マップユーザーにもGoogleにも嫌われないコツ:これからのGoogleマイビジネスの話をしよう#8
毎週火曜日、Googleマイビジネスのノウハウやトレンドなどをお届けする『これからのGoogleマイビジネスの話をしよう』というマガジンの第8回です。
今回は、GoogleマップゴールドプロダクトエキスパートのJun KOBAYASHIさんに、Googleマップを支えているローカルガイドの仕組みや特徴、Googleマイビジネスの持つ課題を伺いました。
<今回のラインナップ>
・特集:Googleローカルガイドとは?仕組み・制度の解説
・特集:ユーザーにもGoogleにも嫌われないGoogleマイビジネス活用のコツ
・今週の気になる関連ツイート
・今週の気になる関連記事
Googleマイビジネスを聞いたことある・使っている方や、ローカル検索やMEOに関心のあるマーケター向けです。
Googleマイビジネス・MEOとは
Googleマイビジネスは「お店がGoogle検索やマップで出てくる施設情報を管理するための無料サービス」です。営業情報・写真・投稿・クチコミ返信などを登録できます。
検索結果で地図が表示されることが増え、集客方法として注目されているのが「MEO」。「Googleマイビジネスを活用して、マップエンジン上のお店の情報を最適化することで、ローカル検索(ローカルパックやマップ)での上位表示を目的とする施策」という意味で多く使われています。
ただ私は、MEOのゴールは「短期的な上位表示」ではなく「マップ"体験"の最適化」を目指すべきだと考えています。
詳しい解説は創刊号をご覧ください。
Googleローカルガイドとは?仕組み・制度の解説
地域が関連するローカル検索(地図やローカルパックが表示される検索)の情報は、Google・ユーザー・Googleマイビジネスの3者によって作られています。
ユーザーはGoogleアカウントがあれば、地点登録・クチコミや写真の投稿・情報の修正提案が可能です。そして「ローカルガイド プログラム」に参加することで「ローカルガイド」になることができます。
ローカルガイドは、Google マップでクチコミを投稿したり、写真を共有したり、質問に回答したり、場所の追加や編集を行ったり、情報を確認したりするユーザーの世界的なコミュニティです。旅行の目的地、レストランやショップ、アウトドア施設やテーマパークなどを選ぶときに、多くのユーザーがローカルガイドのクチコミ情報を参考にしています。
ただのユーザーでも、ローカル情報の編集は可能です。ローカルガイドは「資格」というより「コミュニティのメンバー」といえるでしょう。
ローカルガイドになると、クチコミや写真の投稿、場所の追加や編集、情報の更新を行うたびにポイントが加算され、レベルが上がったり、公式活動への参加や紹介などの特典が受けられるようになります。
活動によってポイントは異なります(例:クチコミ投稿は1件10ポイント、評価だけだと1件1ポイント)。レベルが上がると、ローカルガイドのバッジの表示が変わります。
ローカルガイドは「主体的にGoogleに掲載されている施設情報やGoogleマップの利便性向上に貢献しようとする人たち」です。
ローカルガイドの役割とは
ローカルガイドは、クチコミや写真の投稿、情報の追加や編集といった作業を通じて Google マップに命を吹き込み、人々が世界中の場所をさらに便利に、もっと楽しく、じっくり味わって探索できるようにする役割を担っています。
2019年11月に、ローカルガイドをフォローする機能が加わりました。誰もが情報を投稿できるがゆえに玉石混交となってしまうマップ情報の精度を上げる取り組みの一つだと考えられます。
「Googleマップを知り尽くし」「クチコミを投稿し慣れている」のが、ローカルガイドの人たち。そのプロのユーザー目線を通して、Googleマイビジネスの活用のポイントに迫っていきます。
Googleにもユーザーにも嫌われないGoogleマイビジネスの使い方を探る
今回、お話を伺ったのはGoogleマップゴールドプロダクトエキスパートのJun KOBAYASHIさん。Googleローカルガイドの活動や特徴、Googleマイビジネスの抱えている問題点などを取材しました。
ーGoogleプロダクトエキスパート制度の初期から活動されていると聞いて驚きました!どんなきっかけでエキスパートになられたのでしょうか?
KOBAYASHIさん:いまやGoogleはサランラップや洗剤のように生活に欠かせないサービス。本業がデータに関わるIT系なので、Googleの持つデータに関心がありました。テクノロジーやサービスは衰退がありますが、データは何年経っても色褪せませんから。エキスパートになることで、Googleへのフィードバックやプロダクト改善に関われるようになりました。
ーこれまで、店舗側の視点でGoogleマイビジネスのこれからを取り上げてきました。今回はユーザー、なかでもローカルガイドと言われる人たちについて知りたいと考えております。ローカルガイドにはどんな人たちが多いのでしょうか?
KOBAYASHIさん:ローカルガイドには「Google好き」や「自分のやったことをGoogleに残したい」発信意欲を持った方が多いです。ローカルガイドのメリットは、高レベルになるとサミットへの招待があるぐらいですから。
ー私もレベル6までなりましたが、それ以上は「もう無理」と諦めてしまいました。
KOBAYASHIさん:最高レベルに近いレベル9以上になるのは、かなり大変です。そのレベルのガイドたちは何かしら想いを持っていますね。ただ残念なことに、Googleの仕組み上、不要なデータを投稿してもレベルは上がります。ある程度のレベルまで上げるのは、そんなに難しくありません。
ー高レベルガイドによる投稿を「MEO効果がある」と強みにしているローカルガイドの方を見かけます。もしかしたら、そうした効果を見込んでレベルを上げているユーザーもいるのかもしれませんね。
KOBAYASHIさん:たしかに一部のローカルガイドが、ブラックハットを宣伝したり、クラウドソーシングなどで投稿を販売しているケースはあります。しかし、高レベルであっても「他ユーザーに比べて重視される」ことは考えにくいです。
ー「高レベルだから点数が高く評価される」「クチコミの関連度順に出やすい」というのは、正しくないということでしょうか?
KOBAYASHIさん:クチコミのGoogleからの評価は、投稿ユーザーのレベル自体では変わらないと思います。目立つ理由は「投稿母数」「豊富なナレッジ」の2つが考えられます。
1:投稿の母数が多いので目立つ
2:コミュニティ内で「良い投稿とは?非表示になった投稿の原因は?」など議論しており、ナレッジが豊富。結果的に評価されやすい投稿の質になっている
KOBAYASHIさん:一部のローカルガイドがスパマーになっている問題は、世界中で話題です。特に都心部はスパマーが多い印象で、クチコミを販売したり、嫌がらせをしたりという活動を目にします。少し前の話ですが、ある地域のマップで、コンビニやレストランが川に沈んでいたり、道路に多数の駐車場が登録されたりしてしまったケースがありました。
ーそんなことが…。
KOBAYASHIさん:日本だけでなく、海外のコミュニティやエキスパートが協力しあいながら少しずつ改善に向かっています。悪質なスパマーに認定されると、地点登録できない・Googleサービスを一切利用できない・アカウントが停止するなどの対応を受けます。
このスパマー判定の制度もまだ問題はあり、健全で精力的な活動をしていたローカルガイドが突然BAN(アカウントの利用停止)されてしまったという報告も聞いています。複数のGoogleアカウントを持っていたり、大量の写真投稿やクチコミが多いと突然アカウントがBANされてしまうケースがあります。また、以前のクチコミを最新に何度も更新しすぎると、そのクチコミが非表示になることはよくあります(1つの施設には、1ユーザー1投稿しかできない)。
スパマー排除の取り組みは、Googleの機械学習による自動精査で続いています。機械学習を支えているCrowdSourceというプロジェクトは、マップ以外にも翻訳やGoogle各種プロダクト(特にLensなど)の改善にもつながるので、ぜひもっと多くの方に参加してほしいですね。
ローカルガイド視点から考えるGoogleマイビジネスとの付き合い方
ーローカルガイドの活動で大切なこと、良い投稿とはなんでしょうか?
KOBAYASHIさん:Googleのポリシーを守るのが前提です。その上で「役に立つ情報」を書くようにしています。例えば「美味しかったです」は、他の人にとってはあまり役に立ちません。個人の感覚を書き過ぎると「私は違った」というネガティブな意見やギャップがどうしても生まれてしまうことも。
撮った写真に合わせて投稿することも多いですが、お皿の盛り付け方・店内のムードなど「誰が見ても参考になる情報」になるように気を付けています。
ー店側が「お客さんがクチコミに書きやすい情報」を提供するのもポイントになりそうですね。
ーローカルガイドが取り上げやすいお店の共通点はありますか?
KOBAYASHIさん:クチコミが少ない店舗の方が、投稿されやすい傾向がありますね。「Googleマップに貢献したい」「自分の情報を目立たせたい」というローカルガイドが多いので。
それと、写真を投稿するユーザーが多く、インスタ映えするような店はローカルガイドにも人気だったりするようです。
ー以前「Googleのクチコミの課題」でも取り上げたのですが、日本人は「自然には高評価のクチコミを投稿しない一方で、頼まれたら高評価を付けてしまう傾向」があるようです。ローカルガイドの目から見て、現在のクチコミの質はどうでしょうか?
KOBAYASHIさん:人や年代で評点基準が違うのは感じます。50歳を超えてくると、写真と評価だけ。若い人も「ここに行った」とタイムラインに記録したいだけなので、評点だけのケースが多いようです。
ーお店からすると「なんでこの点数?」「クチコミを非表示にしたい」と不満のある方は少なくないようです。
KOBAYASHIさん:悪い点数のクチコミが溜まるとリセットしたくなる気持ちは理解できます。ただ、Googleマイビジネスのオーナーさんにお伝えしているのは「点数は3点以上なら気にしすぎなくても良い」です。
周りに比べて、低評価のクチコミが多いと不安になって、自作自演のクチコミを増やしたり、MEOを試したりする方が多いようですが、やりすぎると店舗は疲弊し、スパム判定されやすくなります。
ーたしかに、極端な点数でなければ「他より0.2点高いからA店にしよう」とはならないですね…。店自体の表示順も、クチコミの表示順も、単純な点数順ではないですし。
KOBAYASHIさん:ヘアサロンのような業界だと「他店とのGoogleのクチコミの点数の差」が気になってしまう方も多いようです。ただ、Googleマップを使うユーザーの多くは「地図を使いたい」だけです。クチコミの点数の違いだけでお店を選ぶ人は、実際にはそこまで多くないと、私は思っています。
KOBAYASHIさん:極端に低い点数、例えば2点以下だと、さすがにユーザーは不安になるかもしれません。ただ、冷たい言い方になるかもしれませんが、自然体で平均3点を下回ってしまう店舗はそもそも「店として成り立っていない」可能性があります。クチコミ対策以前に、サービスや店のあり方そのものを見直すべきだと思います。
ユーザーにもGoogleにも嫌われないコツは「いじりすぎない」こと
ー「地図機能を使いたくてGoogleマップを使っているユーザーが多い」ことを意識しておくのは大事ですね。
KOBAYASHIさん:Googleマイビジネスのオーナーは「自分の店舗を精一杯目立たせよう!集客につなげよう!たくさん弄って改善しよう!」と、あまり力まない方がよいと思います。
Googleマップは、ユーザー(ローカルガイド・一般ユーザー)・Google・オーナーの3者が管理する仕組みですが、ローカルガイドは「ユーザーにとって良いマップを作る」ことを意識しています。
Googleマップとローカルガイド とGoogleマイビジネスのガイドライン・ヘルプページは、それぞれ少し違っています。お店が編集した内容がユーザーにとって良い情報とは限らないので、ユーザーとオーナーの間で摩擦が起こります。お互いの立場の利害関係がぶつかることで、例えば「修正合戦」と言われる問題が起きたりもします。
ー修正合戦とは何ですか?
KOBAYASHIさん:「店舗が違反→ローカルガイドが修正提案→店舗が修正を否認→ローカルガイドが修正提案→店舗が修正を否認」という操作が繰り返されるのが修正合戦です。
オーナーは「自店舗の上位表示や集客」目的で「違反行為やガイドラインに微妙に沿っていない操作をする」のですが、ローカルガイドは「マップのガイドラインの原理原則にしたがって提案をする」というやり取りです。
ーたしかに最近「店舗情報が勝手に変更される」という問い合わせや「ユーザーによる書き換えを戻すサービス」が増えてきました。
KOBAYASHIさん:マップユーザーの目的の多くは「地図を使うこと」なので、店舗側がコストや時間を使って、Googleマイビジネスの情報を都合の良いものにコントロールするのは無駄だと思います。オーナーはそうしたユーザー心理を踏まえた上で「日々変わるルールやスパムとどう向き合うか」を最初に決めておくと楽ですね。
Googleマイビジネスはやりすぎると疲れるし、悪目立ちするとスパム判定されやすくなります。結果的にGoogleに問題だと思われれば、地点が消えてしまうこともあります。
Googleマップは情報発信の場としてあまり向いていません。
最低限の最新情報やいたずら防止のためにオーナー登録を管理しておくことは大事ですが、マップユーザーの意図と違う情報発信やお店を見つけてもらう努力は、SNSや自社サイトで行うべきだと思います。そちらで注目を集められれば、結果的にGoogleマイビジネスでも評価されますので。
「MEO対策」「Googleマイビジネス活用」というノウハウに踊らされて、Googleマイビジネスをいじりすぎないことが重要です。ユーザーにもGoogleにも嫌われないGoogleマイビジネスでの発信のコツは、頑張らない、自然体でいることだと思います。
ーKOBAYASHIさん、ありがとうございました!
「ユーザーにもGoogleにも嫌われないGoogleマイビジネス活用のコツ」のまとめ
・ローカルガイドには「Google好き」や「自分のやったことをGoogleに残したい」という発信意欲を持った方が多い
・Googleからの評価は、ローカルガイドのレベル自体では変わらない。「高レベルだから点数が高く評価される」「クチコミの関連度順に出やすい」ことはない
・Googleマップを使うユーザーの多くは「地図を使いたい」だけ。点数は3点以上なら気にしすぎなくても良い。クチコミの点数や内容をじっくり読んでお店選びをする人は、実際にはそこまで多くないと思う。
・Googleマイビジネスのオーナーは「自分の店舗を精一杯弄って目立たせよう!集客につなげよう!」と、あまり力まない方が良い。ユーザーにもGoogleにも嫌われないGoogleマイビジネスでの発信のコツは、頑張らない、自然体でいること。
・Googleマイビジネスは、最低限の最新情報やいたずら防止のためにオーナー登録を管理しておくことは大事だが、お店を見つけてもらう努力や情報発信やSNSや自社サイトで行うべき。
取材協力:Jun KOBAYASHIさん
↓これまでの連載企画はこちら
今週の気になる関連ツイート
▼商品エディダーでバグが出ている模様
▼どのカテゴリで表示される項目かは、まだよくわからないとのこと。マップ側にどう反映されるかわかりませんが、飲食店は必須ですね。
▼クチコミを頼むのが苦手な店にぜひ使って欲しい
▼メッセージ機能で使うと、ナレッジパネルに問い合わせアイコンが出ます
▼こんな機能が…ユーザーにとって便利ですね
▼Yahoo!プレイスを利用する前に事前確認を
今週の関連記事
ビジネスのマーケティング キットを作成する
Google マイビジネスのマーケティング キット ウェブサイトでは、ポスター、ソーシャル投稿、窓用ステッカーを無料で作成できます。これらの素材を店舗に掲示したり、デジタル形式でソーシャル メディアに表示したりできます。公式ロゴが入るのは良い。
Yahoo!ロコ、電話操作のみでネット予約の受付・管理ができる飲食店向け機能の提供開始
Yahoo!ロコ利用店は電話だけで、ネット予約の受付管理が可能に。
・成果報酬型
・初期設定は最短1分で完了
・初期費用や月額固定費用は0円
・予約された飲食店には自動音声による予約確認がくる
Google Mapに投稿された誹謗中傷のレビューの削除請求に成功した事例
Googleの米国本社にレビューの削除依頼を証拠資料を添付して送付し、約3ヶ月で削除することができたとのこと。個人店がやるには時間と労力がかかりすぎるのが、よく分かります…。Googleクチコミの風評被害対策サービスも増えてきましたが、こうした事例を見ると「難しそう」と感じてしまいますね。
削除までの期間、虚偽のクチコミコメントが、一般のインターネットユーザーの目に触れることが予想されますので、レビューに対する返信機能を活用して、虚偽のクチコミコメントに反論することにより、一般のインターネットユーザーの誤解を招かないように対策することも必要です。
1,801のユーザー行動を分析した結果わかった、ユーザーがGoogleを使う際の12の真実
Googleの1,801のユーザー行動を分析した興味深いレポート。アルゴリズムだけではなく、ユーザー側の変化もあるので、きちんと押さえておきたいです。
"ローカル検索をしたユーザーの42%がマップパックをクリックする"
あとがき
「これからのGoogleマイビジネスの話をしよう」第8回を読んでいただき、ありがとうございました。次回も火曜日に、気になるGoogleマイビジネスの最新情報をお届けする予定です。
第8回の取材協力:Jun KOBAYASHIさん
いつもサポートありがとうございます!サウナの後のフルーツ牛乳代か、プロテイン代にします。「まあ頑張れよ」という気持ちで奢ってもらえたら嬉しいです。感謝。