クリエイティブリーダーシップ特論:第3回 雨上株式會社

 この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業である、クリエイティブリーダシップ特論の内容をまとめたものです。
 第3回(2020年6月1日)では、雨上株式會社 代表取締役である平井 俊旭さんから地域ブランディングについてお話を伺いました。

雨上株式會社とは…

 雨上株式會社は今の時代に応じた新しい地域の循環の仕組を、デザインディレクションを通じて創造している。同社は、日本の地方にある価値を見つけ出して、「人やお金を循環させる仕組み」をつくる仕事をしている。
代表取締役の平井さんの経歴は以下の通りである。
<平井 俊旭さん>
インテリアデザイン設計事務所SUPER POTATO社での勤務を経て、2001年、スープ専門店チェーンSoup Stock Tokyoを運営するSmiles社に入社した。デザインディレクターとしてブランドグラフィックや店舗デザイン、食器類のプロダクト全般を手がける。2014年12月、雨上株式會社を設立し、2015年7月より、滋賀県高島市を拠点に地域ブランディングディレクターを務める。

何故、高島市か…

 Soup Stock Tokyo社において、平井さんは新店舗に国産の木材を積極的に使用していた。そして、岡山県西粟倉村で林業を主軸にした町おこしをされている牧 大介さんと知り合い、牧さんを通じて高島市に出会い、いまに至る。牧さんは西粟倉村のブランド構築、マーケティング、商品販売から移住支援、ローカルベンチャー支援などを手掛けてきた方である。
 人口集積がある場所から近く、かつ、ブランディングの余地がある場所を探していた平井さんにとり、高島市は条件が合致していたのである。

高島市でのプロジェクトの概要は…

 高島市でのプロジェクトの目的とミッションは以下の通りである。
・目的:高島市の多様な地域資源のブランディングを図り、交流人口や定住人口の増加につなげることである。
・ミッション:高島市が外から憧れるような「地域ブランディングプラン」の策定と実施及び情報発信、である。
 平井さんによると、高島市の地域ブランディングとは、「高島市って〇〇〇なところだよね!」という共通のイメージを醸成し、高島市のファンをつくること、とのことである。
 直近の活動の事例として、発酵加工食品ブランド 「10% I am」がある。「10% I am」は、「植物性乳酸菌と仲良く暮らす」をコンセプトに漬け物の可能性を提案する新ブランドである。人間の体の90%は菌の活動に支えられており、私が私である部分はほんの僅かである。漬物を「発酵するサラダ」と捉えなおし、「体によい菌と共生する」イメージからつくられたのが、「10% I am」である。参考URL:https://10iam.shop/

ブランディングとは…

 平井さんによると、ブランディングとは、「顧客からの信頼を得ている商品やサービスのイメージの総和」とのことである。つまり、下記4つが重要であるとのことである。平井さんは、高野山を具体例として挙げており、4つの観点にて整理することができる。
1.顧客:他者が感じている
2.信頼:伝える工夫/ストーリー性
3.商品やサービス:コンセプト/クオリティ
4.イメージ:デザイン性/感性に訴えるフック
 

地域ブランディングで重視したことは…

 平井さんは、地域ブランディングのプロジェクトにおいて、以下の5つの点を重視していたとのことである。
1.小さく、数多く続ける
  ・HPやFBへ連載する など
2.同じ視点で見て話す(リアルである)
  ・「コンサルと住民」の関係ではなく、「住民と住民」の関係になる
3.共感のネットワークをつくる
  ・パイオニアを起点に活動範囲を広げる
4.集めて、編集する
  ・当たり前ではないという視点をもつ
  ・要素を削ぎ落してポイントを際立たせる
  ・魅力が際立つ小さな仕掛けを施す
  ・美しくまとめる
  ・共通した方向性を持たせる
5.いろんな手段を重ねる
  ・同じテーマを異なるメディアで繰り返し情報発信する

授業にて特に印象深いことは...

 平井さんによると、「今後、なんでもOKであった世の中から、必要なもののみが残る世の中になると思われる。大事なものを見逃さず、自分事としてものごとを見ることが重要である。例えば、企業人材をいまのまま抱え続ける時代ではなくなるかもしれない。」、「自分のおもいを大切にし、自分がそうあるべきという活動を執念で繰り返すことも大切である。」とのことである。私も、企業に属する者として、ものごとを自分事として捉える癖をつけて行動するべく、日々の意識を変えていきたいと思う。





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