『野田版 桜の森の満開の下』の劇評。シネマ歌舞伎のDVD化を記念して。
4月7日(水)に、シネマ歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』のブルーレイ、DVDが発売されるとのことです。夢の遊眠社時代から、再演を重ねてきた野田秀樹の『贋作・桜の森の満開の下』を、中村勘九郎、松本幸四郎、中村七之助、坂東彌十郎、中村扇雀らの出演で平成二十九年八月歌舞伎座で上演された映像です。
以下に、上演当時に私が書いた劇評を再録します。
【劇評81】『野田版 桜の森の満開の下』七之助の夜長姫の残酷
歌舞伎劇評 平成二十九年八月 歌舞伎座
八月納涼歌舞伎、第三部は、満を持して『野田版 桜の森の満開の下』が上演された。野田秀樹がかつて主宰していた夢の遊眠社時代の代表作であり、平成元年の初演以来、京都南座、大阪中座を含む伝統的な様式を持つ劇場でも上演されてきた。
十八代目中村勘三郎が健在のとき、『贋作・桜の森の満開の下』の上演が企画され、勘三郎(当時・勘九郎)の耳男、福助の夜長姫を前提に、歌舞伎化する脚本がすでに進行して、三分の一が書き上がっていたと聞いている。結果として、勘三郎と野田の歌舞伎での共同作業は、平成十三年の『野田版 研辰の討たれ』が先行して、野田は歌舞伎座六度目の演出となる。
現・勘九郎の耳男、七之助の夜長姫の配役で観て、野田三十歳の若々しい文体には、若い歌舞伎役者の肉体がふさわしいと思った。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。