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『バンオウ-盤王-』第34話「紙一重の戦い」感想 月山対天草戦、遂に決着!見所さん満載の神回!


◆衝動的に感想を書きたくなった第34話

9月1日(金)に『バンオウ-盤王-』の最新第34話が配信された。

ぼくは単発回の漫画の感想は普段あまり書くことはない。Twitterでチラ裏感覚で適当に数ツイート程度で済ませている。

が、今週ばかりは見所さん満載の神回だった。故に、衝動的に発信したいことを言語化したくなった。

…まあこの漫画はこの前単行本で2巻まで一気読みしたときは「これ当時感想書きたかったアア~!!」と後悔する瞬間が多々あったのだが。そういう経験は本当にあるあるすぎるから困る。嬉しい悲鳴とはまさにこういうことである。よって今回はもう「これ今こそ感想書くしかねえエエエエエ!!」の精神余裕だった。

◆吸血鬼バレ展開の危機?

第3話で月山さんと対局した天草先生は十分な強キャラとして存在感が際立っていた。そして最近になっていよいよ月山さんがねんがんの再戦と以前もらい損ねたサインゲッツに挑む、本作のターニングポイントめいた展開へ突入した。
持ち時間そして精神を削り合う死闘を繰り広げる。ひとつのミスでも戦況を大きく覆してしまうほどの緊張感。将棋のルールに詳しくないぼくでも、肌身で感じ取れるほどにだ。

月山さんは吸血鬼だとバレてはいけないので、元々は大会に出場して目立つことを避けていたスタンスだった。ところが小さな将棋教室を救うべく大会に挑む目的をあった。無論月山さんは、無名のアマチュアとしての存在からのスタートだった。
元より吸血鬼バレの恐れを踏まえての大会出場だったが、無名のアマチュアがここまで天草先生と対等に戦える違和感を流石に作中のモブのみなさんも感じずにはいられない。今はまだ頭の片隅に置くべき問題だろうが、徐々に月山さんが注目されていく高揚感と今後への不安が両立されていく。

何より今回、将棋教室のオーナーである和島さんが月山さんの正体を知ってしまいそうなフラグが立ってしまった気がする。この漫画は基本展開がスピーディーだからそこまで長くはやらないだろうし、吸血鬼バレはそう遠くはなさそうだ。
…とはいえ、この人なら仮にも吸血鬼だと明かしても大丈夫そうだとは思うんだよな。流石に驚きは隠せないだろうが、10年間お世話になった知人を裏切るような行動には走らない絶対的信頼がある。要するに二人だけの秘密ってやつだな。…そこにお兄ちゃんが入り込んできそうだが。

因みに第1話で「30代(と自称している)なのに老けない」ことに言及していた。この時点で吸血鬼バレ展開は決定事項だったのだろうか。

◆お兄ちゃんにやられた

二人の激闘を見守る人々は多い。まだ物語は中盤だろうに、最終決戦と偽ってもおかしくないほど盛り上がりがすごい。天草先生のお父さんも、数話前の熾烈なエピソードがあったからこそ、親として見守るしかないだろう。

だが今回とどめを刺されたのは、基本おもしれー男やってるお兄ちゃんの真摯な「勝て」の一言だった。これはギャップ効果はもれなくあるだろうが、なんだかんだで月山さんに期待を含ませているんだなという自然な嬉しさがあった。
初登場時はやべーやつ感あったけど、こういうのやられると好きになっちゃうなあ。

◆10年後への期待

決着はややあっさりだったのは否めなかった。
「あれ?ここで終わり?」とドラマティックさが足りないというか。まあ今回あくまで天草先生は詰みの上で自ら投了だし、現実でもそう珍しくはないシチュエーションなのだろう。

勝利を経てひとつの大山を迎えられた。
緊張感に包まれたあまり、ここでようやく勝てたカタルシスと脱力感はあってもいいだろう。ガッツポーズはやっちゃってもいいくらいに。


だが、月山さんは天草先生への敬意を表したまま、未来への期待を寄せる。ここが素晴らしかった。
すごぶる月山さんらしいのは言うまでもない。自分自身を変えてくれたほどに将棋が大好きで、サインを求めるほどに天草先生という強者を尊敬しているからな。この人なら、今回勝利できても天草先生の今後の成長に注目するよなと、あまりにも期待通りすぎた。

そして今回何が嬉しいかって、月山さん個人が満たされた感があるのだ。
最大の目的である将棋教室の救済はどのみち自分の居場所を守ることでもあるからWin-Winの関係を築いている。が、それだけに囚われるのではなく、茨の道を歩む中で様々な強者と出会い、ますます将棋の楽しさを知り、人となりを築いていく。そこが自分のことのように嬉しくなれた。険しくもあり、楽しい寄り道でもある。

◆サプライズ

まさかの天草先生からサイン要求。

これには思わずハッとした。
いや、ぶっちゃけるとこれは予想的中だったのだ。月山さんだけでなく天草先生もサインを求められるのではないか?と、前以てそんなリターンに期待していた。

しかしそれでも今回予想外のサプライズのように感じられたのは、決着後ぼくも月山さん同様に頭ン中将棋のことでいっぱいいっぱいだったからだと考えている。
「天草先生強敵だったよね」「10年後再戦できると嬉しいですねマジのガチでね」といった想いに存分に更けていたので、ぼくはすっかりサインのことは二の次に置かれていたわけだ。
…で、「サインください」という直球サプライズでブン殴られて本当に目が覚めたようだった。月山さんみたいに目がぎらぎらになっていた。

こういう「予想通りだったのに意識をズラされた」というテクニックは本作に限らずなのだが、ぼくはそういうのが大好きである。もっと言うなら、予想通りのものよりも嬉しいもの(10年後再戦したい)が出てきたからなのだろう。
…まあ「ウオオオオ勝ったアアアアアアアアアサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれサインくれ」と全裸待機下心フルオープンで読むのは、それはそれでどうかしているが。

「いいからくださいよ」と口調が年相応になる天草先生かわいい。ガッツリ来るなあ。

***

「次にくるマンガ大賞2023」Web部門10位&U-NEXT特別賞獲得おめでとうございます!

…とはいえ、10位はまだまだ全然低いダルルォ!?と正直に贅沢を望んでしまうクチである。とりあえず、この機に更に本作が注目されたら嬉しい。

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