「ウルトラマン」から考える学問の視点、ニュースの見方

バルタン星人は悪?

ウルトラマンに登場する敵として有名なバルタン星人について知っているだろうか?

地球を侵略しようとした悪人である。

ウルトラマンをあまり知らない人はそのような認識だろう。ただ、一方的にそう考えていいのだろうか。

ガンダムは敵側にも明らかな政治的主張があり、彼らなりの正義がある。ワンピースの主人公一味は海賊であり、あの世界では懸賞金がかけられている犯罪者といえる。短絡的にキャラクターの位置付けだけで見てしまうと重要なことに気づかないことだ。

見方方を変えるだけで作品そのものの印象が変わり、それは時に学問やビジネスの観点に役立つということである。

バルタン星人の真実

バルタン星人は、狂った科学者による核実験で故郷を失った。たまたま宇宙旅行中だった20億人の民は難を逃れ、宇宙をさ迷っていた。その後、太陽系にきたときに火星にはスペシウムという彼らが苦手な物質があり移住できないことが判明し、地球には宇宙船の修理で立ち寄った。ちなみに20億人の民はバクテリア程度のサイズで眠っているという設定である。代表者は地球の言語を話すために、とある研究所によって地球人の一人を睡眠状態(仮死状態=殺していない)にして乗り移り、研究所のウルトラマンサイドに事情を話し、地球に移住できるか、共存できるかを問う。ウルトラマンサイドは「地球の風土や風俗に合うのであれば、そして地球のルールや文化を守るのならば移住はできる」と発言。その際にバルタン星人も地球人を尊重し共存する姿勢を見せた。しかし、バルタン星人が20億人もいることを知ったウルトラマンサイドは、難色を示し、スペシウムが存在する火星への移住を提案。そして交渉は打ち切られ、バルタン星人は強制移住、侵略という行動を選ぶことになる。防衛軍は核ミサイルによって対応。一度は倒れるも復活。最後はウルトラマンがスペシウム光線を放ち絶命。さらに宇宙船にいる20億人ごと宇宙まで運び、スペシウム光線ですべての民を抹殺する。

このような流れである。

この話を聞いたときに、

侵略行為をされたのだから自衛のバルタン星人を退治した行動は致し方ない。交渉を打ち切ったのはバルタン星人だ。

このような意見もあれば、

バルタン星人の背景からして同情せざるを得ない。別の共存の道を提案はできなかったのか。さらにすべてのバルタン星人を抹殺する必要はあったのか?

このような意見もあるだろう。

単純な勧善懲悪ではない

重要なのは意見が少なくとも二つに分かれたこと。正義が悪を懲らしめるという勧善懲悪だと思っていたストーリーに待ったをかけたわけだ。見方次第でバルタン星人が悪とは言い切れず、俯瞰して客観視すればどちらにも正義があるということが言える。

これは、国際政治などを学ぶ上で非常に重要な視点である。

例えば、パレスチナにハマスという政党があるが、先進国やそれらの国のマスコミからしたら実質的にはテロ組織と見なされている。ただし、見方を変えてみると、イスラム国家やイスラム社会からの支持は高く、近年では欧州などでもテロ組織の指定解除をすべきとの声もある。イスラエルとの紛争を巡っての対応がテロ組織扱いされている理由だが、アメリカにとって重要なユダヤ人の国であるイスラエルを先進国が暗に支持するのも無関係ではないだろう。

イスラエルは核兵器を所持しているとの見方が一般的だが、大量破壊兵器を疑われ軍事制裁かつ経済制裁を受けたイランとは随分状況が違う。もしイスラエルが核兵器を持っていることが明らかになり、アメリカがそれを容認していたということになれば国際情勢は大きく変わることになる。

ハマスの立場とイスラエルの立場をそれぞれ考えると、ハマスを叩くのはあまりに一方的であり、マスコミが発信するニュースすら時に斜に構えて見る必要がある。(もちろん、ハマスの過激的な行動を叩くのはわかるが一つの側面であり全てではないということ)

学問を学ぶ上で、この疑う姿勢が非常に重要であり、その行動の裏には何があるのだろう?逆の立場のアクターはどのようなスタンスなのだろう?などと突き詰めていくことによって学びのクオリティーがぐんとあがる。だからこそ本を読む際は一冊ではなく別の視点からも見る必要があるわけだ。

ここまで読んで、そんなの当たり前だと思った人も本当に出来ているか確認するべきだ。

なぜならば、一冊の本を読んだだけで勉強した気になっている人、一部の似たようなインフルエンサーを崇拝しすぎている人、ニュース番組のコメンテーターの意見を聞いただけで流され、自らの意見としている人。このような特徴を持つ人々は恐らく当たり前にできていない可能性が高い。

俯瞰する姿勢、疑う姿勢は普段の生活でも重要

ビジネスにおいても同様に大切な姿勢である。例えば、A社長はスケジュール帳をこのように使っている!という記事があったとする。今話題のベンチャー企業の社長であるA社長を真似する人は増えるだろう。ただし、このスタンスは危険。参考にはなっても真似してもなんの意味もない。なぜならば、一方で別の有名企業のB社長のスケジュール帳の使い方は全然違うだろうし、C社長に至ってはスケジュール帳を使っていないかもしれない。

人々はしばしば成功者から学ぶという意思が強すぎて、視野が狭くなってしまう。B社長とC社長が出てくるまで、自分に合ったやり方とも限らないA社長の真似をして、それに疑問を持たずに行動してしまう。最初から視野を広く持っていればこのようなことにはならない。

複数の意見を自ら咀嚼して自らの意見を

学ぶ上でもニュースを見る上でも、このように、AとB、さらにはCという立場の意見を良く吟味することによって、より正確で根拠ある学びができる。ウルトラマンとバルタン星人、麦わら海賊団と海軍などを参考に改めて考えてみてほしい。

単純に正義や悪に分けていいのか、一見かっこいい彼らの行動は正しいのか、弊害はないのか。

特に限られたインフルエンサーや成功者から学んでいる人はなおさら考えてほしい。

このように考える癖が、学問、日々の生活、ビジネスのヒントとなるだろう。

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