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【ミニ社長塾 第48講】「問題」に正解を求めてしまう思考をやめたい、という話。

おつかれさまです。中小企業診断士の長谷川です。

今回のミニ社長塾でお話ししたいテーマはいわゆる「問題解決」の話題です。最後まで読んでいただけると嬉しいです。


1.問題の設定が難しい理由

日本人が受けてきた教育は「設定された問題に対して解を出す」のが基本です。私は義務教育から大学院まで長く学生をやってきましたので、その思考を染みつかせるには十分です。身体からプンプン臭うくらいです……。

社会に出ると「自分で問題を設定しないとやっていけない」と思っていたのですが実はそうではなくて、ある程度「問題に対して解を出す」系の仕事スタイルが続いていました。それは、私の仕事が「研究開発職」だったからなのかもしれません。

先日、私の前職時代についての話で「どのように化粧品の開発の仕事ってやっていたのですか?」と聞かれたので「商品企画部から『こういう商品がつくりたい』というオーダーがきて、それを実現できるような処方を色々と実験していまして……」という話をしているときに、あらためて思いました。商品企画部から問題を出されて、それに答えるのが自分たち研究員だったんですね。

例え話で「化粧品の研究開発職」の話をしましたが、皆さんの業種や役職ではいかがでしょうか?

では、どうして学校は「問題に対して解を出す」系なのかというと、理由の一つは管理です。学校では1対Nで先生が生徒を見ないといけないので、効率性を高めるうえでは「模範解答」が決まっている方が良いです。また、ある一定の知識レベルまで習得できる可能性を担保できる点も挙げられます。

※だから、暗記モノが増えたり、SNSで見かける「この解釈は正解でしょ」と思う子供の解答が「×」を食らっていて軽く炎上する、なんてことが発生しているんだと思います。

なお、仕事の現場でも同じようなもので、過去の成功事例(成功体験)に沿って対処していく方が成功確率は上がります。その成功事例は営業会議などの会議などで共有されていきます。そして、その成功事例がパターン化され、上司から部下へ業務を任せていく流れのなかで「問題に対して解を出す」系になっていきます。しかし、このやり方を続けていくと一つの「問題」が発生します。それは「思考停止」です。

学校や仕事に関わらず、外部環境は変化しています。外部環境の変化にあわせて問題も変化していき、その変化に対応し解(対処法)は変えていかなければなりません。しかし、与えられた問題に対して答えを当てにいくやり方しか知らない状態では考えることができません。その結果、社会的な問題が発生した際に時代錯誤な対応を取り続けるような企業の例は、皆さんも心当たりがあると思います。外部から見ていると「えっ、なんでそんなことするの?」と疑問に思うものが、内部からでは当たり前になっているので気付かない、なんていうことはよくある話です。

学校教育から始まり社会人になっても続く「問題に対して解を出す」系のやり方に多くの方が慣れ過ぎています。問題自体を正しく捉えることが難しい理由は、「思考停止状態」にあるからだと思います。

2.問題を設定するために必要なこと

問題の定義はとてもシンプルで、「あるべき姿と現状とのギャップ」が問題です。言葉で書くと以上なのですが、実際の現場ではそこまで簡単ではありません。

先日、社長塾で「自社の決算書を見て問題点を抽出する」ということを受講生の方の課題として行っていただきました。決算書から算出された「売上高営業利益率」や「自己資本比率」といった指標を3期分並べて、そして参考指標として同業他社の指標を見ながら、自社にとっての問題点や要因を考えるというものです。

ある方が「売上高営業利益率」についての問題点をシートに記入されていたので拝見すると、「原料価格の高騰による指標の悪化が問題」や「生産数減が影響している」といったことを書かれていました。この主張、皆さんはどう思われますでしょうか?

繰り返しますが、問題の定義は「あるべき姿と現状とのギャップ」です。その点からみると、上記の内容は問題ではなく問題が生じている原因になります。

問題を設定するにあたり、私がまず確認することは「あるべき姿」です。「売上高営業利益率」の自社のあるべき姿がどのような状態なのか、これを明確にする必要があります

ところが、(私も含め)多くの方が詰まるのは、この「あるべき姿」を明確にするところです。あるべき姿を決めるためには「目的(何をどうしたいのか)」と「目標(いつまでに、どの程度を目指すのか)」の2つが必要で、目的を目標に落とし込まないと見えてこないです。

なかでも「目的(何をどうしたいのか)」をハッキリできない方が意外に多い。上記で言うと、「売上高営業利益率」を上げる(とする)のであれば、その理由は? といったところです。理由を考える上で、大切なのは「上位方針」です。会社で言うと経営理念やミッション(使命)といったところでしょうか。この部分を紐解き、「目的(何をどうしたいのか)」を見直し、手段として「売上高営業利益率」を上げる。そして、その「目標(いつまでに、どの程度を目指すのか)」は? といったことを思考しなければなりません。

※社員の立場から仕事上の問題を考えるときにも同様です。だからこそ、「上位方針」である経営理念やミッション(使命)の社員への浸透が大切になります

今回は、経営理念の実現のために、目的は「社員がイキイキするように職場環境を高めていく」。その目標は、過去の実績から「売上高営業利益率」が7%あれば黒字でやっていけるが、外部環境の影響を鑑みて「5年後に10%にする」、といったものを設定します。これで、当社のあるべき姿は「社員がイキイキするように職場環境を高めていくために、売上高営業利益率は5年後に10%にする」となります。

一方で現状を見ると、外部環境の影響などにより、「売上高営業利益率」の直近3期の推移は6%→8%→5%でした。このことから、問題は何なのか? という話です。

直近の5%だけを見ると、目標の10%どころか目安の7%にも届いていません。ですので、赤字の見通しであることが問題と言えますが、今回は3期分を見ています。そのことを踏まえると、例えば次のようなことが言えます。

5年後の10%に向けて黒字目安の7%は達成しておきたいが、直近3期分を見ると達成している期もあれば未達の期もある。そのため、問題は安定的に黒字目安を超えることが出来ていないことが問題と言えます。

繰り返しになりますが、問題とは「あるべき姿と現状のギャップ」です。そのため、問題の設定には「あるべき姿」の明確化が非常に重要になります。ここがブレると、間違った問題の設定をしてしまいます。気をつけましょう。

3.「問題の設定」にまで正解を求めてしまうクセ

問題には大きく2つあります。一つ目は、誰の目から見ても明らかな問題としての「発生型の問題」。そして、二つ目は、「あるべき姿」と照らし合わせて初めて見えてくる「設定型の問題」です。ここまで話を進めてきたものは後者である「設定型の問題」です。

「発生型の問題」は、例えば飲食店でトイレが故障しており、お客様が困っている現状に対して、「トイレを早急に修理しましょう」というのが問題です。同じような状況での「設定型の問題」はお客様満足度を上げれば客単価も上がるし、再来店も望める。満足いただける店舗空間づくりの一環として「トイレをキレイに心地よい空間に改修する」というのが問題と考えることが出来ます。

ここで、「設定された問題に対して解を出す」ということに慣れている人間は、「設定型の問題」で考えた問題が「正解かどうか」を求めてしまいがちです。確かに問題が見当外れであると、問題に対処しても解決にはつながりません。しかし、問題は切り口によって違った見え方をします

例えば、社内で発生した問題に対して、社員の視点から見える問題とリーダーから見える視点、そして経営者の視点など切り口が様々あります。これらに対して是か非かを論じるのではなく、いわゆる「落としどころ(合意形成)」を探して議論をすべきです

※ちなみに、研究開発といった技術畑の場合、本来も問題とは違ったところで対処していると、思わぬ発見や気付きがあり、新たな可能性が生まれるなんてこともあります。

問題を設定するにあたり、その問題が「正解かどうか」を求めるのではなく、考えられる問題に対して「根拠(事実、ファクト)をもとづいて確認する」ことが大切なのだと思います。それこそ、一面しか見ずに「問題に違いない」というような決めつけ、思い込みだけは避けなければいけませんね。

今回の記事は「問題解決」をテーマに『「問題」に正解を求めてしまう思考をやめたい、という話。』について記事を書きました。また次回のミニ社長塾もどうぞよろしくお願いいたします。

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