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長谷部浩の俳優論。

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歌舞伎は、その成り立ちからして俳優論に傾きますが、これからは現代演劇でも、演出論や戯曲論にくわえて、俳優についても語ってみようと思っています。
劇作家よりも演出家よりも、俳優に興味のある方へ。
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2022年9月の記事一覧

確かな技術があると、どこかで古典性を持ってしまう。六代目染五郎の思い出。

確かな技術があると、どこかで古典性を持ってしまう。六代目染五郎の思い出。

 演出家蜷川幸雄が、はじめて舞台で出会った歌舞伎俳優は、六代目市川染五郎(現・二代目松本白鸚)だった。

 現代人劇場、櫻社と小劇場演劇で頭角を現してきた蜷川に、東宝の中根プロデューサーから声がかかった。
 演目は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』。一九七四年、日生劇場での公演を、私は古文の先生と観に行った。私は高校生だった。
 三重のバルコニーをロミオとジュリエットが疾走する舞台に圧倒さ

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才能が七割。

才能が七割。

 俳優の資質とは何か。才能と運の比重は、どちらが重いのか。ぶしつけにも、演出家蜷川幸雄に尋ねてみた。

 「正直いって才能が七割でしょう。(中略)「おい、それはしゃべり言葉になっていないだろう」なんてダメ出しをするレベルのやつが、後に伸びたなんていうケースは、一度もないです。ちゃんと自意識を飼い慣らして、舞台の上でそんな会話でも普通にできるのは、最低条件でしょうね。会話ができなくても、全く可能性が

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