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[書評]アウトローな生き方の闇『文豪はみんな、うつ』(岩波明)


文学史上に残る10人の文豪――漱石、有島、芥川、島清、賢治、中也、藤村、太宰、谷崎、川端。漱石は、うつ病による幻覚を幾多のシーンで描写し、藤村は、自分の父をモデルに座敷牢に幽閉された主人公を描くなど、彼らは、才能への不安、女性問題、近親者の死、自身や肉親の精神疾患の苦悩を、作品に刻んだ。精神科医によるスキャンダラスな作家論。

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文豪と呼ばれる人たちを、精神疾患のという切り口から読み解いていく本です。

紹介されているのは、夏目漱石、有島武郎、芥川龍之介、島田清二郎、宮沢賢治、中原中也、島崎藤村、太宰治、谷崎潤一郎、川端康成の10人。

7割が統合失調症で、あとは躁うつ病であったり、パニック障害の文豪もいます。

現代のように精神疾患という分野の医学が発達しておらず、島崎藤村の父はその病から座敷牢に入れらていました。
総じて精神疾患は「狂っている」という目で見られた時代に生まれた文豪は、その病ゆえにアウトローな生き方を選択せざるを得なかったのかもしれません。
むしろ、精神疾患を患い、アウトローな生き方をしていたからこそ後世に残る作品が書けたのかもしれないです。

文豪が生きていた時代は、浮世離れした「文豪」という生き物に寛容な時代でもありました。
「文学の道で生きる」と決めたからと言って、今のように「作家は食っていけないからやめておけ」とやいのやいの言われる時代でもありません。
無名の文学者がごまんといた時代は、物書きにやさしい時代でもあったのでしょう。

現代に生きる私たちにはとてもお手本となる生き方ではないでけれど、傑作を生みだす人物というのは人よりもすこし変わった部分を持っているということがよく分かる本でもあります。
それは決して精神疾患という病にかかっていなくても、やはり人とちがう部分を持っていると思うです。

はるう

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