コロナ禍のゆずがすごすぎたので記録する

コロナ禍のゆず、すごかった。

2020年。“当たり前”が封じられて、明日のこともわからなくて、目の前が真っ暗になる人だっていて、私の視界もどんよりしていた。そこを照らしてくれたのは間違いなくゆずだった。

ライブ会場での声出し応援がついに解禁された2023年5月現在。
このパンデミックがそろそろ「過去」になることを祈りつつ、コロナ禍のゆずの活動を記録する。

記録半分、オタクの早口と呻き声半分。リアタイしてた人は思い出しながら、そうじゃない人はこんなことしてたんだなの気持ちで読んでくれるとうれしいです。

※コロナ禍と関連のあるものを中心に記載します。生配信などそのとき限りのコンテンツは発言の確認などができないため、不確定な部分があります。

2020年

2020年3月~6月。
※年表中の赤色は緊急事態宣言発令中、黄色はまん延防止等重点措置期間。

2020年4月11日 北川悠仁による「ひとり YouTube Live」配信

第一回緊急事態宣言発令から4日後。

この先どうなるかなにもわからなくて、すべてが手探りだったこの頃。
ゆずだって、北川さんだって同じ思いだろうに、生配信という形で私たちとコンタクトをとってくれた。マジで現代でよかった。

本当ならこのときもうツアーが始まっていて、ゆずが届けたいのはそのアルバムの世界観や新曲、ライブだったはずだ。
それができなくなったとき、「できません」で終わらせないのがゆずだなあと思った。

生配信では、「おうち時間」の間にゆずや北川さん個人がどんなことをしたらファンである私たちが楽しめるか、どんなことをやってほしいか…そんなことをコメントで募集しつつ進行した。

そして、後にリリースされる楽曲「そのときには」の断片がこの時点でもう披露されていた。すべてを歌に変えて表現してきた北川さんは、この状況でもやっぱり歌をつくっていた

詳細な歌詞はまだ決まっていなくて、私たちから募集したいと言っていた。
コロナが明けた「そのとき」、何がしたいのか。私たちの言葉を歌詞に織り込むと言ってくれた。
ゆずも、私たちと地続きの同じ世界に生きているんだと実感した。

2020年4月12日 「ゆずぬりえ」公開

生配信の翌日、北川さんが生んだキャラクターたちである「ゆず一家」のイラストを使用したぬりえが公開された。

「完成したゆず一家のイラストをインスタに是非アップしてください。
ハッシュタグを辿って、僕ができる限りいいねを押しにいきます笑」の言葉のとおり、このあとぬりえを投稿したインスタアカウントに北川悠仁から「いいね」が来た。(もちろん私のアカウントにも)

「いいね」がもらえたのはこの第一弾限りだが、ぬりえ自体はこのあと第三弾まで続いた。
どこのライブ会場でも見かけていた小さな子供たちが、これでおうち時間を楽しく過ごせていたらいいなと思う。

2020年4月13日 ミュージックビデオ YouTube 公開企画 スタート

毎週月曜と金曜に、過去のMVを公開する企画が始まった。全部で12作品で、楽曲はランダム。定期的な楽しみができて、毎回心待ちにしていたことを覚えている。

「録歌選(MV集)」があるからいつでも見られるって人もいるはずだけど、YouTube上に日時指定で公開されることによりSNS上で同じMVの話を一緒にできるのが最高だった。好きなシーンなんかをすぐに共有できる。

2020年4月17日 アリーナツアーYUZUTOWN全公演が2021年以降に延期となる

春に行う予定だったいくつかの公演はすでに延期・中止が決まっていたが、ここで改めてYUZUTOWNツアーの全公演が延期となった。しんどい発表だったけど、これは仕方なかったと思う。
3月の公演が延期でも4月は、4月はだめでも5月は、と期待し続けるほうがきっと心が疲れていた。

2020年4月25日 MIZUによる「手洗いブギウギ」公開

北川さんが相談したことをきっかけに、ジンジンが作ってくれたらしい。
どことな~く、ゆずの岡村…なんとかって曲に雰囲気が似ている気がしなくもない。

2020年5月6日 YouTubeにてWEBラジオ番組「Yuzucast」スタート

ライブという直接会えるイベントが制限された中で、「今のゆず」を届けてくれるコンテンツができた。
開始当時はゆとずがそれぞれ違う個室での収録で、「違う部屋ですが、一つ屋根の下からお届けします!」みたいなアピールをしてくれた気がする。仲良しすぎる。かわいい。

2020年5月23日 新曲「そのときには」のMV公開

4月にYouTube配信で歌詞を募集し、5月にYuzucast内で楽曲を解禁。この日にMVが公開された。
このMVがずるすぎた。

※このMVは北川悠仁のプライベートスタジオ・STUDIO HOUSEにて、最少人数のスタッフと最低限の撮影機材を用い、“3密”を避けた状態で北川、岩沢厚治がそれぞれ個別で撮影を行いました

動画概要欄より

「個別で撮影」したというだけあって、同じ場所に並んで立っているシーンがない。
合成でいくらでも一緒にいるように見せられるはずなのに、あえてそういう演出をしていない。

MVの画面に二人がいるときでも、意図的に二人のフレームを切り離した画面作りがなされている。ずるい。

このとき、「ゆずはいつも”ふたり”である」という私の中にあった当たり前が改めて崩れた。泣いた。ふたりが並んでギターを弾いて歌っていられる世界が戻ってくることを願った。

2020年5月29日 北川悠仁デザインの「ゆず太郎マスク 2枚セット」販売開始

四六時中マスクをつけなきゃいけなくて窮屈だけど、北川さんがデザインしてくれたってだけでうれしいしそもそもかわいい。
ゆずっこが同じのつけてるのも楽しい。街中でちょっと探しちゃったりもした。
(記念に買って使わず保存する人も多かった)

2020年7月~12月

2020年7月10日 ぴあアリーナMMのこけら落としとして「栄光の架橋」歌唱映像をYouTube上で公開。

本当はYUZUTOWNのツアーでこけら落としをするはずだったけど、公演が中止になってしまった代わりにYouTube上の誰もが見られる動画という形で実行してくれた。
アリーナ席の真ん中に立つゆずと無人の客席が新鮮で、切なかった。

2020年8月17日 新曲「公私混同」配信リリース

ドラマタイアップの新曲。しかも共作(重要)。
赤塚不二夫先生の生み出した「これでいいのだ」というワードがサビに使われていて、「明るい諦観」が漂っているなと感じる。

時代がそっぽ向いてら
どっちかってどっちだっていいや
いまだに抜けられない いつだって公私混同
都合と調子がいいときだけまかり通す
これでいい?
未来がこっち向いてる
なんでかってそんな気がしたんだ
傷つき打ちのめされた 青い春の偶像
ピンチをチャンスに履き違えて今日も行く
これでいいのだ

公私混同-ゆず

「まかり通る」ではなく「まかり通す」、
ピンチをチャンスに「変える」ではなく「履き違える」、
「これがいい」ではなく「これでいい」。
おそらくここは岩沢さんのことばじゃないかと推測しているが、すごく”らしい”。

社会を変えるようなでっかい力はないし現状はどうしようもないけど、ここで生きるしかないから。なにかを諦めてるけど、でも下は向いていない。そういうちょうどいい明るさを歌ってくれたと思う。

2020年9月27日~10月25日 YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN 開催

この頃いろんなアーティストがオンラインライブの開催を発表していた。
ゆずもそのうちやるのかなあなんて思っていたら、想像の上を来た。
オンラインツアー」である。

特殊な点は大きくこの2つ。
・「AGAIN」というツアー名を掲げ、毎回違う会場違うテーマで計5公演行う
・各テーマに合わせ、5回すべてでセトリを総入れ替え。夏色以外は曲かぶりなし

すごすぎる。仮に思いついても本当にはやらないだろこんなの。なんなら怖い。

この5公演について話したいことは山のようにあるが、このnoteのタイトルに軸を合わせて1日目・3日目・5日目からそれぞれ数曲ずつ取り上げる。

●DAY1:出発点@横浜文化体育館
・「手紙
曲中に北川さんが「君」宛の手紙を読むシーンがあるんですが、ライブだとそこが我々ファン宛になっていてうれしい。
手紙の中の「どこにいたって誰といたって、ぼくらのうたがみんなの心に届くように、そして楽しんでもらえるように。心を込めて歌います」ということばがすごく沁みた。

・「いつか」と「雨と泪
これが連続でセトリ入りしているの、なかなかないかも。

いつかまた どうしようもなく
寂しくなった そのときは
どこにいても なにをしてても
駆けつけてあげるから(いつか)

そんなに泣かなくていいんだ そばにいるよ
だから自分の足で歩こう
君の泪はいつか大粒の雨になり
大地を固めるのだから(雨と泪)

デビュー前後、若い頃の北川さんが書いた応援ソング(?)は、結構「そばにいるのが精一杯」という印象がある。
すごく必死で、一生懸命に寄り添ってくれる。若くて青くて、頼りないのに頼りになる。

・「ユーモラス
泣いた。まさかユーモラスでこんなに泣く日が来るとは思わなかった。

時々僕等はひどく落ちこんだりして
穴蔵の中に逃げこんだりしてしまう
モグラになってしまったら太陽さえも恐くなって
なかなかそこから抜け出せなくなるのさ
本当はそんなに難しくない話でさえも
迷宮入りの大問題になっているのなら

ちょっとしたユーモア ユーモア ユーモアでもって
笑い飛ばしてしまえる強さを僕等は持っていて
なんてことないアイデア アイデア アイデアでもって
潜り抜けていける賢さを僕等は持っているんだよ

ユーモラス-ゆず

最後から2曲目に披露されたこの曲は「悩むこともあるけど、考えすぎて塞ぎこまずに笑い飛ばそう」「視点を変えよう、発想を転換しよう」みたいな曲だ。

このときの私たちにドンピシャの曲だと思ったけど、この曲は2002年のものだ。
過去の曲の受け取り方が変わることにも驚いたし、それを見つけたゆずがすごすぎると思った。

●DAY3:新天地@ぴあアリーナMM
・「うたエール
毎公演、サブステのような扱いで微妙に場所を変えて歌ってたけれど、ここでついに車移動した。そして向かった先は「帆船日本丸」。

みなとみらいの、ランドマークタワーの隣にあるあのデカい船。
そんな感じで借りれるんだ…。

デカい船といえばゆずっこが思い出すのは、「BIG YELL」ツアー。
BIG YELLツアーといえば、「うたエール」。

LA LA LA… 心からla la
あなたにエールを 歌ういつの日も
LA LA LA…見ているからla la
惜しみない拍手を 頑張るあなたへ
LA LA LA…明日へLA LA LA…
待っているよ 未来
届け 僕らの声

うたエール-ゆず

どこを抜粋すればいいかわからないくらい、始終応援ソング。
とにかく認めてくれるし励ましてくれる。

いつか/雨と泪は「そばにいるのが精一杯」と書いたが、うたエールは一緒にうずくまって話聞いてくれて、そのうえで手を引っ張ってくれるイメージ。

BIG YELLツアーでやった「LA LA LA…」の大合唱を思い出して、早くあれができる世界に戻りたくて、泣いた。

・「花咲ク街
「春はまだ少し遠いかもしれないけど、春が来ることを願い、待ち、信じたいと思います」というMCから歌いだしたこの曲。「春」ということばの暗喩が綺麗だった。

この曲はアルバムYUZUTOWNに収録されており、コロナ禍以前に制作・発表されたもの。
その段階ではコロナのことなんてまったく重ねていなかった曲が、祈りの曲として機能した。

●DAY5:未来図@横浜文化体育館
・「アゲイン2
ツアータイトルが「AGAIN」なんだから、セトリに入るに決まっていた。
そんなことはわかっていたのに、ここでも号泣した。

アゲイン 誰もがみんな一人ぼっちを抱きしめながら生きている
アゲイン 泥だらけの靴だって何度でも歩き出せるさ
アゲイン 人は誰も癒えない痛みを胸の奥に抱えてる
アゲイン ひび割れてるグラスの中にも希望を注ぎ込もう
君が君である為に わずかな光を頼りに
僕と共に行こう アゲイン
新たな旅立ちへ アゲイン…

アゲイン2-ゆず

「ユーモラス」同様これも2002年の曲だ。
なのに、恐ろしいほど2020年の状況にぴったりくる。

落ちサビでマイクを客席に向け私たちに歌わせてくれるという定番の流れがあるが、それをいつも通りやってくれたこともうれしかった。
私たちが家で、電車で、一人で、家族で、それぞれの場所で歌っていることを見てくれている気がした。

●「夏色」
コラボしていたアプリ「ピグパーティ」と連動し、毎回ランダムに選ばれたアバターがゆずの周りで踊っていた(しかも名前も呼んでもらえる)。
アバターだけでなく周りにはARの装飾がどっさり施されていて、配信ならではの演出だった。

また、夏色恒例の「もう一回!」「バカヤロー!」のくだりがある。
(歌唱後にファンがもう一回コールをすると、北川さんがバカヤローとキレて罵倒するが結局もう一回サビを歌ってくれる)

これは過去の配信ライブ(冬至の日とか)でも行われていて、そのときはその場のスタッフがもう一回を言ってくれていた。けれど今回は違った。

DAY1では、コロナ前のライブで私たちが叫んだであろう「もう一回」の声が会場に響いた。
北川さんは最初「誰もいないはずだろ!」と叫んでいたが、最後にはこちら(カメラ)を見て「何考えてんだよ いるじゃねえかよ いねえと思ったら ここにいたじゃねえか すげえうれしかった」と言ってくれた。

DAY3では画面上下に黒の余白が現れ、映画のような照明と静寂の中で北川さんがぴあアリーナをやみくもに走り、空のスタンド席を見上げて「おい!みんな!おーいみんな!どこいっちまったんだよ おい どこいったんだよ あれ? どうしてだよ どこにいったんだ」。

そしてまたカメラを見つけるとにっこりと笑顔になって、「いた。そこ。ずっと見てくれてた。ありがとう」と言ってくれた。(岩沢さんの「濃いな~芝居が」というツッコミもよかった…)

こうやって、私たちが「その場にいない」という事実をあえて明確にしたうえで、「カメラの向こうに”いる”」ことを強調してくれる。
ゆずから実際に見えているわけじゃないけど、確かに同じ時間を共有していた。

また、「歓声くん」というアイテムの導入もおもしろかった。
「歓声をあげてくれる観客がいないなら自分たちで鳴らせばいい」という感じで拍手の音やいぇーい!などの声、おじいちゃんの声(?)、セクシーなお姉さんの声(?)、岡村中学の校長先生の声(??)などを仕込んできており、始終にぎやかだった。

2021年

2021年1月~6月

2021年2月14日 バレンタインオンラインライブ2021 開催

ゆとずの間に一枚アクリル板を隔て、FC限定でバレンタインライブが配信され、終盤にYUZUTOWNツアーの全日程中止が発表された
2020年3月から始まる予定だったから、約1年開催を信じて決断を待っていてくれたことになる。

ふたりは確か、「次に進むために」と言っていた。
この1年の間にも、次のアルバムや新曲なんかの構想がうまれていたのかもしれない。
有観客のYUZUTOWNを待ち続けて立ち止まるより、いま届けたいものをそのときできる最善の形で届けて、次に進んでいくほうがいいんじゃないかと思う。悲しかったけど、頭ではそう考えられた。

このつらい発表を少しでも緩和するために、特別にバレンタインライブを用意してくれたのかもしれない。優しさに感謝を伝えたい。

ツアー中止発表の後に演奏された夏色はこれまでで一番つらい夏色だった。

2021年4月21日 マスクケース・スリッパ・クッションを発売

配信ライブという形に変わったYUZUTOWNの追加グッズとして、上記の3点が追加。
おうち時間もゆずを感じられるアイテムはうれしかった。

2021年5月29日・6月5日 YUZU ONLINE LIVE 2021 YUZUTOWN / ALWAYS YUZUTOWN 開催

アリーナツアーでやる予定だったYUZUTOWNと、コロナ禍を経て変化した気持ちを取り入れたALWAYS YUZUTOWN。これもAGAIN同様、数曲ずつ取り上げる。

DAY1:YUZUTOWN

・「夢の地図
1曲目でこれはさすがにずるい。初手から涙腺が崩壊した。

あの日描いた夢の地図見つからなくても もっと素敵な夢を君と描けばいい

夢の地図-ゆず

地図ってワード的に当初のYUZUTOWNからセトリ入りしていたのかもしれないが、歌詞がこの状況に刺さりすぎていた。

一度立ち止まってうつむいてしまっても、そこから前を向いて歩きだすための背中を押してくれる曲がほんとうにたくさんある。ゆずがいてくれてよかったと心底思う。

・「栄光の架橋
2番の「悔しくて眠れなかった夜があった」「不安で震えていた夜があった」の歌詞を、ひとつひとつ噛み締めるようにつよく目を瞑って歌う北川さんが印象的だった。自分に言い聞かせているようにすら感じた。

最後のサビにかかるころ、この時点で最後の有観客アリーナツアーであるBIG YELLの栄光の架橋の映像が突然スクリーンに流れた。

グッズの旗を振りながら大きな声で合唱する栄光さんは、歌っていた当時はあまりに当たり前だったもので、オンラインライブを見て泣きながらその場面を渇望するようになるとは思っていなかった。「当たり前」なんてないんだと知った。

アウトロではそれまでの映像と打って変わり、今まさにYUZUTOWNを行っているぴあアリの空の座席が映された。
とにかく「逃げない」演出だと思った。

現状のつらさから目を背けるのではなく、きっちり向き合う。
そのうえで、できること・楽しめることを探す。真摯なやりかただと強く思う。

・「夏色
AGAIN同様、「もう一回」後の演出が凝っていた。
北川さんが「本音で話そう」と切り出したあと、「長野の善光寺、超行きたかったっす!!」と叫んだ。
長野は、YUZUTOWNツアーで初演になるはずだった地だ。

そのままどこで何が食べたかった、行きたかった、楽しみにしてたのに!とツアーで巡るはずだった順番に各地方が挙げられる。

「みんなにもっと会いに行きたかった!横浜に来てほしかった!コロナの、バカヤローーー!!!」と大きな声で北川さんの「本音」が告げられ、間髪入れずに「しかしそんなこともいってられません!みんなで一緒に前に進みましょう!!会いたかったぞ、会えてうれしいよ」と続いて通常の夏色に戻っていった。

切り替えがすごすぎるけど、ゆず側もツアーをしたいと思ってくれていたという事実を改めてことばで聞くことができてうれしく思った。
「コロナのバカヤロー」というシンプルでまっすぐなことばに、きっと見ていた全員が共感したはずだ。

●DAY2:ALWAYS YUZUTOWN

・「GOING HOME
路上時代は松坂屋の前で演奏しながら、駅に向かっていく人をいつも見送っていたという話から
「コロナ禍になって、いつもの帰り道を歩く時もみんないろんな想いを抱えながら歩いてたんじゃないかな」と続けて始まった、「どうしてもやりたかった」というこの曲。

路上ライブをしていたあの場所がもう無いことと、パンデミックで当たり前が奪われたこと。
そんなことを歌詞と重ねたのかもしれない。

いつの間にかなくしたものもあるけど
かけがえのないものはたった一つこの手の中にいまも抱きしめてる

GOING HOME-ゆず

・「うたエール
言ってしまえば、前回のAGAINでもやったばかりの曲。でも、また歌ってくれた。
それだけ、この曲に込められたメッセージが「いま届けたいもの」に近いのかもしれない。

・「ALWAYS

ここで初披露された新曲。
「いままでと生活のペースが変わって、空を見ることが増えた。綺麗な空に出会ったとき、ファンのみんなはどうしてるかな、元気でやってるかなって思った。この1年の想いを新曲にしてきました」というMCが印象的だった。

北川さんが言う「空」といえば、「はるか」という曲の歌詞である「同じ地球のどこかでこの空を君も見ていますか」を思い出す。

空がつながってるってことをよく意識する人なんだろうなあ、と思った。
そして空を通して、私たちのことを想ってくれる優しさに胸がぎゅっとなる。

2021年7月~12月。読まなくていいです

2021年8月9日~9月12日 YUZU Tour 2021 UTAO in your heart 開催

コロナ禍に突入して以来初めての有観客ライブ(ホールツアー)。
マスク着用、声出し禁止、完全着席。
途中で換気があり、会場によっては動員数も制限されていた。

オープニング~「アゲイン2」
2019年のドームツアーの映像から始まり、この数年のゆずの歩みがスクリーンに映る。
最後に「一緒に”謳おう”」という文が現れると、ステージ上にゆずが登場し1曲目が始まった。

オンラインツアーAGAINでも披露された「アゲイン2」。
今回はアレンジが入っていて、冒頭はふたりのアカペラ。
続けてふたりのギターが入って、1番のサビを終えたところでバックバンド(ドラム)が参加。
しっとりした空気が段々と盛り上げられ、本当に目の前にゆずがいる事実、久しぶりのライブに来られた事実が一気に心に押し寄せる。

落ちサビでは「心の中で」と添えたうえで客席にマイクを向けてくれる北川さん。
「UTAO in your heart」の名を裏切らないパフォーマンス。岩沢さんがよくいう「みなさんで作るライブです」を思い出す。

MC
歌唱後会場が暗くなり、いつものように拍手を送った私たちに向かって開口一番、
「ダメだよ!みんな声出せないんだから、そんなすぐ拍手やめたら静かになっちゃう」。
明るいトーンで、声が出せないなら拍手や手拍子で補えばいいと教えてくれる。

いろんな制限があることを伝えたうえで、「こんなときだからこそできることをたくさん用意してまいりました」と言って笑う。

逆境を知恵と工夫と経験で乗り越えようとする、私たちの大好きなゆずの姿があった。

・「Long time no see
「久しぶりに会うのに手ぶらもなんだから」と突然披露された新曲。
直訳すると「久しぶりだね」、気持ちを込めて言うと「やっと会えたね」だそうだ。
やることがかっこよすぎる。

・「LOVE & PEACH
この曲は、東日本大震災が起きた後のゆずが初めて発表した曲だ。
2011年に日本中を覆った大きな悲しみを、2020年から世界中で続いた苦しみにどこか重ねているのかもしれない。

この曲には「おしりを振って笑顔になろう」というコンセプトとダンスがあったが、着席ライブではそれすら叶わない。
そこで登場したのが、新グッズ「Boo Boo ゆず太郎」(ゆずっこには主にぶぶ太郎と呼ばれる)だ。名前こそBoo Boo だが、結構かわいい音が鳴る。

座ったまま、スクリーンに映る譜面(某太鼓のリズムゲーム風)に合わせてぶぶ太郎を鳴らす。
だんだん譜面が難しくなって、それは無理では?という難易度にまで至るが、それすら楽しかった。

この曲の終了後から、「会場が暗転したらぶぶ太郎を鳴らし続ける」という謎のノリがうまれ、ゆずからつっこまれたというレポがSNSで共有され、遠く離れた他の会場でも引き継がれていった。

・「夏色
曲が終わり、通常なら「もう一回」を言うタイミングで声が出せない私たちに北川さんが「どうすんだ!?なにができるんだ?どうすんだおい!」と煽る。
演者は声が出せて観客は出せないという当たり前の事実を笑いに変えてしまうのがずるい。

飛沫が跳ばないよう顔の前にアクリル板を持った北川さんがステージの端まで走って来てくれて、さらにはそのアクリル板に息を吐いて曇らせ、ハートを描いてくれるサービス(?)まで。

まさに「こんなときだからこそできること」が盛りだくさんだった。

MC~「栄光の架橋」
「こんな複雑な気持ちでステージに立って初日を迎えることは初めて」
「今やれること・自分たちにできることを少しずつでもやっていきたい」
「もしかしたらエゴかもしれない、それでも」
「100%の正解はないけど、みんなが今日来てよかったって思ってくれてるんならそれは今日の100%の真実」
と、気持ちを吐露してくれる北川さん。

ゆずも不安だったと伝えてくれること、楽しんでくれてよかったと言ってくれることがすごくうれしい。
こちらからことばを伝える手段がその場になかったことを歯がゆく思う。

そして最後に歌われた栄光の架橋も、「心の声で」の合図と共に客席にマイクが向けられた。
岩沢さんのハモリもなく、楽器の音だけが響いているはずだったけれど、私にはゆずっこの声が聞こえた気がした。
このツアーは「歌おう」ではなく「謳おう」。その意味をひしひしと感じた。

2021年10月25日 YUZU TOUR 2021 謳おう × FUTARI in 日本武道館 開催

開催にあたってのルールはUTAOホールツアーと同じ。
違うのは、会場が武道館で「×FUTARI」、つまり弾き語りであるところ。リアルタイム配信で家からでも参加できるところ。
そして、ゆずのデビュー日に行われており、「25周年突入記念」であるところだ。

このライブ、全部の曲が今の時勢、今のゆず、今の私たちに合うように聞こえてくる。

「悲しいニュースで胸が痛むそんな夜は君のそばで眠りたい」(わだち)
「いくつの夜の向こうに必ず朝日が昇るように超えてゆけるさ」(ウソっぱち)
「僕らはいつも試されている 立ち塞がる大きな壁に」(翔)

武道館ライブのセットリストより

過去の曲にどんどん新しい意味を乗せて、進化させて届けてくれるゆずがすごいなと心底思う。

そして「丹波くん」。(インスタ参照)

北川さんがボタンを押すとタンバリンやぶぶ太郎を鳴らしたり、なんならしゃべったりする。
岩沢さんに「何件か営業回ってきた後なんじゃないですか」と言われるほどの仕上がりで、声出し禁止なのに笑いをこらえるのが大変だった。

武道館ライブで特別印象に残っている楽曲は「ワンダフルワールド」だ。
これは、2008年に発売されたアルバム「WONDERFUL WORLD」の収録曲で、ライブで歌われることは少ない。

曲振りのMCでは、路上ライブをしていたころからずいぶん時間が経って多くが変わったこと、素晴らしい変化も厳しい変化もあったこと、コロナ禍になり国内だけでなく世界中のできごとを身近に感じながら生きてきた時期だったことなんかを伝えてくれた。

「時代が変われど、いつもこの世界が素晴らしく美しくあることを心から願います」
「40代の俺たちがうたうこの曲を聞いてください」

そう言って始まったワンダフルワールドはすごく感情的で、「表現力」なんてことばでは伝えきれないくらい、想いが溢れていた。

世界よ今日も回れ回れ 愛も悲しみも飲み込んでゆく
望まれず生まれてくる人などいない
泣きそうな程美しいワンダフルワールド

ワンダフルワールド-ゆず

「憤りや憂い、皮肉に近い感情」も込めたと語られたことのあるこの曲を、パンデミックの最中であるこの世界で、それでも「素晴らしい世界」だとうたいきってくれたこと、願ってくれたことに深く感謝したい。

また、このライブについてもう一つ言及しておきたいのが、ふたりの衣装についてだ。

今回ふたりが着用していたTシャツは、2020年に行うはずだった「YUZUTOWN」アリーナツアー、オンラインで行った「ALWAYS YUZUTOWN」、有観客ホールツアー「UTAO in your heart」のグッズTシャツを少しずつ繋ぎ合わせて作られたものだった。

ライブで過去のグッズを着用することなんてほとんどない。これはきっと、これらのライブがこの日の武道館ライブと地続きであることを示していたんじゃないかと思う。

そしてふたりの背中には共通して、YUZUTOWNツアーTシャツの「開催日程会場名」の部分が使用されていて胸が熱くなった。

中止になったYUZUTOWNのことも、ゆずは忘れていない。
ちょっとずつ前に進んでいくけど、これらも全部背負っていく。そう言っている気がした。

2021年11月24日 LIVE FILMS 謳おう 2021 発売

なかなか異例の早さでDVD/Blu-rayが発売された。
ホールツアーは配信がなかったので、状況を鑑みて参加を断念した人たちにも早く見てもらえるようにという配慮が感じられた。

2022年

2022年1月~8月。全然読まなくていいです

2022年3月26日~8月3日 YUZU ARENA TOUR 2022 PEOPLE -ALWAYS with you- 開催
2022年8月6日~8月18日 YUZU ARENA TOUR 2022 SEES -ALWAYS with you- 開催

ついに有観客アリーナツアーが行われた。
マスク着用、声出し禁止、換気ありだが、立ち上がっての参加がOKになった。

ここではPEOPLE/SEES共通の曲を取り上げる。

・「君を想う

オープニング明けて1曲目、突然の新曲。
この曲の「君」は私たちファンのことだと明言されている。

君を想う 泣きたくなる 忘れられない日々を
胸に抱いて 僕ら歩いてく
光と暗闇が交差する明日へ

君を想う-ゆず

1番で「泣きたくなる」だった歌詞が2番では「会いたくなる」になっていてグッとくる。
これまでの日々を全部ひっくるめて抱えたまま前に進むよ、という意思が感じられた。

・「あの手この手
ゆずって天才なんじゃないかと思った。
近年のアリーナツアーでは、ゆずと観客の誰かが直接会話できるような仕掛けが用意されることがあった。(電話の小道具でステージ上と繋がれたり、インタビューに来てくれたりした)

しかし今回は声出し禁止。
そういうサプライズは起きないのかなと思っていたが、ゆずがなにもしないはずがなかった。

ゆずデビュー25周年を記念して作られたキャラクター、ハンドくん(よく見ると北川さんに顔が似ている)がトロッコでアリーナを周回しながら、会場の全員とじゃんけん大会

途中で代表者を3人に絞り、勝ち抜いた1人には特製キャップ(非売品)をプレゼント。

しかもハンドくんを召喚するための手振りが、じゃんけんのグーチョキパーの動きになぞらえた「GOOD(グー)25(チョキ→パー)」。

何千人といる観客が声を出さずに同時に参加できて、誰でも絶対知ってるゲーム。
全部のパーツが上手く嚙み合いすぎていて、感動してしまった。

・「LAND
1曲前が奇々怪界で、一体これと並べられる曲ってなんだろうとは思っていた。

LANDはゆずが震災後初めて世に出したアルバムの表題曲で、ファンタジーな世界観の中に皮肉と嘲りと諦めと、そんな中でも前に進む意地と…いろんな思いが詰まっている。

一体どんな未来をこの先描けという
そして何を残して行けばいいの?
行き詰まりうつむく この両足が踏みしめてんのは
紛れもない 僕らのLAND

LAND-ゆず

震災後の空気とコロナ禍の空気が重なった。
LANDという曲のただならぬ雰囲気は到底GO LANDツアー以外のセトリに混ぜられるようなものではなく、もう聴けることはないと思っていた。
だからここで披露されたことに本当に驚いたし、その一方でいま歌うのがあまりにも似合ってしまう曲だということもわかって、つらくなった。

LANDは人気があるし私も大好きな曲だが、LANDが似合うような世界はもうごめんだ。

・「ALWAYS with you
PEOPLEに収録された新曲「ALWAYS」と、2012年に発売されたシングル「with you」をミックスした組曲。

ツアーのタイトルに「with you」が入っているんだから演奏するかな、くらいの予想はあったかもしれないが、この展開はきっと誰も読めなかった。

音源のALWAYSはピアノや弦楽器が目立つ優雅で柔らかな構成だったけれど、ALWAYS with youは少し違う。
終盤にかけてドラムが迫力を増し、全体の緩急が激しくなる。壮大で、ライブのフィナーレにふさわしい雰囲気だ。

曲の終わりに言ってくれた「いつもあなたの傍にいます」に込めた決意が伝わってくる。

2022年9月~2023年5月現在

2022年9月3日 YUZU ARENA TOUR 2022 SEES -ALWAYS with you- @オンライン

追加公演であるSEESを、公演の最終日からひと月も経たないうちにオンライン配信してくれた。

UTAOのときと同様、参加しない決断をした人のことも取りこぼさない配慮だと思う。
そしてこの日、配信ライブ後のアフタートークにて、新たにホールツアーを開催することが発表された。

終わりに

このようにゆずは、想像していなかった逆境の中でも「今できる最善のこと」を見つけ、どんなときでも歌をうたい、私たちに最高のエンターテイメントを贈ってくれる。
何度も迷って考えて、少し足を止めることがあっても、やっぱりうたうと決めて進んでいく。

ゆずのおかげで前を向けた日があること、ゆずのおかげで癒えた痛みがあること、心の底から感謝している。

3年ちょっとの記録だし、簡単に短く…と当初は思っていたが、ゆずがあまりに活動的でファン思いだったためとんでもない量になってしまった。

そして週末の2023年5月21日からはついに、声出し解禁のホールツアーとなる「YUZU TOUR 2023 Rita -みんなとまたあえる-」が始まる。

コロナ禍を経たゆずが、次はどんな新しい景色を見せてくれるのか、本当に楽しみだ。


参考・引用など
ゆずオフィシャルサイト
Twitter
北川悠仁Instagram

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