マガジンのカバー画像

長谷部浩の俳優論。

71
歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
¥1,480
運営しているクリエイター

#三浦透子

【劇評335】ミージカルの最前線。三浦透子の深く、悲しい演技と歌唱。人間の心の闇を描いて、見逃せない『VIOLET』。

【劇評335】ミージカルの最前線。三浦透子の深く、悲しい演技と歌唱。人間の心の闇を描いて、見逃せない『VIOLET』。

 傷痕は、誰のこころにも刻まれている。

 藤田俊太郎演出の『VIOLET』(ジニーン。テソーリ音楽 ブライアン・クロウリー脚本・歌詞 ドリス・ベイツ原作 芝田未希翻訳・訳詞)は、二○一九年、ロンドンのオフ・ウェストエンドで初演された。二二年二は日本でも初演されたけれど、コロナ禍のために、ごく短期間の公演にとどまった。

 今回、満を持して再演されるにあたって、主役のヴァイオレットは、三浦透子と屋

もっとみる
【劇評320】人間の根源的な欲望をいかにみせるか。森田剛、三浦透子の『ロスメルスホルム』。

【劇評320】人間の根源的な欲望をいかにみせるか。森田剛、三浦透子の『ロスメルスホルム』。

 イプセンは、言葉による決闘を見るものだとよくわかった。

 『ロスメルスホルム』(ヘンリック・イプセン作 ダンカン・マクミラン脚色 渡辺千鶴翻訳 栗山民也演出)は、暗く陰鬱な館の場面からはじまる。

 ヨハネス・ロスメル(森田剛)は、地域を支配してきた名家ロスメルの末裔である。
 下手側にしつらえられた壁一杯に、男系の一族の肖像画がところせましと飾られている。彼は、名門の生まれという特権とともに

もっとみる
村井良大、spiによる『手紙』に、ミュージカルの可能性を読む。

村井良大、spiによる『手紙』に、ミュージカルの可能性を読む。

 ミュージカルでは、再演は最高の勲章となる。トニー賞には、ベストリバイバル部門があるし、日本でも白鸚の『ラマンチャの男』は、一九六九年から再演を繰り返した。

 とはいえ、ブロードウェイやウェストエンド発ではなく、日本オリジナルのミュージカルとなると、宝塚をのぞけば、再演を繰り返すのは、容易ではない。

 東野圭吾原作、髙橋知伽子脚本・作詞、深沢桂子作曲・音楽監督・作詞、藤田俊太郎演出の『手紙』は

もっとみる