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本棚に人生がある。

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思えば、本ばかり読んでいた。幼い頃からひとりの時間が多かったので、他にすることがなかったからで、こんな人生になってしまった。けれど、もちろん後悔などない。今日も、明日も、明後日も… もっと読む
短くてサクッと読める本についてのよしなしごとを書いていきます。ぴしっとした書評、のんびりした随想が… もっと詳しく
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記事一覧

九段理江『東京都同情塔』の挑発。

 友人の編集者に勧められて、九段理江『東京都同情塔』を読んだ。 ザハ・ハディッドの新国立…

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長谷部浩
3か月前
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永井紗耶子の『木挽町のあだ討ち』は、芝居町の人々の生をひととき輝かせる。

 すでにお読みになった方も多いと思う。  永井紗耶子の『木挽町のあだ討ち』は、「藪の中」…

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長谷部浩
9か月前
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伊丹十三監督の別荘で、ルポルタージュの根本を教わった。

 伊丹十三監督の作品が忘れられない。湯河原にあった別荘を利用して撮った初監督作品『お葬式…

長谷部浩
9か月前
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三島由紀夫が「奔馬」の装幀に選んだ書について思うこと。

 昨日、勤務先の講義に、ゲストを迎えた。先端芸術表現専攻の一期生で、ベルリンで書家として…

長谷部浩
9か月前
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デヴィッド・バーンの『音楽のはたらき』。私たちの舞台は「ショー」なんだ。

 怜悧なビジネスパーソンであり、アート分野の革命家でもある。  デヴィッド・バーンの『音…

長谷部浩
10か月前
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京都にある佐々木能衣装を訪ねる幸せ。

 京都市上京区裏門通り中立売上ル神在家町二○二番地。  ある歌舞伎役者の紹介を得て、京都…

長谷部浩
10か月前
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ドナルド・キーンの食卓

「演芸画報」以来の長い歴史を受け継いでいた「演劇界」という雑誌があった。 その題名とはうらはらに、グラビアも劇評も特集記事も、歌舞伎が中心で、長年の愛読者を誇っていた。  2022年の3月に休刊してしまってから、歌舞伎の世界はつっかえ棒を失ってしまったかのようで、専門誌があることがそのジャンルにとって、どれだけ大切なのかを身に染みて感じている。  「演劇界」が健在だったころ、担当のWさんから突然電話がかかってきた。興奮した声で「キーン先生のインタビューができることになった

野田秀樹と対談していた脳科学者中野信子の『脳の闇』を読んでみた。本音が炸裂する。

『兎、波を走る』のパンフレットで野田秀樹と対談していた脳科学者中野信子の新刊を求めてきた…

長谷部浩
10か月前
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アウグスト・ザンダーが捉えた空爆後のケルン。ヨーロッパの近代史が急によみがえって…

 書棚の整理をしていたら、三〇年以上前に、神保町の古書店で求めた写真集がでてきた。  ハ…

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長谷部浩
1年前
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ニューヨークスケッチ1。ニューススタンドに、新聞と雑誌は消えた。

 上の写真は、めずらしい。新聞を置いているニューススタンドを探すのは きわめてむずかしく…

長谷部浩
1年前
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かわいらしいだけじゃない。諧謔がひらめく絵本。『イリオモテヤマネコ ほんとは ど…

 旧友のふじむらさんが、なんともユニークな絵本を出版した。『イリオモテヤマネコ ほんとは…

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長谷部浩
1年前
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雑誌「演劇界」が休刊となる。その残酷に身がすくむ。

 雑誌「演劇界」の休刊が決まった。  頻繁に寄稿していた時期があるので、突然の報を聞いて…

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長谷部浩
2年前
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選挙を楽しむための小さな行動。カルチャーパスは日本に導入されるか。

 フランスに続いて、スペインも10代の人々に、400€(52865.12円)のカルチャーパスを配布…

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長谷部浩
2年前
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ものを書く部屋。これが終の棲家となりそうです。

 長年、自分の部屋を持ちたいと思っていました。高校生のころ、この願いがかなって、北向きの四畳半ではありますが、自室を与えられました。大きめの机と、スチールの安い本棚を壁に巡らし、読書をし、ぼんやりと考え、まあ、ほとんどは、紅茶やビールを飲んだりしたわけですが、まあ、冬はきわめて寒く、夏は暑くてうだるようなこの部屋に巣くっていました。  高校生から東日本大震災までですから、ずいぶん長い間、この部屋の世話になったことになります。最初の劇評集『4秒の革命』(河出書房新社)をまとめ

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