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雨交じりの午後、勘三郎の命日に、勘九郎と七之助の活躍を墓前に報告した。

 歌舞伎座の第一部、第二部を見終えて、入谷の西徳寺へ回る。
 雨交じりだったのが、ようやく止んだが、冬の大気は冷え切っている。日比谷線の入谷の駅から、階段を上って表にでると寒気で身が凍える心地がした。

 波野家の墓のある西徳寺は、大鳥神社のはす向かいといったほうが通りがいいだろうか。
 勤務先からタクシーを飛ばせば、ものの十分だろうに、なかなか十八代目勘三郎の命日、その日に訪ねられなかった。今日は土曜日なので自由がきく。

 水曜日は、勘九郎の又平を見た。今日は、七之助の『星野屋』を見た。もう、ふたりがいつも必ず一緒の舞台とは限らない。

「ふたりとも、ひとりでも芯を取る役者になりましたよ」
と、勘三郎に報告したくなった。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。