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『関西魂 はたらく妖怪』感想

関西魂(かにたま)』とは、「関西作家志望者集う会」が年に一度刊行しているアンソロジーです。
詳しくはこちら。

そんな『関西魂』、なんと2023年で12年目!(長い! すごい!)
シリーズ12冊目、テーマは「はたらく妖怪」です。
えっ、妖怪ってはたらくの? 
……妖怪だって仕事しているかもしれない。


文庫本サイズ仕様。右はカバーをはがした姿です、芸が細かい。

実は(といまさら打ち明けるまでもないですが笑)、
春谷も『関西魂 はたらく妖怪』に参加させていただきました。
ふだん書かないジャンル「妖怪」×「はたらく」だからこそ、
創作脳をいじくりまわして、鍛えてもらいました。
なんとか書き上げたものの、合評会では皆様の厳しくも的確な指摘に
「な、なるほど」
と思い直して、結局はほぼ改稿になるという←とにかく改稿しちゃう春谷☆
安心してください、おかげで初稿よりも満足のいく出来になりましたよ!笑

上述の経緯によって、なかなか思い入れのある『関西魂』、
もちろん他の作者さまの作品も安定した面白さ。

というわけで、一作品ずつ感想を述べます。※ネタバレなし※
興味を持たれた方、ぜひぜひ文フリで、通販で、お手にとってみてくださいませ!!(宣伝)

『関西魂 はたらく妖怪』 目次

◆『山海庵』鞍馬アリス様
これぞ、はたらく妖怪ファンタジー! 主人公がかわいいのです。そして賑やかな情景が浮かぶ世界観は、まるでジブリ作品のように色とりどりで、わくわくします。シリーズ化あるかな?(勝手に期待) この作品が一番最初に置かれているのも、本の構成的に良いなぁと思いました。

◆『妖怪アメフラシの願い』そらふねちく様
ちょっぴりせつなくて最後には元気が出る、ほっこりした気持ちにさせてくれるお話。たこやきの描写が上手すぎて食べたくなります!(作者様はたこやき屋さんhttps://x.com/takarayanancy?s=20) あと個人的にそらふねさんの文章の雰囲気が好きで、こっそり憧れています。

◆『ナイトシフト・ドールズ』蒼隼大様
同じ世界で共存しているのに、なぜ人は幽霊や異形を怖がるのか?それは我々人間の世界も同じ。人種や考え方が違っても元は同じなのに…なんてことを考えさせられつつ、最後は希望をもらえる展開。文章が読みやすくてキャラにも愛着が湧く、文句なしの面白さです。

◆『ちっちゃい川』夏目とも様
山の中、ちっちゃい川で主人公が見たもの、感じたものとは…? 前巻までの夏目さんとはまた違った雰囲気の、硬質な文体で成る掌編。純文学のような文体からにじみ出る妖かしの不気味さ。短いながら想像をかきたてられる文章力、さすがです。

◆『わたしというもの』原瑚都奈様
私の好きな歌う妖怪が登場します(はい、実は好きなんですセイレーンとか) 冒頭から美しい情景描写、おとぎ話のような世界観…だけじゃない、まさかの展開! いやぁ、この展開はおもしろかったです。そして読後は優しくて明るい気持ちにさせてもらえます。

◆『妖怪工学』松尾祐一様
松尾先生ならではの理系小説…というか理系小説に妖怪をとりいれると、こんなにおもしろくなるのか! と出だしから中毒性のあるユーモアが炸裂。相容れないはずの妖怪と科学が見事に融合し、想像を超える事態へ。 いつまでも妖怪工学科の話を読んでいたくなります。

◆『小夜子の妖怪チャンネル』寒竹泉美様
妖怪といえばファンタジー? いや現実に存在して我々の悩みに寄り添ってくれるかもしれない…。架空の存在を題材にしながら、リアルな世界を描いて共感と元気をもらえる作品です! 読後、小夜子がんばれ私もがんばる、って言いたくなる嬉しさが湧いてきます。

◆『妖怪バーガー』新熊昇様
とある商店街にできたバーガーショップ、その名も「妖怪バーガー」。
一見、何の変哲もない店だが…? こてこての関西弁で繰り広げられる、不気味な町おこしストーリー。どんどん広がる展開に、脱力系のおもしろさもあいまってクスッと笑いながら、楽しませてもらいました!

◆『夏の果』野棲あづこ様
タイトルが世界の終末感を醸し出していて、なんとも私好みです。 厭世的な主人公、彼が引き受けたバイトは、ふつうのバイトではなかった…?
一度入ると引き返せない、そんな闇が仕事にもある…と労働者として共感しつつ、それ以上に漂うホラー感にぞわぞわ、うっとりでした。

◆『封印切り』 花芽美彌子様
さとりという異能を持って生まれた女性のお話です。世間には良い感情と同じくらい悪い感情があふれていて、心のコントロールが必要。あらためて、妖怪とは人の心に棲むものだと思い知らされます。 危機を乗り越える主人公の対応力がかっこ良く、スカッとする結末です。

◆『たまおと』春谷晃子
あらためて拙作を読み返しましたが感想は他の読者様にゆだねましょう(笑)
自分の肉体が朽ちた時、魂を天国まで連れてゆくのが天使じゃなくて妖怪だとしたら。あなたは、妖怪たまおとに魂をゆだねますか。
脳が好きな妖怪が登場します。兄に複雑な感情を抱く弟の物語。
元ネタは自作漫画。

春谷が大学の漫研時代に描いたもの

◆『River』 在神英資様
三途の川を舞台に、恋人との別れと再会を描いた悲恋ストーリー。悲しくて救いのない恋愛もの…だけどこれが私の超好みです(感情移入しすぎて泣きました)。へたに救いがあると物語が薄くなるかもしれないので、これぐらい徹底していただいたほうが心に残る…と思いました。

以上、感想でした。




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