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【劇評180】白鸚と勘九郎ががっぷり四ッに組んだ角力場の値打ち。

 松本白鸚と伝承について、短く書くのは難しい。

 けれども、こうしたテーマですぐに思い出すのは、一九八○年九月の歌舞伎座、夜の部で上演された『夏祭浪花鑑』なのであった。

 なぜ『勧進帳』ではないかのかと問われるなら、このときの共演者が、白鸚の前の世代を網羅していて、このときの経験が今も、白鸚に流れていると思うからである。

 このときの『夏祭浪花鑑』は、団七とお辰が先代十七代目の勘三郎、お梶が六代目歌右衛門、釣舟三婦が十三代目仁左衛門、義平次が三代目延若。

 今、思い返しただけでも垂涎の配役である。このとき白鸚は、まだ、六代目染五郎で、一寸徳兵衞を勤めた。住吉鳥居前で団七、徳兵衞の達引のあとに、歌右衛門のお梶を中央に決まったときの白鸚の初々しさが今も忘れられない。

 先月、吉右衛門の「引窓」に続いて、白鸚の「角力場」が出た。

 今回、勘九郎の長吉を相手に、白鸚は濡髪を勤めている。その色気、大きさは、もちろんだけれど、所詮は、男芸者と呼ばれ、贔屓があっての商売の哀しさ、角力の強さを誇るだけでは生きていけない商売の辛さが浮かび上がり、ついに達した藝域に惚れたのである。

 勘九郎も健闘している。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。