クリエイティブリーダーシップ特論:2021年第6回 チームラボ/teamLab社

この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業である、クリエイティブリーダシップ特論の内容をまとめたものです。
 第6回(2021年5月17日)では、チームラボ/teamLab社の取締役である堺大輔さんからチームラボの主要事業である「Digital Art」「Digital Solution」についてお話を伺いました。

チームラボ/teamLab社とは…

 2001年から活動を開始し、最新のテクノロジーを活用したシステムやデジタルコンテンツの開発を行う。プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家、ウェウブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団である。現在、700名程度の社員がおり、エンジニア7割、デザイナー1〜2割、カタリスト1〜2割である。主な事業領域は「Digital Art」と「Digital Solution」であり、授業ではオフィスの紹介の後、これら2つの事業について紹介があった。

オフィスについて…

 授業では、ビデオカメラ越しでのオフィスの紹介でありました。チームラボの作品「Borderless」の通り、ボーダレスなオフィであり、できる限りアイデアを生み出しやすくする工夫がなされた空間でした。例えば、仕切りやパーテーションがなく、その他、机の天板がメモ用紙として書き込める「メモデスク」、すぐに集まれるように軽くて移動しやすく積み上げられる「ブロックチェア」、砂やブロックなどが敷かれた平面でない机、横になれるクッション机、などなど、様々なアイテムがありました。オフィス環境が人に与える影響を考え、加えて「ちゃんとするを排除する」という考え方に基づき実装したものとのことである。作業できる、アイデアを生み出すため、作業できるのであれば、通常の平な机でなくてもよいのである。だいぶ昔にオフィスに伺ったことはあるものの、新しいオフィスを実際に見てみたいと思った。

Digital Artについて…

 「Digital Art」では、各技術のスペシャリストたちがそれらを最大限に活用し、全く新しい体験ができるデジタルアート作品を制作している。チームラボは、2011年頃からアート作品をつくりはじめたとのことである。授業では、チームラボがこれまでに手掛けてきた作品の紹介があった。紹介のあった作品のキーワードは「Body Immersive/身体ごと没入」、「Relationships Among People/人々の関係性を変化させ、他者の存在をポジティブな存在に変える」、「Co-Creation/共創」であった。
 通常、アート作品の鑑賞では、他者が邪魔になる。例えば、有名な絵画の前には人だかりができ、なかなか絵画の前に行けず、長時間待ち、フラストレーションが溜まるかもしれない。しかし、チームラボの作品では、他者の存在もアートの一部となっている。他者との関係をポジティブに捉えることができる作品である。

Body Immersive/身体ごと没入


Relationships Among People/
人々の関係性を変化させ、他者の存在をポジティブな存在に変える


Co-Creation/共創



Digital Solutionについて…

 「Digital Solution」では、クライアントの課題や要望を咀嚼して、適切な課題解決を検討し、ユーザー体験(UX)の実現を主軸として、提案から実装まで一気通貫のB2Bのソリューションを提供している。授業では、チームラボの実績紹介があった。授業では、「りそなグループアプリ」、「ANAマイレージクラブ アプリ」などの事例について伺った。B2Bのクライアントワークでは、本当に必要な機能か、使いやすいかを追求し、ユーザー調査よりも早々に実装し、アップデートを繰り返してあるべき姿を求めているとのことであった。

りそなグループアプリ


ANAマイレージクラブ アプリ

授業にて特に印象深いことは...

 堺さんによると、社名が示している「チーム」が重要とのことであった。一緒にモノをつくってきた仲間だからこそ、同じ文化を理解でき、心理的安全性を確保できており、ブレストも素早くできるとのことである。その場合、同じ文化を理解する仲間をつくるには時間がかかると思われる。
 では、チームラボと同じクリエティブな集団を生み出していけるのだろうか。例えば、チームラボのようなオフィス環境を構築することで、一歩でもクリエイティブな集団に近づくのだろうか。堺さんに質問したところ、外部環境を変えても文化を理解できないと難しく、経営陣がクリエイティブの概念を理解できているか、という点が重要となるとのことであった。そして、自分達で考えて、合理的であると判断したことを実現するべきである、とのことであった。
 チームラボのオフィス紹介でもあったように、「ちゃんとするを排除する」ということを合理的に、真面目に考えて、判断し、実装することが大切なのである。「ちゃんとするを排除する」という考え方についてとても面白く感じ、そして、その背景にある物事を追求する姿勢を見習いたいと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?