【劇評289】幸四郎、七之助の『十六夜清心』に、梅玉のいぶし銀の藝を観た。
懐かしい光景が甦ってきた。
河竹黙阿弥の『十六夜清心』を通しで観る喜び。三部制によって制約があるにもかかわらず、通しだからこそ味わえる歌舞伎の企みがあると思った。
年表をたどると、平成十一年、十代目坂東三津五郎(当時・八十助)による本格的な通しは例外として、白蓮本宅まで出たのは、平成十八年の大阪松竹座以来である。仁左衛門の清心、玉三郎の十六夜の舞台だが、残念ながら私は観ていたい。さらにさかのぼると、平成十四年の歌舞伎座では、同じ顔合わせで、こちらは観ている。蠱惑の舞台