雑なんです」
「でも、これから一緒に生きてかないといけないわけだから、理解していかないといけないと私は思います」
「だから、こっちの基準で考えたらダメなわけですよ。むしろ向こうにこちらが合わせる。これをみなさんで実行していく。これが大事なんじゃないかと…」
「俺は、合わせる必要なんてないと思うんですけどね。俺の持論で言えば、彼らはみんな寂しいだけなんです。だから抱きしめたらいいんですよ。そう。それしかないのです。それをふまえて…」
「この間、音楽フェスに初めて行ったんです。その時思いました…」
「私も音楽フェスには良く行きます。たくさんの色々なジャンルの曲を聴くと新しい価値観に出会えます。頭を柔軟に…」
「日本のフェスというのは海外のフェスにくらべたら相当レベルは低いと思います。まず思想がないことが問題です…」
「僕はフェス嫌いなんですよ。まず、人が多いだけでも嫌なんですけど、ノリみたいなのも嫌いですね。みなさんは…」
「わざわざ嫌いな物を伝えるのってどうなんでしょうか? 否定しかできない人間がこのまま増え続けたら、今まで守られてきたルールさえも否定されかねませんよね…」
「私は、イケてるのりなとこ行ったら死にたいって思っちゃう派です。だって、こんなイケてない人間が参加してごめんさいって思ってしまうじゃないですか。ほら、あなた方もそう思うでしょ?」
「音楽はいいですよね! 俺の持論でみんなで一体化することは良いことなんです。結局みんな考えていることは一緒ですから…」
「戦時中の動員と同じなんですよ。今のフェスの照明の在り方って全部、ヒトラー、ナチスドイツが開発したものなんですよ。聴衆をそこに集めて、いかにカリスマ性を示せるかみたいな、人々を動員できるか、気持ちを一方向み向けられるかみたいな。それに飼いならされてるっていうのは…」
「私は、うどんが好きで、最近香川県に旅行にいったです。そこでこんなことがありました…」
「私も香川にうどん食べに行くだけで旅行行きました。その時思ったんです」
「俺の持論で食べるなら本場の物ってのがあります。うどんなら香川。お茶なら静岡、もんじゃは月島!」
「香川は、最悪な思い出しかないです。私がうどん好きだって言ったら、彼氏がわざわざ香川まで行ってしまって。ここで問題なのは…」
「香川でも味はピンキリです。なので僕は、一番高い店しか入りません。考えてみてください。どうせ食べるなら…」
「うどんはきらいですね。小麦粉はあまり体に良くないって言いますし。食糧難に立ち向かうためには麦の生産が必要なんだけど、それを食べると体に良くないらしいんですよ」
「まあ、トウモロコシの話ですね。宇宙人が地球に来て、地球の支配者はなんだって、トウモロコシだっていうらしいですよ。人類はトウモロコシの繁栄を手伝わされてる存在だって」
「僕の持論なんですが、宇宙人もきっと話せば友達になれると思うんですよね」
「友達っていないんですよ。みんなどうせ私のこと嫌いなんで。このグラフを見てください…」
「どうして嫌われなきゃいけないのかなって思いますね。だって私はみんなの為にこんなに動いてるのにおかしくないですか? だから私は行動に出たんです。次の画面を…」
「勝手にうごいてる人間が恩着せがましい問題! これが今後の人類の課題です! 僕はなんにも頼んでないですし。とにかく放っておいてほしいんですよ。例えば…」
「放っておけないよ! わかる! わかるよ! 寂しいんだな! みなさん人類みな兄弟ですよ! そうは思いませんか?」
「私の経験上、彼みたいな人間は親子丼が好きなんです。これは僕がインドに滞在していた時の…」
「結局、できないやつはずっとできないんだと思いますよ。そんなやつと話していても時間の無駄。なにも発展はしない。だから、僕は自分のレベルに合う人間としか話をしたくないんですよ。断捨離です」
「いいや! できない奴なんていない! わかる! わかるよ! 寂しんだろ? うまく人付き合いができない自分を肯定するためにそんな考え方になっちゃったんだな! わかるぞ! (抱きしめる)」
「そんな考え方もあるんだな! いいなあ。色々な人と話すと発見がある! もっと色んな価値観ちょうだいよ! ほら! 価値観をさ! はははは!」
「みんな自分の意見をただぶつけるだけなのやめなよ! 少しは合わせなよ。大人なんだから! 神社に平和祈願しに行ってる? 私行ってるよ! だから今日も平和なんじゃん! みんなで次の時代行こうよ!」

「平和じゃないでしょ? どこか平和なわけ? 俺のまわり変なやつばかりで平和じゃないんだけど! 会話にならないし、迷惑だし、とにかく俺が過ごし辛いわけ! …人間なんでも思ったこと言えばいいってもんじゃないじゃん。オブラートに包んでさ、相手が嫌な思いをしないで、それでいて一番刺さる言い方ってもんに変換しながら話すわけじゃん! 本当に次の時代になんか行きたくないからほっといてくれないかな!」


【就寝】

「はい…はい…じゃあ、辞めます」

「コンビニの深夜バイト。やる気なんて最初からなくて。だってそうじゃん。バイトなんてなんでもよくて。家から近いからやってただけ。最近は、ここと、アパートの往復を繰り返す毎日」

家に入り寝る準備をする。

「だからさ、結局さ、後藤田君が昼休みとかに言ってた改善点なおせば絶対業績上がると思わない? でも、群れてる人間には、鈴木君の良さ伝わんなかったよね。孤立しちゃってさ。俺だけだったもの。後藤田君の話し理解できるの。普通にちゃんとしてる人が孤立して、変な奴らがのうのうと生きてるのって、どうなんだろうね」

いつもの場所に寝る。

彼女が部屋に入ってくる。くるぶし辺りを蹴って二人で少し笑い寝る。

「……まあな」


終演




Performance of the day
『無表情な日常、感情的な毎秒』
2021-2022​

画像2


2021年2月25日〜28日 CHARA DE新宿御苑
原作・演出 長谷川優貴

【クリエイションメンバー(50音順)】
青柳美希
荒波タテオ
浦田すみれ
小林駿
長井健一
ヨシオカハルカ(演劇ユニットRe-birth)

【会場】
CHARA DE新宿御苑
〒160-0004 東京都新宿区四谷4丁目7-10 小林マンション3階

【スタッフ】
制作:宮野風紗音(CHARA DE/かるがも団地/K-FARCE)
ドラマトゥルク協力:青木省二・南里亮
制作協力:南里亮
主催・制作:CHARA DE/エンニュイ

【タイムテーブル】
2021年
2月25日(木) 19:00
2月26日(金) 19:00
2月27日(土) 14:00/19:00
2月28日(日) 13:00/18:00
*受付開始・開場は開演の30分前
*上演時間は約50分予定
​あらすじ
240年ぶりに時代が変わるらしい。
身体ではなく、魂で生きる時代。
​フィルムのような時代を生きる酩酊した人々の話。


【チケット】
<券種・料金>
劇場観劇チケット【各回10名限定】

(当日精算・日時指定全席自由) ¥2800


配信観劇チケット(事前精算・1週間アーカイブ付) ¥2000
(予約・当日共通価格)

[当日券の販売について]
*残席がある場合、開場時間より劇場窓口にて当日券の販売を行います。
(開演3時間前まではカルテット・オンラインでの予約受付を行っております。ぜひご利用ください。)
*当日券をご購入いただく際、受付にてお客様の個人情報入力用フォームをご案内いたします。ご予約の場合と同じく、お客様のお名前・ご連絡先をご入力いただきます。
いただいた個人情報は、万が一入館者の感染が発覚した場合にのみ利用させていただきます。
ご理解・ご協力をお願いいたします。


<予約開始日時>
配信観劇チケット:1月16日(土)20:00
劇場観劇チケット:1月18日(月)21:00


会場チケット販売

<チケット取り扱い>
劇場観劇チケット:カルテット・オンライン
https://www.quartet-online.net/ticket/yennui202102



※劇場観劇チケットは開演の3時間前まで予約受け付けを行なっております。
※感染症対策に伴う個人情報取得のため、1度のご予約につき1枚のみご予約可能となります。

配信観劇チケット ツイキャス プレミア配信

※アーカイブは1週間視聴可能となります。

(例:2月25日19時回→3月4日23:59まで視聴可能)
※配信観劇チケットはアーカイブ視聴可能終了時点まで販売しております。

※リアルタイム配信については、配信状況等の要因でトラブルが発生する場合がございます。ご了承ください。
トラブルのあった場合でも、アーカイブ映像はその箇所も正しく視聴できるものを別途お送りさせていただきます

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