【書評】世にも奇妙な落語ミステリに寄っといで『落語魅捨理 坊主の愉しみ』(山口雅也)
7つの、見事な落語のようなオチがついたミステリ。
坊主の風上にも置けない無門道絡(むもんどううらく)というある種の生臭坊主が全編を探偵として事件を解決へと導きます(と、言っても1つ目の「坊主の愉しみ」は自身にとんでもないことが起きるのですが)。
ミステリと言えば探偵が活躍することを期待する人も多いと思うが、道絡が完璧な探偵役を勤めてくれるかと言えばそうでもないのがミソ。
なぜなら舞台は江戸時代。
理屈では分かっても論理では解決できないことがごまんと転がっている時代です。
すべてを現代の探偵のように犯人を論破して解決を図るわけではない。
どういうことかと言うと、人を祟ったり呪ったりすることが普通に起きる時代だということ。
けれど、そこがこのミステリの良いところでもあるのです。
この本を読むポイントは3つ。
1・落語の知識は0での大丈夫
私も落語の知識はほとんどありません(なんなら知ってるのは「目黒の秋刀魚」と「寿限無寿限無」ぐらい?)。
でも大丈夫。
本書は落語の雰囲気を味わいつつ、ミステリを楽しむ本です。
オチがきちんとありますが、そのオチの爽快さを感じることができればもうけもんです。
2・時代小説特有のものがほとんどない
時代小説って「~そうろう」とか「~でござる」のような「お年寄りが読むのかな?」というイメージがあるかもしれません。
そんなイメージを本書は払しょくしてくれます。
「子の刻」「寅の刻」などの難しそうな時間の概念もほぼ登場しません(「丑三つ時」はさすがに分かります?)。
3・江戸時代全般の雰囲気が楽しめる
著者である山口雅也さんが、
とおっしゃっているように、江戸初期に生きていたとか江戸末期に生きていたという、特定のどの時期の江戸に存在していたという登場人物たちではないので、江戸時代全体の雰囲気を楽しみながら読むことができるのです。
怪談話だったり、化け猫だったり、遊郭だったり、たっぷりと「江戸」と「落語」の空気を感じつつお楽しみください。
はるう
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