[書評]鍵穴を見つければより楽しく『物語のカギ 「読む」が10倍楽しくなる38のヒント』(渡辺祐真/スケザネ)
私は漫画もほぼ読まないし、映画もほぼ見ないし、ドラマもほぼ見ないし、アニメもほぼ見ない。
「ほぼ」と保険をかけたのは、何事も例外はあるということである。
ただ、日常的に触れるのは圧倒的に活字や文章が多く、中でも小説は私にとっては欠かせない存在だ。
そんな「小説」=「物語」をより深く読み、より深く愛せるようにしてくれるのがこの本というわけなのである。
本書は「カギ」と称して様々な物語の味わい方を提示してくれる。
……こう言っちゃうと堅苦しいよね?
まあ、簡単に言うと、本の読み方はただ「読む」一遍通りじゃないよ!ということを言っているわけだ。
例えばミステリにおいて「犯人は妹だった」という答えが出ても、動機が分からずトリックも不明で犯人だけポーンと示されても困るでしょ?
「いや、なんで、どうやって殺したんだよ!」と叫びたくなるはず。
つまり、「犯人は妹」という部分に動機やらトリックやらが肉付けされて初めてミステリは完成する。
「読む」という行為もただ漠然と読むだけではなく、「書かれた時代背景を知る」だとか「作者のこれを書いたときにどんな精神状態だったかを考える」などを「読む」に肉付けしていくことで、より物語を味わうことができるよ!と言っているわけ。
著者のスケザネさんは文学部の出身とのこと。
いやぁ、うらやましい!私は持病で中退してしまったけれど、本当は文学部で日本の文学の研究がしたかったのだ(ちなみに中退した大学で専攻していたのは、臨床心理)。
そんな文学部出身の彼だからこそできる紙上文学講座がまさにこの本。
まず、本書の掴みが素晴らしい……!
「源氏物語」(紫式部)の冒頭も持ってきて、「学校の授業でやったなあ」とか「意味わかんないからYouTube見よ」まですべての感想を「正解」と言ってのけるのだ。
まあ、古典の授業でもやらないと「源氏物語」は難解だと思われても仕方ない。
そんな「何言ってるのか分からない源氏物語」を、彼は様々アプローチを繰り出して「こうすれば面白く読めるのでは?」というまさに「カギ」を提示してくれる。
例えば、
ほかにも「源氏物語」をより理解して読むための「カギ」がたくさん紹介され、直接的に「源氏物語」に関係のない知識、例えば日本史や当時の文化などを知ることで同じ物語を読むにしてもアプローチの仕方は様々なんだなあと思わせてくれるのだ。
ところで、そこのあなた。
最近、読書できてる?本、開いてる?
なーんか、読書に身が入らないなあと思っているときこそ、この本の出番だ。
著者は38の「カギ」を語る上で、絶対に無理強いをしない姿勢を貫いている。
すると、読んでいるこちらは「最近本が読めてないけど、こんな読み方ができるのらちょっくら本を開いてみるかな」と腰を上げやすくなる。
フランクで友達みたいな大学教授の講義を受けてると思ってみてほしい。
流行っている「呪術廻戦」なども話題に盛り込まれ、あっという間に90分の講義は終了!
明日もまた1つ、本の読み方が知りたいな!と本書を開くのである。
はるう
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?