【劇評237】勘三郎が演じていない役を、勘三郎のように演じてみせる勘九郎。七世芝翫十年祭の『お江戸みやげ』。
懐かしい演目が歌舞伎座にあがった。
北條秀司の『お江戸みやげ』は、十七代目勘三郎のお辻、十四代目の守田勘弥のおゆうによって、昭和三〇年十二月、明治座で初演されている。もとより私はこの舞台を年代的に観ていないが、先代の芝翫が、六代目富十郎と組んだ平成一三年、歌舞伎座の舞台を観ている。
吝嗇で金勘定ばかりしているお辻が、酒を呑むうちに気が大きくなり、ついには役者を茶屋によぶにまで至る話は、大人のファンタジーとして楽しむ芝居だと思った。
先代芝翫には、明治、大正、昭和